学校特集
和洋九段女子中学校高等学校2024
掲載日:2024年9月20日(金)
2022年に創立125周年を迎えた和洋九段女子中学校高等学校。日々に浸透するPBL型授業など先進的な21世紀型教育を推進する女子校の一つです。行事や課外活動も活発で、クラブ活動は10の運動部、19の文化部があり、規模感はそれぞれながら生徒たちは充実した日々を送っています。
今年、新しく10人の部員が入部し、活動がパワーアップした管弦楽部の様子を顧問の飯島なぎさ先生と高野倉裕子先生に伺いました。
初心者もウェルカム
挑戦心を養う管弦楽部
放課後の和洋九段女子の校内に響く管弦楽部が奏でる美しい旋律。少人数で和気あいあいと活動している管弦楽部は、日々の活動内容などもできるだけ生徒たち自身が考え、顧問やコーチに提案できるようになることを目指しています。
「私たち顧問も生徒からの相談には乗りますし、アドバイスを求められればもちろん答えますが、具体的にどうしたらいいのかわからなくなったらまず先輩たちに聞きに行くという流れができてきています」と話すのは飯島なぎさ先生です。
今は引退した現・高3は、現役の時に練習が終わった後、よく勉強や選択科目についてなど、後輩たちに話をしていたそうです。
日々の活動は基本的に週4日ですが、週1回は学習のために休める日が認められています。生徒たちはそれぞれ、自分自身のスケジュールをコントロールしたり、バランスを取ったりしながら、勉強とクラブ活動を両立しています。
現在の部員数は、中高合わせて20名。中1が9名、中2・中3・高1が3名、高2が2名です。なお、現・高3は3名でした。
「今年の中1は、強制ではありませんが、クラブ活動を推奨している学年で、入部希望者が大幅に増えました」と高野倉裕子先生。
4月に行われる新入生歓迎会を見て、さまざまな部活体験を経て決めたり、最初から管弦楽部を希望していたりと、中1生たちの思いはさまざまです。
飯島先生は「中2も1名入ったので、6月の本入部後は計10名の半分が新しいメンバーという状態で、先輩たちがてんやわんやしていました」と微笑みます。
基本的には同じ楽器ごとにグループを作り、パート練習に取り組みます。
「中1は初めて楽器に触るという、本当に初心者は1~2人でした。今の中2のうちの1人も中1の入部時は初心者でした」と飯島先生が話す通り、同部は初心者もウェルカムです。
ただし、楽器経験者が多いのも事実。
「ピアノの経験者が多い印象です。その他、弦楽器を習っていたという部員の中にはクラブでは別の楽器・トランペットを担当することに。トランペット経験者はクラリネットを希望して入ってきました」と高野倉先生。
「経験者と初心者が混ざって練習しています。初心者には基本的に先輩やコーチが指導しますが、同じ学年同士で教え合う姿も見られます。生徒たちはそのほうが気楽なこともあるようです」(飯島先生)
高野倉先生は、こうした普段の練習の中で感じた生徒たちの様子を話してくれました。
「それまではひと学年2〜3人ずつでほんわかと活動していましたが、中1がたくさん入ってきたことで上級生たちの顔つきが変わって、しっかりしたと思いました。こんなに責任感を感じてきちんと指導をする子だったのかと驚きましたし、うれしかったですし、部員たちが頼もしいと感じました」
飯島先生は、「高2が2人ともサイエンスコースに所属しているので、放課後に7限までの授業が週2回行われています。部活動開始時に最高学年がいないことがあるため、自然と現・高1が仕切るような雰囲気になりますが、テキパキと動いてくれることに助けられています。
高1の部員たちはもともと、楽器運搬の時などでも、黙ってパッとやってくれたり、気を利かせて素早く動いてくれるような子たちでした。
最初は中1がたくさん入部してくれたことを喜びつつも戸惑っていた感じでしたが、次第にこのテキパキさが戻ってきて、最高学年になる来年に向けてそのたくましさを楽しみにしています」と話します。
こうした部員たちの想いや支えがある中で、初心者でも臆することなく挑戦できる環境ですが、楽器は希望しても人数が揃っていた場合、必ずしも思い通りになるわけではありません。ただし上級生の卒業に伴い、希望の楽器に移ることもできますし、当初の希望とは違ったものの、次第にその楽器の魅力にのめり込み技術を磨き続ける部員もいます。
ちなみに飯島先生は、幼稚園の頃からピアノを、中学からは部活動でバイオリンを担当していた経験者。昨年管弦楽部の顧問になってから、およそ20年ぶりに練習を再開したと話します。
高野倉先生も管弦楽部の顧問になって2年目。楽器経験は新任の時に箏曲部の顧問になった際にお箏を始めたそうですが、現在は管弦楽部コーチであり、プロのホルン奏者のOGについて、ホルンに挑戦しています。
「初心者の生徒が、『私は高野倉先生よりできる!』と思ってくれればいいですね」と笑います。
学年ごとに異なる個性、
芽生える責任感
管弦楽部は現在、4月の「新入生歓迎会」と高3が引退する「練習発表会」の2本、9月末から10月初旬に実施される「文化祭」、12月に行われる高3を送り出す行事である「送別会」が活動のメインになっています。
「大きなイベントの前は、土曜日も練習することがあります。高校生たちは夏休み前には9月末の文化祭に向けて、練習計画の立て方などを検討していました。今年は中1が多いので、本番を前にした講堂での練習のタイミングなど、コーチとも相談をしながら、先輩たちはどうしていたのかなど、探っていました」(飯島先生)
