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学校特集

狭山ヶ丘高等学校付属中学校2018

「自己観察」と「自学自習の確立」で学力と心力を備えた人に!
多彩な学校行事や情操教育を通して、たくましく生きる人間力の素地を培う

掲載日:2018年8月10日(金)

1950年に前身である飯能高等家政女学校として創立し、1960年には現在地へ移転開校した狭山ヶ丘高等学校。以来、堅実な校風と生徒の「自学自習」を育む姿勢が結実した進学実績で、入間・所沢・川越エリアを中心に高い人気を集めています。
2013年に開校した付属中学校は、今春中高一貫生の全学年が揃いました。「自学自習」の姿勢は中学校にも受け継がれ、自己管理能力を養う学校生活と豊富な行事、多彩な情操教育がバランスよく展開されるなか、生徒たちはメリハリのある充実した毎日を送っています。
今回は中学3年生の担任で、5月に行われた「軽登山」を引率された社会科の髙木駿先生に、生徒たちの自己観察力を大きく育てる学校行事や情操教育を中心にお話を伺いました。

「自己観察教育」で人間性を育む

授業開始のチャイムと同時に訪れる一瞬の静寂......。
豊かな人間性を育むことを何よりも重視する同校では、授業の前に「黙想」を行います。それは自分自身の心を見つめ、さまざまな気づきを促す貴重な時間。

日々、テーマに従い行われる「黙想」は、時間に節目をつけて気持ちを切り替える訓練となるとともに、高い集中力が養われます。また、自分と向き合うことで、心を落ち着かせるだけでなく、自己を律する強さと冷静な思考力を涵養する土台にもなります。

狭山ヶ丘_「黙想」は身近なところで、支え応援してくれる人々に感謝する時間でもあります。
「黙想」は身近なところで、支え応援して
くれる人々に感謝する時間でもあります。

この「黙想」は、同校独自の心の教育「自己観察教育」の一環として行われているものです。
「自己観察教育」とは、自己を見つめ、本来のあるべき自分の姿に気づかせることを目的としたもので、以下の三つの柱で構成されています。

①黙想:内省を育む
②茶道:心身の動と静を育む
③対話:コミュニケーション力を育む

これらは生徒が自ら成長し、豊かな人間性を身につけるために大きな役割を果たすもので、同校の学校生活すべての基盤にもなっています。これが躍進を続ける大学進学実績のバックボーンにもなっているのです。

●茶道
狭山ヶ丘_

高校3年次には、週1回「茶道」の授業を実施。本格的な茶室「悠久庵」で裏千家の先生の指導のもと、お茶を点てる作法だけでなく「もてなし」や「しつらえ」など、日本の文化にも触れます。大学受験を控えている時期に、「互いに心を開き仲良く(和)」、「敬い合い(敬)」、「心清らかに(清)」、「どんな時にも動じない(寂)」という、茶道の世界で大切にされている「和敬清寂」の精神を学びますが、これはそのまま将来、社会に出た後にも生きてくる素養となります。
卒業時は全員が「茶道裏千家初級許状」を取得することができます。

仲間と苦難を乗り越えることで自己を見つめ直す

狭山ヶ丘_髙木駿先生
髙木駿先生

狭山ヶ丘高等学校付属中学校には、日々の生活や行事を通して、自然に触れる機会が豊富に用意されています。
その一つでもある「軽登山」は年2回、定期考査の直後に実施される恒例行事。学年全員が一丸となり、奥武蔵や秩父、奥多摩の山々の踏破を目指します。

今年の5月には中学3年生が飯能市に位置する標高627mの山・子ノ権現(ねのごんげん)に挑戦しました。
「我々教員は二度ほど下見を行いましたが、なかには危険な足場もあるため、安全には細心の注意をはらいました。当然気を緩めたり、ふざけ合ったりしていると、大きな怪我にもつながりかねません」と髙木先生。

