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学校特集

千葉明徳中学校・高等学校2023

経験値を積み重ねる探究活動で、AI時代を生き抜く力を育む
予測不能な未来社会に必要不可欠な、「数理実証力」と「価値判断力」を育成

掲載日:2023年9月1日(金)

 2025年に創立100周年を迎える千葉明徳学園。その教育理念は、校名に由来する「明徳を明らかにすること」です。「明徳」とは、一人ひとりの生まれ持った徳性、つまり能力や人間性であり、「明らかにする」とは、社会に出てその力を発揮することです。2011年に中学を開校し、高い知識と見識のもとに独自の判断力や意見を持ち、正しい行動ができる「行動する哲人」の育成に努めてきました。「試して・まとめて・書いて・発表する」探究活動を積極的に推進し、「思考する学び」を主軸にした教育を展開する同校。教頭として当初から学校改革に携わり、この4月から新校長に就任した宮下和彦先生に、改めてその教育哲学について伺いました。

「思考する学び」の根幹は、育んだ知性を社会に活かすこと

■渋沢栄一の「知行合一」は、「行動する哲人」そのもの

 同校の建学の精神は、校名である「明徳」の二文字に込められています。約2500年前の中国の古典『大学』を出典とする「明明徳於天下者先致其知(明徳を天下に明らかにせんとする者は、先づ其の知を致せ)」に由来し、人間誰もが生まれながらに持っている徳性・可能性を明らかにし、これに気づかせ、磨きをかけて社会に送り出すことを教育方針としてきました。明確な教育ビジョンが注目を集め、過去3年間の国公立大学合格者数がそれ以前の約2倍となるなど実績を重ねています。
 4月に校長に就任した宮下先生は、「その教育方針は一貫して変わりません」と語ります。そのうえで、大事にしたいポイントとして挙げたのが、「進学校化」という目標を達成することと、「思考する学び」をいっそう充実させることでした。

千葉明徳_校長の宮下和彦先生
校長の宮下和彦先生

宮下校長:「『進学校化』という意味は、単に大学の合格実績を上げることではありません。本校の教育理念である「明徳」という言葉は中国の古典『大学』に由来しますが、読み書き算盤という、個人が生きていくために必要な身の回りの基礎的な学問という概念である『小学』に対して、これは世のため、人のためになる高いレベルの高等教育を指します。人は生きていく限り、学び続けなければいけません。『知』を磨き、学びを継続するという意味での『進学校化』は本校の理念でもあるのです。もう一つの『思考する学び』とは、主体的に学ぶということ。本来、知識や技能は蓄積することだけに意味があるのではなく、それをどのように活用するかにかかっています。社会に出てどのように『知』を実現するかを考える。それが、本校の根幹である『思考する学び』です。私は時々、渋沢栄一を引き合いに出して説明します。渋沢は知識と実践を一致させた『知行合一』を実現させることが重要として、さまざまな事業を起こしました。これこそ『行動する哲人』という、本校の教育理念そのものだと思います」

■これから必要な「数理実証力」と「価値判断力」

千葉明徳_「土と生命の学習」で田植えをする生徒たち
「土と生命の学習」で田植えをする生徒たち

 予測不能な未来社会を生き抜くために、同校では「思考する学び」を不可欠なものとしています。その基盤を作るために、学校生活のあらゆる場面でプレゼンテーションの機会を用意し、「自分の頭で論理的に考え、自分の考えをまとめ、自分の言葉で発信する」経験を日々重ねています。

 そして、「行動する哲人」に必要な「思考する学び」を、具体的に実践する場面が探究活動です。
 中1・2合同の「総合的な学習の時間」で取り組んでいる「土と生命の学習」は、開校以来続くオリジナルプログラム。農業体験を起点に、食文化や社会の仕組み、環境などに関心を広げ、諸問題を「自分事」として捉えるとともに、人、自然、世界との「つながり」を大切にする姿勢を培っていきます。ゼミ形式の探究プログラム「土と生命の学習」を終えた中2後半からは、中3の「課題研究論文」の先取り学習へと繋げていきます。
 同校では、学びのあらゆる場面で「試して・まとめて・書いて・発表する」教育を徹底してきました。その学びをさらに強化するには、2つの大事なポイントがあると宮下校長は話します。

