学校特集
八王子学園八王子中学校・高等学校
ICTを振る活用して、アクティブラーニングをより実りあるものへ!
豊かな自然と地域に根付いた伝統文化が融合する街・東京都八王子。JR中央線「西八王子駅」から徒歩5分に位置するのが、今回ご紹介する八王子学園八王子中学校・高等学校です。
1928年の学園創立時より、「人格を尊重しよう」、「平和を心につちかおう」を学園モットーに、人間教育に尽力してきた伝統校が中学校を開設したのが2012年。当時入学した生徒たちも、現在は高校生として同校の中核を担っています。
2016年からは「八学イノベーション」と銘打つ、新たな教育改革に取り組み、さらなる進化を目指します。
ますます進化を続ける同校の2016年度のビジョンを募集広報部長の吉村昌輝先生にうかがいました。
2016年は「八学イノベーション」元年!
多様性に呼応できる人材育成を目指す!!
創立者・市川英作氏の「よい青年を育てたい」という想いに賛同した八王子市の有志の協力により開校した八王子学園八王子中学校・高等学校。「八学」の愛称でも親しまれる同校の生徒たちは、地元住民からも温かく見守られています。そんな同校ではあいさつや言葉遣い、時間を守るなど「当たり前のことをきちんとする」教育や、コミュニケーション能力の育成をさまざまな行事を通じて行っていますが、その中でも最も大切にしているのが「人間教育」です。
募集広報部長の吉村昌輝先生は「生徒たちが社会に出た時、常に自分が望んでいる環境に置かれているとは限りません。本校では、どのような状況下でも、その環境を楽しみながら乗り越えられる人間を6年間かけて育てていきたいと思っています。そのためには『主体的に考え、行動できる』力が必要です。その第一歩として、まずは生徒全員が希望の大学に進学し、そこで"学問"をしてほしいと思っています。世の中や我々を取り巻く環境は日々変化します。先行き不透明な時代だからこそ『主体性と行動力』、そして"学問"を極める姿勢を持つことが、人生を自分の手で掴み取る近道となるのではないでしょうか。
本校では2016年度から『八学イノベーション』が本格始動しますが、どんなに世の中が変化しても、人には変えられない信念や変わらずに大事にしなければならないことがあります。本校はこれまで以上に『人間教育』を重視しながら、改革・進化を続けて行きます」
同校ではこれまでも、多彩な行事や課外活動を通じて、生徒一人ひとりが輝く力を身に付ける「キミが主役プロジェクト」など、さまざまな教育プログラムを実践してきましたが、「八学イノベーション」はそれらをさらに強化・発展させたものです。次の章からその具体的な取り組みについて紹介していきます。
八王子に古くから伝わる車人形
近隣の畳屋さんでの日本文化体験
地元に愛される八王子学園ならではの体験学習が
多数用意されています。
「八学イノベーション」その①
アクティブラーニングが生徒たちの「当たり前」に!
「八学イノベーション」の授業スタイルの基本はアクティブラーニング!吉村先生は導入の契機について次のように話します。 「アクティブラーニングの必要性を最も強く感じたのが、第一期生である現在の高1が昨年7月に行った、オーストラリアへの語学研修です。オーストラリアではアクティブラーニングは当たり前。まるで空気のように浸透していることに、生徒のみならず我々教員も痛烈なカルチャーショックを受けました。
例えば、明治時代に大久保利通がヨーロッパを回った時代の日本はまだ手工業中心の社会でしたが、ヨーロッパではすでに蒸気機関で紡績工場がシステマティックに動いている。これを見たとき、彼らは日本国内の状況をなんとかしなければと思ったはずです。私は日本史の教員ですのでこのような例えを紹介しましたが、これと近い衝撃をオーストラリアで受けたのは事実です」
日本とオーストラリアでは、授業のイメージそのものがまったく異なっており、学校教育の本質はこのような双方向型の授業なのでは、と先生方は強く感じられたとか。
そのため同校では、黒板を使ったインプット型授業もきちんと行ったうえで、その知識をベースにディベートやディスカッションにも積極的に取り組んでいます。
「これまでの日本の教育では"授業中はおしゃべり厳禁"という風潮が万延していました。本校ではそれを打破したいと思っています。授業の中でアウトプット・インプットの時間を、メリハリをつけて混在させ、時と場合に応じた授業を"当たり前"にしていきたいのです。
今はボーダレスな時代。これからの世界で活躍するには、双方向性の交流が当たり前であるということを、中学生のうちから授業で認識させ、高校生になってもその意識が続くように展開していきたいですね」(吉村先生)
またアクティブラーニングを取り入れたもう一つの理由には、当然2020年に実施される「大学入試改革」も大きく影響しているようです。
「我々はある程度、大学入試を見据えながらカリキュラムや問題を作成します。今のところ、2020年以降の大学入試の詳細は未定ですが、これまでの知識型よりも"知識の活用"。そして相手に自分の考え方を理解してもらい、共感を得られる力が必要になるのは間違いないでしょう。その意味でもアクティブラーニングの重要性を教職員一同強く実感しています」と吉村先生。
同校のように、中1の早い段階から積極的に双方向型の授業を行い、臆さずに発言することが「当たり前」という潜在意識を植え付けることができれば、それは生徒たちを大きく成長させる糧となるはず。
「答えて間違えることは恥ずかしいことではありません。むしろ"黙っていること"のほうが問題なのです。これからは『沈黙が美徳』といったこれまでの授業形式の改革が必要です。もちろん、そういった側面を完全には否定しませんが、アクティブラーニングの時間の『みんなで議論しよう』という前提の中では、むしろ"発言しなくちゃつまらない"ということを強く認識してほしいと思っています」(吉村先生)
「八学イノベーション」その②
キーポイントはICT!