当日は9時25分に西武池袋線「吾野駅」に現地集合。入念な準備体操の後、登山が開始されました。
「クラスメートと協力し合って登るのが『軽登山』の醍醐味です。毎回、生徒たちの体力面を考慮してルートを設定しますが、なかには体力的に厳しい生徒もいます。それでも声をかけ、ともに励まし合いながら一歩一歩頂上を目指していくことで、仲間との結束力が強まります。また自分の足で山を登り切った達成感は、机上では決して得ることのできない貴重な経験になります」と髙木先生。

狭山ヶ丘_中1の春は高尾山へ登頂。成長段階に合わせて、難度を設定します。
中1の春は高尾山へ登頂。
成長段階に合わせて、難度を設定します。

11時45分には頂上にある「子ノ権現天龍寺」に到着。生徒たちは、終始和やかな雰囲気で昼食を取り、集合写真を撮るなど、登頂の喜びを分かち合いました。「しかし、場所が厳かな寺院ということもあり、大きな声を出したり、はしゃぎ過ぎたりする生徒は一人もいませんでした」と髙木先生が語るように、時と場所、場合に応じた節度ある態度がとれるのも同校の生徒たちの特徴と言えるでしょう。

そして13時には下山を開始し、15時頃には西武秩父線「西吾野駅」へと到着。軽い疲労感と自然に触れる爽快感を伴う、充実した1日となりました。

狭山ヶ丘_整備された場所だけではないので、一歩一歩確実に。
整備された場所だけではないので、一歩一歩確実に。

『勉強から少し離れて、気分転換になってよかったです』
『途中で心が折れそうでしたが、友達と会話しながら楽しく登ることができました』
『辛かったけれど、登ってよかったと最後には思いました』
『助け合うことはとても大切なことだと、軽登山から学ぶことができました』
『今回深まった絆を、今後は体育祭や合唱コンクールなどに生かしていきたいです』

狭山ヶ丘_山頂の澄んだ空気のなかで食べるお弁当は格別。
山頂の澄んだ空気のなかで食べるお弁当は格別。

これらは、登山終了後の生徒たちの感想ですが、それぞれの思いがダイレクトに伝わってきます。
「山には人の絆を深める力があります。仲間と共に苦難を乗り越えた経験と、普段とは異なる環境下で交わす友や先生たちとの対話は、互いを思いやる心を育むとともに、自己を見つめ直す絶好の機会にもなります。生徒たちにはただ漠然と山を登るのではなく、『自分は仲間からどのように見られているのか』、『自分に仲間を気遣う余裕はあるのか』と自問自答することで、心に潜む新たな一面をこの『軽登山』から発見してほしいと考えています」と髙木先生。

つまり同校が重視する「自己観察教育」の一つでもある「対話教育」がここでも生かされているのです。

●「宿泊研修」(中2)
狭山ヶ丘_自然の壮大さに触れる「宿泊研修」(写真は昨年度までの立山のもの)。
自然の壮大さに触れる「宿泊研修」
(写真は昨年度までの立山のもの)。

中学2年次の「軽登山」は年1回の実施になりますが、その代わりに夏休みに行われるのが「宿泊研修」です。2017年は標高2700mある「北アルプス・立山」の登頂を目指しました。これまでの「軽登山」では経験したことのない難関への挑戦。当然苦しい場面にも遭遇します。
それでも苦難を乗り越えた先にある美しい風景に癒され、大自然に圧倒される体験は、生徒たちの心に鮮烈な記憶として刻まれます。
なお、2018年度の「宿泊研修」は群馬県の上毛三山の一つ榛名山の登頂と榛名湖周辺の散策が予定されています。

感性を磨く情操教育で自己観察力を高める

同校では文化祭や体育祭はもちろんのこと、本物の文化や芸術に触れ、感性を伸ばすプログラムが多数用意されていますが、各行事の後には必ず振り返りの機会が設けられています。自分の行動を省みることは「自己観察教育」にもつながると同時に、生徒自身が自分の成長を俯瞰し、実感できる一助にもなっているのです。

