学校特集
城西大学附属城西中学・高等学校2024
掲載日:2024年10月1日(火)
自由教育に立脚した「天分の伸長」「個性の尊重」「自発活動の尊重」を建学の精神とする城西大学附属城西中学校。中高6年一貫の体験型教育プログラム「JFGLP (Josai Future Global Leader Program)」で生徒一人ひとりの才能と素質を引き出し、歴史ある国際交流の実りを活かして世界で活躍するグローバル人材を育成しています。2024年度から高校普通クラスを「AC(アカデミック&クリエイティブ)クラス)」に改編。「超・実践型」の探究活動を展開しながら、大学のすべての選抜入試に対応できる進学サポート体制を整えています。生徒たちの「心のエンジン」の着火点を日々追求し続ける、校長の神杉旨宣先生にお話を伺いました。
体験型教育プログラム「JFGLP」で「心のエンジン」に火をつける
■U.S.デュアルディプロマプログラム(D.D.P)初の修了生が誕生
伝統的に、国際交流プログラムが充実する同校ですが、2022年度から導入したU.S.デュアルディプロマプログラム(D.D.P)で、初の修了生が誕生しました。
D.D.P第1号となった高3生は、「英語力に磨きをかけたい」と高1からD.D.Pに挑戦。中3で3級だった英検も、現在では準1級を取得しています。授業終了後はテニス部で汗を流し、帰宅後には現地から配信されるライブのオンライン授業に向けて、ひたすら課題をこなす生活を続けていました。オンライン授業では質疑応答やディスカッションなども行われ、レポート提出も必須です。
神杉校長:「英語力の向上が一番大変だったと生徒本人も話していますが、課題は非常にアカデミックな内容で掘り下げていかなければならず、ずっとオールAが続いていた成績も、最後はBがいくつかつくようになりました。課題のレベルがどんどん上がっていくので受講を続けるのは大変だったと思いますが、再生可能エネルギーなどの環境問題からビジネス、芸術分野まで多岐にわたる講義内容には非常に刺激を受けたようです」
海外大学だけでなく、帰国生枠で国内大学への進学も可能になるD.D.Pは、進路への選択肢を大きく広げてくれます。現在も、高校生数人がD.D.P修了を目指して受講中です。
「自身を成長させてくれたプログラム」と話す修了生は、経済的な負担を考慮して国内大学への進学を希望しているそうですが、神杉校長は、「両親への感謝や、周囲へ配慮できるようになるなど、D.D.P受講によって人間的にも成長が感じられます」と話します。
「U.S. デュアル ディプロマ プログラム(D.D.P)」
D.D.Pとは、城西在校中(対象は中3以上)にオンライン講座を追加受講することで、日本にいながらアメリカの名門高校(PCD)の卒業資格を得ることができるもの。卒業後は、全米ハイランキングトップ2〜8%に含まれる18大学への指定校推薦入学(100%学部入学)が認められるほか、ヨーロッパ、UAE、ニュージーランドの大学も追加される予定。また、帰国生枠で、国内難関大学を受験することができる。
■エネルギーが爆発した体育祭
このように何かに夢中になって取り組む生徒は、知らず知らずのうちに強いエネルギーを発しているものです。そうした生徒同士の熱量が爆発したのが、体育祭でした。
神杉校長が「19年奉職していた中で一番盛り上がった」と話す6月の体育祭は、国立代々木競技場第一体育館を会場に、1200名弱の全校生が学年の枠を超えて躍動し、奮闘した1日でした。平日開催にもかかわらず、保護者の方が1358人も観戦に駆けつけ、生徒たちを熱く応援。
神杉校長:「コロナ禍で思うような体育祭を経験できなかった反動でしょうか。高3生には城西生活最後のイベントという強い意識があり、応援団がリーダーシップをとって熱のこもったリハーサルを繰り返し、数日間のうちにそのエネルギーが下級生を巻き込んで、学校全体の熱気がどんどん高まっていきました。最後は1点差で優勝チームが決まるという大盛り上がりでした」