タブレットを駆使してより理解が深まる授業を展開
板書の時間も大幅に短縮!
アクティブラーニング型の授業で課題となってくるのが知識の修得。それを補うのがタブレットや電子黒板などのICT機器の活用です。八王子学園八王子では、中学の全教室に電子黒板を装備。また現・中1以降の生徒全員にタブレットが配布され、さまざまな場面で活用されています。
またICTリテラシーや道徳などを学ぶ「いのちの教育」を定期的に実施することで、タブレットやスマートフォンの危険性を伝え、その上で安全で有効なアイテムとして「正しい使い方」を指導しています。
同校でこれからさらに活発になっていくであろう、ICT教育について吉村先生は
「これまでは教師が板書をしている時間は、生徒はただ待っているだけでしたが、電子黒板を活用することでその時間が大幅に削減されます。また、授業は必ずしも区切りのいいところで終わるとは限らず、次の授業でまた同じ図や表などを書き直す時間は、生徒にとっては待つだけの時間。これを解決してくれるのが電子黒板の存在です。そこで創出された時間は、ディベートやディスカッションなどに充当することができます。
また画像や動画を使うと、生徒たちの目の色が変わり、集中力も理解度も格段にアップします。ただし本校の考えるICTは手段であって目的ではないということです。本校では、あくまで双方向性、つまりアクティブラーニングの学びを実現するためのアイテムの一つと考えています」(吉村先生)
現在では、先生方の研修も順調に進み、将来的には授業を録画し、欠席した生徒があとで視聴できるシステムや、家庭との連絡事項もいずれは電子化したいと考えているそうです。
「八学イノベーション」その③
「東大・医進クラス」の創設と
多様な進路を自身の手でつかみ取れる力の育成
八王子中学のコンセプトは「中高特進」。「特進」の"特"は"特別"の略。そこには塾や予備校に通わずに学校の学習だけで6年間しっかりと面倒を見ますという意味が込められています。つまり学内完結型の分、大幅な時間の短縮につながり、その時間でさまざまなことに取り組めることが"特別"ということなのです。
「2016年度より新設する『東大・医進クラス』は、その時間を使って、より学問を深めていきたい」と語る吉村先生。同時募集の「一貫特進クラス」では「さらに人間教育を強化したい」と熱く語ります。生徒たちの中には、部活動や音楽・絵画などの芸術活動などにも力を入れたいと思っている子もたくさんいるはず。芸術・体育など多様なコースを持つ高校のコンテンツを中学教育に今まで以上に活用していきます。
なお、「東大・医進クラス」に進学した生徒は、少なくとも1年間は全員特待生となり、「一貫特進クラス」へのスライド合格もあります。また「一貫特進クラス」の受験生も希望制でチャレンジ合格があるそうです。 年度が変わるごとに本人の希望と学力的に問題が無いようなら、「東大・医進クラス」への移動も可能とのこと。 日本の最高学府「東大」、そして生命と真正面から向かい合う「医大」への進学を目標に設定される新コース。 高い志を持った受験生たちが、このコースを目指し、八王子学園を引っ張っていく存在、ひいてはグローバルリーダーとして「現在の日本が置かれている状況やこの閉塞感を打破してほしい」と吉村先生も願っています。
「八学イノベーション」その④
「探究ゼミ」で幅広い教養と未来を切り開く素養を磨く!