宮下校長:「1つは、『数理実証力』。いわゆるデータサイエンス能力です。コンピュータサインエンスが発達した現代において、ビッグデータを活用するための知識は必須のもの。統計学や確率の概念を使いながら数理的に実証する力と、そうした理論モデルを理解する力が必要とされます。大学入試の国語や社会の問題でさえ、統計やグラフを読み取って答えるような出題傾向が顕著であり、これからの学問には『数理実証力』は必要不可欠なものだと考えます」

千葉明徳_「課題を発見し」「試して」「まとめて」「書いて」、最後には「発表」するのが千葉明徳の探究活動
「課題を発見し」「試して」「まとめて」「書いて」、最後には「発表」するのが千葉明徳の探究活動

 昨年度から、高校では情報の活用やプログラミングについて学ぶ「情報」が必修科目となり、2025年度の大学入学共通テストでは「情報」が出題されます。一橋大学にソーシャル・データサイエンス学部・研究科が新設され、東京理科大学でデータ・サイエンス教育が導入されたのも、こうした時代の流れを反映しています。

宮下校長:「そして、もう一つが『価値判断力』です。これは、コンピュータやAIにはない、人間にしかできない能力です。その土台となる教養や倫理観、道徳観、とりわけ経験値が最も重要であると思っています。話題のChatGPTを試してみると、いろいろな過去の文献を引き合いにいとも簡単に答えてくれますが、そこには経験値に基づくものはまったくありません。ChatGPTを使えば使うほど、オリジナルの経験が大事なのだと実感します。一人ひとりが独自の経験ができる環境、それが学びの場である学校生活だと思います」

 部活動や学校行事で得られる協調性であったり粘り強さであったり、忍耐力や計画性、自制心、コミュニケーション能力といった非認知能力は、人と人との関わりの中で経験を積みながら育まれるもの。優れた価値判断力は、段階を踏みながら身についていくものなのです。

■千葉明徳の「土と生命の学習」とは?

 緑に囲まれた校舎前に作られた田んぼで米をつくり、畑では夏野菜を育てています。農作業を体験するだけでなく、「苗づくり」「水田の改良」など6項目の探究テーマを設定し、中1・2合同のグループを1つのテーマにつき4チームに分け、合計24チームでさまざまな探究学習を行います(探究テーマの指標とするのはSDGs)。農作業や実験などをしながらゼミ学習を進め、iPadを使ってポスター1枚にまとめ、11月の「土と生命の学習発表会」で発表。グループ代表だけが発表するのではなく、生徒全員が一人ひとり順番にプレゼンテーションを行うのも同校ならではです。

「課題研究論文」で「自走力」が加速する

■生徒の「自走力」を育てるために、徹底的にサポート

千葉明徳_課題発見の根幹にあるのは「社会とのつながり」
課題発見の根幹にあるのは「社会とのつながり」

 中3で取り組む「課題研究論文」は、「個の学習」です。テーマは自由。「なぜ?」「どうして?」の問いを大切に、生徒それぞれの好奇心を突き詰めていく取り組みです。同時に、論文の章立てや構成、資料の揃え方など論文を書くためのスキルも身につけていきます。
 グラフや写真、データ解析などを使った「数理実証力」にも磨きをかけていきます。調査や研究を進める過程では思うような結果が得られないこともありますが、そうした失敗や成功体験を重ねる中から、「価値判断力」が育まれていくのです。