管弦楽部の顧問は3名の先生、コーチは先に触れたOGでプロのホルン奏者と、飯島先生が大学時代に入っていたオーケストラに偶然所属していたというフルート奏者の2名です。以前、管弦楽部顧問だった先生のつながりからコーチを務めてくださっているそうですが、こうしたところにもご縁を感じます。
ただし、コーチは毎回の練習に来られるわけではないので、日々の練習は先輩が後輩たちを指導しています。管弦楽部は先輩と後輩の繋がりがとても強い部活。4月の「練習発表会」の時は、卒業生がエキストラで入り一緒に舞台に立ちました。
「現在の大学2年生は10人ほどと、人数が多い代でした。しかしコロナ禍の影響を大きく受け、思うように演奏も発表もできなかった学年でもあります。
コーチからの呼びかけで、その大2生たちや今年、社会人1年生になったOGたちも集まってくれました。4月に社会人に本当になりたてで忙しい時期でもあったにも関わらず、春休みからずっと練習に参加してくれていました」と高野倉先生。
「コーチとしても、在校生たちは少人数での演奏経験しかないため、大人数で思いきり演奏する楽しさを体験してほしいという気持ちがあったようです」(飯島先生)
なお、現在の部長は高2が、副部長は高2と高1の各1名が務めていますが、学年によって活動に対する考え方が異なるそうです。
「すでに引退した高3は、学校内の活動に注力したいという考え方を持つ学年でした。現・高2の代はいつもと違った機会や大きい舞台にも挑戦できるなら出てみたいという気持ちがあるようです。
実際はまだ未定ですが、もしかしたら、今年の末には『アンサンブルコンテスト』という小規模で出場できるコンテストに挑戦するかもしれません」と飯島先生。
こうした生徒たちの意思や挑戦心、やる気を最大限に尊重する同校。学校の教育方針とクラブの活動がリンクする場面はあるのでしょうか。
「例えば演奏曲を決めるときなどに少しPBL型学習の影響を感じます。高2が中心となって演奏したい曲を決め、コーチに提案するという場面は、みんなで曲を聴いて、さまざまな意見を出し合ったり、話し合いをしたりという流れは普段からの学びが役に立っているのではないでしょうか」と高野倉先生。
授業だけでなく日常的に行われているPBL型学習で学ぶのは、他者の意見を否定せず、しかし自分の主張もきちんとした上で、合意形成を図るということ。この意識は生徒たちの中に確実に根付いています。
管弦楽部の活動について、飯島先生はこう教えてくれました。
「 1人で演奏をやるわけではないので、みんなで息を合わせるという楽しさがあります。さらにそこで協調性といいますか、自分がこの集団の中でどんな役割を果たすのかを考えなければなりません。主旋律だから頑張らなくちゃ、伴奏として支えているだとか、いま隣のこの人と同じ動きができているのかなど、役割を認識して自分がどう動くかを考えることが求められます。
それはおそらく、先輩と後輩という関係性の中でも、先輩が後輩のためにこうしてあげようとか、逆にちょっと引いて見守ってあげようなどということもあると思います。
おそらく、集団の中で自分がどう立ち振る舞ったらいいのか、といったことを考える癖が身につくのかなと思います。こういう力は社会に出てから役に立つ部分でしょう。こういうところも学んでいってほしいですね」
主体性を持ちつつ、協働するスタイルを目指す和洋九段女子の学び。クラブ活動からもこうした姿勢が育まれています。
部活をやることの魅力と、
生徒たちにどう成長してほしいのか
管弦楽部の活動について、顧問の先生方はこう話します。
「改めて、演奏するということはとても楽しいことです。私も20年ぶりくらいでバイオリンを弾いて、やはり楽しいなと思っているところです。まずはそういうことを実感してもらいたいですね。
音楽のいいところは、卒業後も大人になってからも続けていけること。演奏するだけでなく、聴いて楽しむというのもいいと思いますが、ぜひ演奏を続けていけると生涯を通じた趣味にもなっていくので、この部活動がそういうきっかけの1つになってくれるとうれしいです」(飯島先生)
「生徒たちを見ていると、特に人数が少ないせいもありますが、お互いを頼りにしているんです。
その楽器がいないと困ってしまいますし、一人ひとりがちゃんと立って、その楽器を担当する責任を背負っている、それぞれがしっかりと力を合わせていると感じることがよくあります」(高野倉先生)
「普段のクラスではなかなか接することができない先輩・後輩との関係から学べるものが多々あると思います。
これまでいろいろな部活の顧問をしてきましたが、部員たちが引退する時に贈っているのが次の言葉です。
『5年なり6年なり、勉強との両立をしながら1つのことを続けるというのは、とても大変なことだと思う。
それを成し遂げることができれば、それは他の人が取って代わることができない、あなたにしかない経験で宝物になる』ということです。
ですから、生徒たちにはぜひ頑張ってクラブ活動を続けてほしいですし、そういう状況を一緒に乗り越えてきた仲間は、生涯の友になっていくと思います」と飯島先生。
学校生活の中に多様な機会を設けている和洋九段女子。大小さまざまな経験を通じて、生徒たちは日々成長し続けています。