みんなで協力し合って一つのことを成し遂げる団結力と達成感、生徒一人ひとりが自分の役割を発揮して協働していく楽しさ、そうしたものが凝縮された体育祭の1日でした。
■一巡した「JFGLP」は次のステップへ
2018年からスタートした体験型教育プログラム「JFGLP( Josai Future Global Leader Program)」が一巡しました。これは、豊かな人間力・語学力・国際感覚を身につけた、グローバル社会に貢献できる人材を育てるため、基礎学力・教養・協働力・異文化相互理解力・課題解決力・実践力に重点を置く中高6年一貫の教育プログラム。教科横断型学習と体験型学習を体系的に組み合わせ、授業で学ぶ知識と実体験を融合することで、知見を広げ、経験値を高めていくものです。
特に中学ではPBL型学習で問題解決力と協働力を養うことを目指しますが、中学3年間で行う理科の実験・観察は100以上に及ぶなど、本物に触れる実習を多く取り入れることによって、生徒一人ひとりの持って生まれた素質と才能を引き出しています。
①日本の自然に触れる→中1「農業体験」
②日本の伝統文化を理解する→中2「京都研修旅行」
③世界を知り、海外の文化についての考えを深める→中3「オーストラリア海外研修」
④国際人としての教養を身につける
中1の農業体験で日本の自然環境と持続可能性に対する視点を養い、中2は事前学習で京都の歴史や文化を調べ、日本のアイデンティティを学ぶ文化体験や比較文化研究などに取り組みます。
中1の農業体験では「稲作」に取り組んできましたが、これまで協力してくださっていた方が高齢となったことから、夏のサマースクールでの「高原野菜の収穫」に変更しました。中2の京都研修旅行では、事前学習でインバウンドなど現在の京都が抱えている諸問題を調査し、民泊体験も実施。
神杉校長:「『JFGLP』では、いろいろな体験を通して成功・失敗を繰り返すことが大切だと考えています。特に京都での民泊は、生徒たちにとってインパクトの強い体験となっています。お世話をしてくださるのは、高齢のおじいちゃん、おばあちゃんなのですが、わずか2泊3日でも最後には離れがたくなってしまう。好き嫌いが多くて家庭での料理以外、一切口にしなかったような生徒が、2日目にはしっかり食べていました。よそのお家の料理を初めて食べたんじゃないでしょうか。おばあちゃん曰く、『腹が減れば、なんでも食べるものです』と(笑)。なんだか、教育の原点を見たような気がしました」
そして、中学での体験学習の集大成と位置づけているのが、中3のオーストラリア海外研修(全員参加)です。オーストラリアでは、ブリスベン市内のホストファミリーの家庭に1〜2人ずつに分かれてホームステイをしながら、現地校に通います。約2週間の滞在期間中、1週目は城西生だけの語学研修用クラスで学び、2週目からは現地提携校の7校に分散して、現地の生徒たちと一緒に授業に参加します。
神杉校長:「言葉のハンデはありますが、現地の先生と生徒たちが活発に意見交換しながら進める授業スタイルは刺激的で、自己発信力の重要性を肌で感じる体験となっています。わずか2週間でも、自分の意見を相手に伝えることの大切さを実感することは、異文化理解の大きな体験となり、帰国後の学びへのモチベーションにも繋がっています」
■高2修学旅行はハワイ、台湾、国内の3コース
探究活動と体験型学習を融合させた「JFGLP」の中間目標が中3のオーストラリア海外研修とすれば、高2の修学旅行は最終目標と言えるでしょう。実社会との接点を重視した探究活動が同校の大きな特色ですが、どの体験プログラムも毎年決まった内容をなぞるのではなく、先生方がその都度カスタマイズ。生徒たちが自ら課題を見つけ、主体的に解決する力を身につけて行く設計となっています。
高2の修学旅行は、台湾・ハワイ・国内の3コースに分かれますが、いずれも事前学習や現地でのフィールドワークを通して持続可能な社会のあり方を考え、当事者として課題に向き合い、探究を深めていくものとなっています。
