学校特集
佼成学園女子中学高等学校2024
掲載日:2024年10月1日(火)
「英語の佼成」・「探究の佼成」として、英語教育や異文化交流、活発な高大連携教育などで高い評価を得ている佼成学園女子。生徒たちは伸びやかかつ刺激的な日々を送りながらも、そうした教育実践が実り、国内外のコンテストなどで様々な成果を上げています。
佼成女子では2025年度から中学でグローバルコースを設け、リベラルアーツコースとの2コース制となります。新設するグローバルコースについて、同校の教育について、国際部長の秋田聡大先生に伺いました。
寄り添い見守り伸ばす、
これまでの長所を生かしつつ改革
2024年、創立70周年を迎えた女子伝統校の佼成学園女子。2020年には中間テストを廃止し、多角的な評価軸を設定するなど、様々な教育改革を実践してきました。今年度は高校で4つ(留学・スーパーグローバル・特進・進学)のコース制に再編成し、より生徒一人ひとりが自分自身の学びにアプローチし、成長できる環境が整いました。
その学びへの接続をより強固にするため、2025年度から中学で新たにグローバルコースが新設されます。従来のカリキュラムで学ぶリベラルアーツコースの2コース制を敷きます。
国際部長の秋田聡大先生にグローバルコース設立の経緯を伺いました。
「中学は従来、コースなどに分けず全員にもれなく手厚い英語学習を提供し、一定の評価をいただいてきました。ただし、海外研修などは高校での実施がメインだったため、そこで培った経験を中学での学びに活かしたいと考えました。従来教育の良さは残しつつも、新たな価値を加えたコースを設立し、より充実した海外研修、探究的な学びへのニーズに応えていきます」
グローバルコースのキーとなるコンセプトは下記の3つです。
・「語学」で人とつながる
・「体験」で世界とつながる
・「探究」で未来とつながる
2025年度入試は、2月1日午前と午後、2日午後、3日午前に行われ、1クラス30名での募集となる予定です。受験の際に最も大切にしているのは「学びたい意欲があること」です。
なお、リベラルアーツコースでは、「わたしらしく世界を彩る」をコンセプトとして、
◇英語力(Practical English)
◇異文化理解(海外研修)
◇探究学習(プレゼンテーション)
◇日本文化(茶道・書写)
◇アート(イマージョン音楽・美術)
◇リテラシー(読書・作文)
◇サイエンス(実験・実習)
の7つのプログラムで幅広い教養を涵養していきます。
この2コースの学びで、早い段階からのシチズンシップの育成を目指します。
次章から、グローバルコースの学びについて見ていきましょう。
マルチリンガルで多文化を理解し、
自己肯定感を高める
「『語学』で人とつながる学び」として、新たに設けられるのが第二外国語の授業です。中1で韓国語を学び、中3ではフランス語またはスペイン語が選択できる予定です。
「新たな言語を学ぶのは、単にその言葉が話せるようになるだけではなく、その文化圏の人間観や自然観、社会観への理解が進むことだと考えています。
語学学習を通じて、自分たちの当たり前や普通とされていたものが、世界に出た時にはそうではなかったというモノの見方を得られることにつながります。このように物事を相対化できることは、子どもから大人への知的な成熟という点でとても重要だと思っています」(以下、秋田先生)
秋田先生が例えば、と教えてくれたのは、虹の色。日本では7色であることが当然とされていますが、文化圏によって8色だったり2色だったり、さらには色を明確化していない国もあったり。
「自然をどう捉えているのか、どんな表現をするのかを知ることで、実は世界の見方が変わります。こうした部分を、理屈ではなく、言葉を学びながら、気づきを得てもらえたらと考えています」
秋田先生は、第二言語を学ぶことは、他の言語習得にもメリットがあると話します。
「中1では英語も韓国語も頑張るので、負荷が多いことを懸念される保護者の方もいらっしゃると思います。しかし新たな言語を学習することは、文法やボキャブラリーの習得の方法論、いわゆる『学び方を学ぶ』ことができます。
その経験は英語習得においても効率化につながり、ポジティブな循環になると考えています。かつ、この第二外国語を話せるようになることで自己肯定感が高まります。生徒たちに自信をつけてほしいのです」
先生方のこの思いには、これまで生徒自身が英語学習を頑張って取り組んできた結果、話せるようになったり、資格を得たりと、自分の殻を破って世界を広げ、自信をつけてきた実績があります。
「英語は小学校の時に習っていたり、あるいは帰国子女だったりとバックグラウンドにより入学時で差があることも事実です。
しかし第二外国語はほとんどの場合、ゼロスタート。自分の努力次第で頑張ったということを一層感じられるでしょう」
努力がきちんと実り、自己肯定感が高まるという、健全な循環が実感できる環境をさらに整備していきます。
対面でコミュニケーションして
"友だち"になってほしい
「『体験』で世界とつながる」として、グローバルコースでは、中1で韓国、中2ではフィリピン、中3はニュージーランドへの海外研修が予定されています。全学年を通して実践的・実用的な英語「プラクティカル イングリッシュ」を重視し、英語力を試す場ともなっています。
「日本と韓国の政治的な関係性は必ずしも安定していませんし、この先どうなるかもわかりません。それでも、K-POPのダンスっていいよね、韓国のドラマは楽しいね、くらいの感覚でまずは臨んでほしいと思っています」
中1で韓国語を学ぶ理由もここに起因しています。