千葉明徳_「課題研究論文」は論文集にまとめられる
「課題研究論文」は論文集にまとめられる

宮下校長:「これからの教育はこれを教える、あれを教えるという時代ではありません。教員はプロデューサーやコーディネーター的な存在として、生徒に何を学びたいのか気づかせる、きっかけを作ってあげる役割を担うことが必要なのだと思っています。もちろん、人生経験を積んだ先輩として伝えられることはありますが、何を学びのテーマとするかはやはり生徒自身が考えていかなければ始まりません。本校では『自走』という言葉を使いますが、どんなに大人が口うるさく言ったところで、本人自身が走り出さなければどうにもならないのです。ただ、『自走』するために必要な知識の獲得に向けては、私たちは徹底的にサポートします。私の持論でもありますが、生徒を独り立ちさせるには、最初の段階で徹底的に面倒を見ないといけないと思っています。放ったままにしていては、独り立ちはできません。とくに中1・2の低学年期は習熟度別授業、毎朝テスト、日誌による振り返りなど徹底的な学習習慣を身につけることが、『自走力』を作るために一番大事なことだと思っています。そうして少しずつ育まれた『自走力』が、『課題研究論文』の取り組みで加速していく、そんなイメージです」

 論文は年内に仕上げ、年明け2月の「課題研究論文発表会」に向けてプレゼン資料を作成します。同発表会では10分間のプレゼンテーションを行い、その後には質疑応答も行われます。これらの準備の中で、iPadを使った文書作成やスライド作成など、ICTのスキルも高めていきます。

■「課題研究論文」をきっかけに関心を広げる

 「課題研究論文」では、毎年ユニークなテーマが取り上げられています。「スズメバチの生活史」というテーマで研究した生徒は、捕獲用トラップを仕掛けてスズメバチを捕まえて調査した結果をまとめましたが、その「課題研究論文」は外部に向かって積極的に発信するものにもなっています。また、「校則をより良いものにするために」というテーマで研究した生徒は、法律事務所を訪ねて弁護士にインタビューを行いました。「トンボの生態」を研究した生徒は、将来は海の生物について研究したいそうです。

宮下校長:「中高での研究が将来に繋がっていく生徒もいますが、まったく別のテーマに変わってもいいのです。狭い世界の中で生きている生徒たちに、外の世界に目を向けさせるきっかけとなればいいと思っています。課題研究論文がきっかけで、今まで接点のなかったものからひらめきが生まれることもあります。きっかけさえあれば、興味関心はどんどん広がっていく。そのためにも、とにかくいろいろな体験をすることが大事です」

■研究の「タネ」を開花させる生徒たち

千葉明徳_総合力を発揮するプレゼンは、さまざまな場面で行われる
総合力を発揮するプレゼンは、さまざまな場面で行われる

 こうした課題研究論文をきっかけに研究の「タネ」を見つけた生徒たちは、次のステップに向かっていきます。一例として、現在、高1の生徒3名が千葉大学主催の高大連携プログラム「千葉大学アセントプログラム」に参加していますが、これは千葉大学が「世界をリードする科学技術分野のグローバル理系人材の養成」を目的に3年前にスタートさせた課題研究講座。オンラインと対面の講義の両方で学ぶことができるため、全国から理系好きな高校生が集まっています。大学の講義を受けたり、研究内容を発表したりする中で、生徒たちはスライド作成や論文作成など、中学の探究活動で積み重ねてきたさまざまなスキルが役立っていることを実感しているようです。

■「千葉大学アセントプログラム」とは?