【台湾コース】 姉妹校の同世代との交流から、国と国の理想的な関係を模索する(実践例:故宮博物館見学・姉妹校との交流会など)。
【ハワイコース】 多民族が共生するハワイならではの異文化理解の視点で、現地の大学生と一緒に課題を探してセッションを行う(実践例:ハワイ大学での研修・真珠湾の戦艦ミズーリ記念館での平和教育など)。
【国内コース】 山陽から四国、関西を巡りファームステイやフィールドワークを実施。
神杉校長:「高校の修学旅行は、次のステップに向けた『気づき』を得ることを目的にしていますので、各コースでボランティア活動やフィールドワークなど、体験を重視したクリエティブワークを盛り込んでいます。6年間の『JFGLP』が一巡したことは本校にとって大きな自信となっています。それぞれの活動の目的意識が明確化され、どのような効果が得られるかもわかってきました。前年度の実績に立ち止まることなく、常にブラッシュアップしていくことが重要で、私たち教職員も学び続けていかなければいけないと強く感じています。10年後、20年後の先の見えない社会に旅立つ生徒たちに必要なものは、常に学び続ける姿勢です。生き方も価値観もますます多様になると思われる次代を生き抜くためには、常に『学ぶマインド』が下地にないといけないと思っています」
①異なる価値観を受け入れ、他者に自分の意見を伝える
②広い世界に触れ、世界の成り立ちを知り、自分の生き方を考える
③世界の中の自分の立ち位置を定めて、専門性を高める
多様な選抜入試に対応する「AC(アカデミック&クリエイティブ)クラス」
■「自ら考えて行動できる力」を育成
2024年度より、高校普通クラスを「AC(アカデミック&クリエイティブ)クラス」に改称しました。本物志向のアカデミックな学びとクリエイティブな探究活動を通して、これからの社会で求められる「自ら考えて行動できる力」を育成することを明確に打ち出したのです。
高1の「ACクラス」は留学生・附属生・高入生の混合とし、高2から希望進路に応じて「AC理系」と「AC文系」に分かれます。国公立、私立を問わず、一般選抜、総合型選抜などの推薦型入試にも対応できるよう、学習支援や進路サポートを充実させています。
■(A)アカデミックカテゴリー
大学の一般選抜入試に向けて、5教科の「放課後ゼミ」や「7限授業」などの課外授業を設置。授業では、主要科目を中心に習熟度別展開を加速化させ、生徒の進路実現に向けて徹底した対策をとる。
■(C)クリエイティブカテゴリー
難関大学の総合型選抜、公募推薦入試にも対応できる知識とスキルを身につける。キャリア特別講座である「αゼミ」、複数コースから選択できる探究型学習、そして修学旅行などの諸活動によって、さまざまな社会的課題を自分の課題として捉え、社会と関わる力を養っていく。
そして「ACクラス」では、高1の2学期から年間20コマの探究活動「BEYOND(ビヨンド)」をカリキュラムに組み入れ、普段教室では学べないリアルな知識や新たな出会いを得られる機会としています。
■「ACクラス」の探究プログラム
「BEYOND(ビヨンド)〜世界へ飛び出して、自分の『好き』を探究するプログラム」
「BEYOND」という名称には、日常の枠を超え、勇気を持って探究にチャレンジしようという思いが込められています。外部団体と連携して、「次世代リーダーの創出」を目的とした探究プログラムでは、生徒たちは12種のテーマから1つを選択し、「実践派」と「頭脳派」のいずれか得意なアプローチを選んで、世界課題にチャレンジしていく探究学習となっています。
神杉校長:「昨年からスタートした全員参加型の探究学習『BEYOND』も、生徒たちの満足度がとても高いです。オンラインで各国と繋いだり、世界に視野を広げた課題に挑戦するのですが、『心のエンジン』に火をつけるという意味では、新しい気づきを得ることに繋がっています。短期の海外研修を含んだプログラムですので、実際に『インドネシアに行ってきました』『シンガポールに行ってきました』と、夏休みや春休みを利用して現地調査を行う生徒もいました。自分が何を求めているのか、何に向いているのかを真剣に考えるきっかけにしてほしいですね。私たち教員も生徒に寄り添いながら、生徒が望む進路へ踏み出せるようサポートしていきます」