●芸術鑑賞会
狭山ヶ丘_

11月に行われる「芸術鑑賞会」は、本物の芸術に触れる絶好の機会。歌舞伎や能といった日本の伝統芸能のほか、国際的に活躍するバレエ団の公演やオーケストラの演奏など、毎年多彩な芸術に親しむことができます。

中学生の頃から本物を知ることで、感性と教養を育むのが狭山ヶ丘流。昨年は和太鼓や琴、三味線による和楽器の演奏を堪能しました。

「本校の芸術鑑賞会は、聴くだけに留まりません。プロの演者の方から直々に手ほどきを受けられるのも特徴の一つです。歌舞伎鑑賞の際には、『見得を切る』といった所作や意味などを演者の方から、わかりやすく教えていただきました。日本が誇る文化への造詣を深められたことは、生徒たちにとっても得難い体験となりました」(髙木先生)

●合唱コンクール
狭山ヶ丘_

生徒たちの絆を深める行事に11月の「合唱コンクール」があります。指揮者と伴奏者の生徒が中心となりクラスをリードしますが、時には一斉練習のための時間捻出が難しかったり、全員の心がなかなか揃わなかったりといった壁にもぶつかります。
そんな時も、より良い合唱にするために議論を繰り返し、試行錯誤を重ねていくなかで、生徒たちは信頼関係を紡ぎ、クラスがまとまる一体感を味わいます。

同校には多種多様な体験の場が設けられていますが、そこには生徒一人ひとりが自分の得意分野を生かしてリーダーシップを発揮できる、さまざまな仕掛けが用意されています。「生徒たちの意外な側面が見られる学校行事は、我々教員にとっても成長を促してくれる貴重な場です」と髙木先生が語るように、このような情操教育や行事においても、他者と認め合える環境があることは、相互理解、ひいては自分と向き合う「自己観察力」の育成にもつながっているのです。

「自学自習の確立」で主体性を学ぶ

狭山ヶ丘_実験を積極的に行い、理系にも強さを発揮しています。
実験を積極的に行い、理系にも強さを発揮しています。

きめ細やかな指導体制のもと、同校が目指す教育が「自学自習の確立」です。とくに中学校では、生徒のやる気を喚起する工夫が学校生活の随所に盛り込まれています。

例えば毎週定期的に行われる小テストは、学習習慣の定着と授業内容の到達度を確認することが主な目的ですが、生徒たちは自ら現状を的確に把握して取り組むべき課題を見出し、授業で得た知識を確実に自分のものにしていきます。

また、学習へ向かう気持ちを支え、目標を成し遂げるために必要な力が「自己管理」の徹底であり、その姿勢を育んでいるのが、中学生が取り組む「生活の記録」です。

「『生活の記録』は1日を振り返り、自己評価をすることで、次の行動へ生かすためのものです。毎日担任に提出しますが、教員は一人ひとりに的確なアドバイスを添えて返却します。これを継続することで、生徒は自己管理能力を養い、日々のモチベーションを保つことができます。毎日継続することは、生活リズムの確立にもつながっています」と髙木先生。

同校の生徒たちは自己を律する力を身に付け、主体的に学習に取り組むことで、真の学力を身につけていきます。今春の卒業生が東大合格を果たすなど、堅調に伸びる大学進学実績も、自分の心を観ずる「自己観察教育」と「自学自習の確立」の賜物といえるでしょう。

活性化するアクティブラーニング

狭山ヶ丘_フィールドワークも豊富。上は城ヶ島海岸馬の背洞門で行われた中2の「理科実習」。
フィールドワークも豊富。上は城ヶ島海岸
馬の背洞門で行われた中2の「理科実習」。

同校では、各教科でアクティブラーニング型の学びも取り入れていますが、ここでは髙木先生が担当する社会の授業とホームルームの様子をご紹介します。

「私が受け持つ社会科の授業では映像を多用しています。中学3年次の公民では、総裁選中継の様子を観ながら、『なぜ解散時に万歳をするのか』について考えました。教科書を使った授業に比べ、映像を使った授業のほうが、生徒たちの反応も良く、授業も活発に展開するので知識の定着も深まります」と髙木先生。