「Society5.0」に活躍できる人材育成を目的に、高校生が科学技術の基礎力に加えデータサイエンスの素養を身につけ、大学の環境を活かして研究を行うアセントプログラム。このプログラムには、先端科学基盤コース(一次選抜)と課題解決力養成コース(二次選抜)があり、一次選抜生はいろいろな分野の大学の講義を受講することができ、実際に大学の雰囲気を知ることができます。研究内容によりさらに選抜された二次選抜生は、一人ひとりに専門の教授がついて研究を深掘りしていくことができ、月に1度、途中経過を英語でプレゼンテーションします。

■2022年度に参加した生徒の研究内容

(一次選抜生)
●「心理学」の選択講座を受講中→「人の気持ちの研究や統計学を学びたい。心理学の実験を大学のコンピュータで行うと、より正確なデータで研究できる」(M・Yさん/当時高1)
●「社会デザイン」の選択講座を受講中→「大学の設備でしか得られないデータ解析など、大学の研究環境を活かしてスズメバチの研究を継続したい」(K・Hさん/当時高1)

(二次選抜生)
●はちみつの中にわずかに含まれる花粉のDNA解析をして、花の成分を調べる→「解析データを読み取って、どうすれば有効活用できるのか考えたい」(Y・Tさん/当時高2)
●トンボの翼から着想を得て、ドローン開発を目指す→「飛翔能力が高く、急旋回やホバリングができるトンボの特徴を活かして、災害現場で役立つドローンを作りたい」(R・Tさん/当時高2)

多様な個性を見出す入試改革も推進中

■得意なスタイルで受験できる多様な入試制度

千葉明徳_社会科で行うディベートでは論理的な主張・反駁が繰り広げられる
社会科で行うディベートでは論理的な主張・反駁が繰り広げられる

 同校では、「考える力」と「伝える力」を重視した入試改革を実施してきました。
 入試区分は「第一志望入試」「ルーブリック評価型入試」「適性検査型入試」「一般入試」の4種類で、12月1日に「第一志望入試」「ルーブリック評価型入試」、1〜2月に「適性検査型入試」「一般入試」が行われ、4種類の入試の中から、受験生はそれぞれ自分の得意なスタイルを選んでチャレンジすることができます。

宮下校長:「さまざまな入試スタイルを実施している背景には、多様な能力を持った生徒が集まってほしいという思いがあります。多様な人間同士がディスカッションやグループ学習をすることで、もう一つレベルの高い学びができるようになると考えているからです」

千葉明徳_6年間をかけて、「行動する哲人」への階段を登っていく
6年間をかけて、「行動する哲人」への階段を登っていく

 「ルーブリック評価型入試」は、ポスタープレゼンテーションとグループディスカッションで行われますが、テーマは事前に公開されているため、受験生は十分な準備をしたうえで受験に臨むことができます。試験では、話し方や論理性、創造性にも注目します。
 入試で同校が重視するのは、「基礎学力」と「思考力」です。基本的な語彙や算数の公式など、基礎的なリテラシーが身についているかどうか。そして、同校が大切にしている「試して・まとめて・書いて・発表する」活動に適した探究型学習の力に注目します。記述式の問題も、よく考えて手順を追っていけばきちんと解けるような出題になっています。

宮下校長:「本校では、教員が入試問題を作成していますが、いわゆる『落とすための入試』ではありません。2022年度には、新型コロナウイルス感染症の流行と関連づけて、その感染力やワクチン接種によって世の中がどう変化するかを考えさせる問題を出しましたが、基礎的な学力があるかどうか、きちんと考えようとしているかどうか、そこを大きなポイントとして考えました」

 同校では、「特待生制度」と「英検優遇」も充実しています。
 「適性検査型入試」と「一般入試1〜4」には特待生選抜がありますが、「適性検査型入試」と「一般入試1・2」で特待生に認定されなかった合格者は、合格を保持したまま一般入試3で特待生選抜にチャレンジすることができます(受験料無料)。同様に、「第一志望入試」「ルーブリック評価型入試」の合格者も、一般入試3で特待生選抜に無料でチャレンジできます。
 また、「英検優遇」では、生徒の英検取得級に応じて、英検5級=10点、4級=20点、3級以上=30点が入試合格点に加算されます。 詳しくは、以下、同校ホームページをご覧ください。
https://edu.chibameitoku.ac.jp/junior/admission-j/yoko/

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