■多くの生徒が、入学の決め手となった「αゼミ」
高1〜3の希望者を対象に実施されている「α(アルファ)ゼミ」は、大学や企業、NPOなど外部団体と連携して独自の探究学習を展開する、同校独自の「超・実践型の」探究プログラムです。予測不能な未来社会で活躍する人材を養成するキャリア特別講座で、普段の授業では身につけることが難しい課題解決能力やプレゼンテーション能力、プランニング力などを、さまざまな活動を通して身につけていきます。
ゼミ1期生は、修学旅行で岡山県吹屋地区を訪れたことをきっかけに地元の活性化プランに取り組み、入浴剤「吹屋ベンガラの湯」の商品化に成功。2期生は、石川県七尾湾に浮かぶ能登島の活性化プランに取り組んで、現地の商工会や観光課にゆるキャラを提案。そのゆるキャラは旅館の配膳敷きに印刷されたり、観光案内のアニメーションや4コマ漫画に登場したりしています。
神杉校長:「今年の高1は45人が『αゼミ』にエントリーしていて、昨年度から倍増しています。驚いたのは、その多くが学校説明会で『αゼミ』の活動を知って本校に入学していること。そのぐらい、このゼミの取り組みが保護者と受験生に共感していただけているのだとわかりました。今年度の高2では、志望理由書などを書いてもらい、さらに内容の濃いプログラムにしていきたいと考えています」
修学旅行や「αゼミ」における探究活動は、進路目標やキャリアデザインに繋がることも少なくありません。「αゼミ」に参加する生徒の多くが、総合型選抜や学校推薦型選抜を視野に入れ、目的意識を持って難関大学を目指しています。生徒のニーズも大きいことから、今後はOBやOGのサポートを得て、「αゼミ」を部活動のような形に昇格させることも考えているそうです。
神杉校長:「入学当初はとてもおとなしくて内向的な印象だった生徒が、『αゼミ』の経験を通して、生まれ変わったように積極的になり、本来の個性を発揮し始めることも珍しくありません。そうして大学生になり、自分が望む進路を手に入れて、今度は後輩たちの役に立ちたいとまた学校に戻ってくる。これは、本校の建学の理念である『報恩感謝』そのものだと思います」
■長い歴史を積み重ねてきた国際交流
同校のグローバル教育を遡れば、1982年、アメリカ・オレゴン州のスイートホーム高校との姉妹校交流に始まります。今では世界7カ国16の学校との姉妹校・提携校関係にありますが、こうした歴史を土台として2018年度から「JFGLP」がスタートしました。特にスイートホーム高校との関係は深く、これまでに長期・短期合わせて1500名以上の生徒の交換留学を行ってきました。
現在当たり前のようになっている海外留学中の単位認定制度も、同校が他校に先駆けて始めたものです。異文化で育った同世代と直接触れ合う中で、多様性を認め、尊重し合いながら、将来国際社会で活躍できる人になる。同校が目指すのは、そんな生徒を育てることです。
神杉校長:「あと数年で本校の国際交流の歴史は50周年を迎えます。もう数十年にわたって城西生のホストファミリーをしてくださっている方が、先日初めて来日されたのですが、短期間でも深い交流ができ、英語力があればさらに濃密な関係を築くことができると実感しました。本校には毎年数十人の留学生がやってきますが、彼らが日本の生徒たちにもたらす化学反応にはとても大きなものがあります。長い歴史を持つ国際交流プログラムをこれからも速度を落とさずに、さらに発展させて、真のグローバル人材を育成していきたいと思っています」
①中3「オーストラリア海外研修」(全員参加)
②高2「台湾・ハワイ・国内」修学旅行(1つを選択)
③高1・2「短期・中期・長期の海外派遣」(希望者)
※留学先→アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・カナダなど
※期間→2〜3週間(短期)/3カ月(中期)/10カ月(長期)