「通訳にお任せするのではなく、少しでも自分で学んだ言語を現地で使ってほしいのです。それにより行く意義も生まれますし、単なるスポットの学びではなくなると考えます。実際には国際共通語である英語でコミュニケーションを取ることになると思いますが、最初だけでも簡単にでも韓国語でおしゃべりができたら、きっともっと仲良くなれることでしょう。ぜひ海外の友だちを作ってほしいのです」
まずは気楽に友だちを作る、という部分に先生方の思いが詰まっています。
「メディアを通して見ることで、かえって見えなくなるものがあります。大切なのは、心の通い合った経験のある友だちがいることです。それにより、過剰なナショナリズムに影響されずに、地に足のついた関係性を築き、フラットな眼差しを向けることができるのではないでしょうか」
中2でのフィリピン研修では、どんな学びを目指しているのでしょうか。
「太平洋戦争の戦跡などを巡りたいと思っています。私たちを含めて、過去の戦争を実体験として経験された方がどんどん少なくなっていく中で、少しでも現場でその思いに触れられるような旅ができればと思っています。
本校の建学の精神は『平和社会の繁栄に貢献できる人間を育成する』。平和を大事にしている学校です。
無念にも現地で犠牲になられた方々の慰霊も含めて、平和について問い直していけたら。この研修を通じて、できれば一人ひとりが自分なりの問いを立てて、それを現地で英語で問うてほしいのです」
さらに続けます。
「日々の授業や事前学習にもきちんと取り組みますが、大事にしているのがあまり頭でっかちになりすぎないこと。私たちとしては、何か課題を解決しに行くという発想はなるべく持たないようにしたいと思っています。課題解決って実は上から目線になりがちです。
むしろ現場の空気を感じて、いろいろな気づきを得てほしいのです。自分の目で見て、耳で聞いて、声で尋ねてという、身体でつながり感じていくことを体験してほしいのです。
生徒たちが持っている10代ならではの感受性を信頼したいと思っています」
中3のニュージーランド研修は、多様な文化的背景を持った人々が共生する地でホームステイを体験。これまで同校が20年以上に渡り培ってきたグローバル教育の叡智を集結させています。
「本校の校訓は『行学の二道』です。これは行が実践や体験、学は学問や理論を指します
これらの研修自体を中学生なりに意味づける振り返りを取り入れます。さまざまな経験を普段の学びとグローバルに結び付けていくコースにできればと思っています」
時には体当たりで自分自身の肌感を通じて、世界で生きている人々の息遣いを感じていくのがこのコースの大きな特徴となっていきます。かつ、それぞれの研修や授業は一連のつながりを持ち、生徒たちの段階的な成長を促しています。
失敗などない! 気概を持った学びで
物事の本質を掴み、課題に立ち向かう探究を
キーコンセプトの3つ目は「『探究』で未来とつながる」です。グローバルコースでは探究的な授業を1単位1コマ設ける予定です。
哲学やSTEAM教育、ジャーナリズムといった視点を得つつ、最先端の知見も取り入れながら、世界情勢を偏りなく見つめる目を養います。
例えば「哲学対話」を通して対話の技法を学び、物事を本質から捉える練習をします。ジャーナリズムでは、中学生ジャーナリストとして、日常でも研修先でも、人に話を聞く際の準備やどう質問するのか、話者がどんな表情で語っているのかなどの状態を含めた観察眼を養い、フィールドワークの技法を身につけます。
「『写真観察法』にも取り組んでみたいと考えています。最初は難しく考えず、おもしろい写真を撮ってみよう!くらいの気持ちで、普段通りにスマホで撮影するということでいいのです。ただし、手当たり次第に撮るのではなく、何をどのように狙うのか、そこにどんな気付きがあるか、自分はどこに着眼したのかを言語化することで、観察力を高めていけるようになります」
その上で「本校所在地の千歳烏山近隣にも様々な活動をされているNPOがあります。そういったところでもボランティア活動を行うなど、地域とのつながりも大切にします。海外だけに目を向けるのではなく、ローカルな視点も大事にしたいのです」と秋田先生。
教科横断型の探究学習や高大連携教育を熱心に取り組んでいる同校。「理系・理工系大学の研究室や学生との学びが進んでいますが、中大携連といった形も積極的に取り入れていきたいですね」と秋田先生は話します。
実際、すでに中学生たちも高大連携講座などに積極的に参加し、自身の関心のある研究分野や学問領域に触れ、難しいながらも瞳を輝かせながら学んでいる姿が見られています。
こうした好奇心の種や論理的思考を、研修という限られた機会というだけでなく日々の学びの中でも育み、共有し合い、刺激し合いながら正解のない課題に立ち向かっていける姿勢を育てています。
「グローバル探究的な授業は我々も初めての取り組みなので、生徒たちとともに試行錯誤していきたいと思います。声を上げるのが得意な子も苦手な子もさまざまな経験を積み重ねることができると思います。例えば引っ込み思案で自分を変えてみたいと思っている子も大歓迎です。完成されたものを求めるのではなく、新しいコースを一緒に作っていくような気持ちで入学してくれたらうれしいですね」
自分にも他者にも、いろいろな考え方や要素、多面性があるということが、概念ではなく経験で気づけたとすれば、人間理解も成熟していくことができます。
思考を自由に羽ばたかせながら、挑戦できる心を養える、大きく成長できるチャンスが豊富にあるのが、このグローバルコースなのです。
学びの楽しさを知り、人間や自然が持つ豊かさ、多様性に触れられる佼成学園女子。生徒一人ひとりが人間として成長を重ねられる経験が用意されています。
この環境に興味がある方は、ぜひ一度佼成学園女子へ足をお運びください。