狭山ヶ丘_「課題研究」の発表時には、鋭い質問が投げかけられることも。
「課題研究」の発表時には、
鋭い質問が投げかけられることも。

生徒の関心を高めるために、ミュージカル映画の一場面やテレビ番組を活用することもあるそうです。また、グループによるディベートの授業では「死刑制度の是非」、「日本にアメリカ軍の基地はあるべきか」、「日本に少年法は必要か」などについても討論しました。
「テーマをスピーチする立論者、相手に反論する反対尋問者、そして相手と意見を交わす最終弁論者を立てたうえで、それぞれの役割分担を決めて取り組みます。全員が自分の役割を全うできるように各自が何を調べるのか、どのタイミングで話すのか、事前にグループ内でしっかりと話し合います。

1週間ほどの準備期間を取って資料に当たり、グループ内でも対話を重ね、最後は自分たちの方針を固めて授業に臨みます」(髙木先生)

狭山ヶ丘_校長の小川義男先生の「道徳」
小川義男校長の「道徳」は哲学的な内容も
含まれ、思考の引き出しが増す魅力に富んだ授業。

実際のディベートでは、死刑制度を持たない国のデータを準備して、死刑制度は犯罪の抑止力にならないという具体的な数字や証拠を示すなど、白熱した議論が展開されました。

「『女性と男性、どちらが得か』も非常に盛り上がった議題の一つです。『女性のほうが平均寿命は長いが、配偶者に先立たれる可能性が高いので寂しい』、『女性はレディースデイがあるからお得』といったことや、女性特有の病気やパーキングエリアなどでの女性トイレの混雑具合など、あらゆる着眼点から討論が行われました。最後は他のグループの生徒を聴衆に見立て、どちら側に説得力があったかを投票するのですが、この時の授業では『女性のほうが得』という論が勝利を飾りました。

狭山ヶ丘_1分間スピーチ
「1分間スピーチ」は、考え伝える
力だけでなく聴く力も培います。

ディベートの授業のおもしろさは、『必ずしも自分の意見通りの弁論側に立てるわけではない』ということです。テーマに対して賛否が偏った時には、ジャンケンをして人数を割り振り、時には自分とは異なる考えに立つこともあります。ただし、ディベートでは相手の反論を事前に予測して対策を立てることも重要になりますので、反対意見を持っていることは強みになります」
(髙木先生)

また同校では、帰りのホームルームを活用して、毎日一人が発表する『1分間スピーチ』も行っています。
『気になる職業』、『気になるニュース』『おすすめの本』など、学年に応じて設定されるテーマは多彩。55秒から65秒の間で簡潔に話すことが目標ですが、最近ではほとんどの生徒が、その目標を達成するそうです。

ここに紹介した事例は、ほんの一部に過ぎませんが、同校では一つの物事をさまざまな角度から検証し、意見を交わすことが"当たり前"のように展開されています。

狭山ヶ丘_中1「社会科見学」
校外学習の前には、事前学習もしっかりと
(写真は中1「社会科見学」)。

自分の言葉で考え、人に伝えることは、将来にわたって欠くべからざる力になります。上記のような教科学習やフィールドワーク、校外学習をはじめとした体験学習の機会など、日々の学校生活のさまざまな場面で、そのための仕掛けを施しているのが同校の大きな特徴なのです。

自ら経験することや汗をかくこと、本物に触れ、仲間と感動を分かち合う貴重な体験の数々。
こうした蓄積が人間性を大きく育て、世界を舞台に活躍できる豊かな感性を養う教育へと繋がっています。

狭山ヶ丘高等学校付属中学校には深い思考力や大きな志を培う確かな環境があるのです。
「自己観察教育」により身に付いた"心力"と「自学自習の確立」を通して養われた真の"学力"を兼ね備えた生徒たちは自らの果たすべき使命を悟り、目的に向かって力強く歩み続けることでしょう。

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