これまでにも放課後や課外活動に、さまざまな学習プログラムが行われてきた八王子学園ですが、来年度からは「探究ゼミ」として再スタート。正規授業の一環として行われます。
新年度開講する「探究ゼミ」は、大学のゼミをイメージしており、まさに内容はアクティブラーニング。無学年制での実施を予定しています。
「例えば本校の生物の理科教員の中に、『生命倫理』の造形が深い教員がいます。『東大・医進クラス』では、医師を目指す生徒も育てますので、このようなテーマも当然扱うことになります。またこれまで課外活動で行ってきた『土曜講座』や『企業戦略体験プロジェクト』などで培った経験もこのゼミに大いに反映させる予定です。ゼミでは『宇宙・地球学』、『最先端医学』、『スポーツ科学』、『思想と哲学』、『知の冒険』、『日本研究』など、豊富なコンテンツを用意しています。また学内に留まらず、外部へも積極的に進出させたいと考えています。6月、一期生の高1生が津田塾大学へ赴き、アメリカの政治を専門とする先生に、いよいよ来年行われるアメリカ大統領選挙など、タイムリーな話題を聞き、造詣を深めました」と吉村先生。
合わせることで、江戸文化に思いを馳せます。
また、1月は日本橋の「三井記念美術館」へ、国宝である円山応挙筆の「雪松図屏風」を見学。しかも、開館前に入場させていただき、じっくりと観ることができたそうです。国内のあるメーカーが作ったコピーも間近で鑑賞しましたが、本物と一見しただけでは区別がつかないほど、繊細な再現度に生徒たちもびっくり。日本の技術力の高さを改めて再認識したそうです。この日は屏風をろうそくと同等の明かりで照らして、当時の人たちと同じ目線で鑑賞する追体験も行いました。今後も美術館や博物館、裁判所など、いろいろな場所への進出を計画中とのことです。
吉村先生は「一見、自分たちが普段学んでいることと関係が無なさそうことでも、貪欲に吸収してほしいと思っています。"学び"に無駄は一切ないのです。いろいろなチャンネルを持っていれば、たとえ未知の場に足を踏み入れたとしても、既知の経験を糧に解決の糸口を探れるはずです。RPGで例えるなら、自分で武器を作って乗り越えて行くような感じでしょうか。そういう人間になってもらうための『探究ゼミ』なのです」と、生徒の可能性をより広げる経験について、語ってくれました。
「八学イノベーション」その⑤
グローバル社会での必須アイテム!
八王子学園の「戦略的語学教育」
「国際社会に発信できる人材の育成」も八王子学園が掲げる教育目標の一つ。その必須アイテムとして、同校が以前より注力しているのが英語教育です。吉村先生は生徒たちに日頃から「English Everytime Everywhere」と伝えているそうです。
「ブロークンでもいいので、とにかく英語を毎日使うことが大切です。本校のネイティブ教員は、校内放送なども使って英語ガンガン発信しています」(吉村先生)
同校で現在中1の正担任をしているニュージーランド出身のヒューズ先生は、日本の英語の教員免許を取得しています。当然、クラスを受け持っていますので、三者面談や保護者会なども普通に行います。高3の担任だった時には進路指導を英語で実施したりもしたそうです。
「ヒューズ先生が考える語学教育は、授業だけでなく、日常生活から積極的に英語を使っていくことで、それが英語教育のあるべき姿と考えています。彼(ヒューズ先生)が子どものころから受けてきている教育は、まさにアクティブラーニングそのもので、今では強力なアドバイザーとなっています」と頼もしげに話す吉村先生。
最後に今回の取材の総括を次のように話してくれました。
「仮に自分がまったく興味がなく、苦手としていることでも、そこに主体的な意義を見出し、楽しむことができる人が実力者であり、魅力的な人間といえるのではないでしょうか。
生徒たちには将来、どんな環境に置かれても、その空間や時間を楽しめる人になってほしいのです。そのほうが人生は楽しいですし、組織や一緒に仕事をしている仲間から一目置かれる存在となり、その人の可能性を無限に広げることでもあるのです。探究ゼミはそれを実現する素晴らしい機会だと思っています」
それぞれプレゼンします!
八王子学園八王子中学校には、子どもたちの視野を広げ、未来を輝かせる教育が用意されています。
来年度から万全に「八学イノベーション」を進められるよう、現在、多くの学びが進められています。
例えば9月の学園祭で、中1は八王子を知る「八王子学」、中2は修学旅行の事前学習、中3はオーストラリア語学研修の報告会など、学年ごとのテーマである研究発表をプレゼンテーションします。
さらに、学校説明会では、授業体験などのプログラムを豊富に用意。体育や音楽、美術などの授業もあるので、同校の教育でどのくらい感性が磨かれるのか、まずは実際に体験されてみることをおすすめします。