学校特集
武蔵野東中学校2024
部活も全力投球で難関高校に合格
掲載日:2024年7月23日(火)
JR 中央線の東小金井駅から徒歩7 分に位置し、都心からも通いやすい立地を誇る武蔵東中学校。高校を併設していないため、生徒は将来を見据えて自分の意志で進路を選び、全員が高校を受験します。中3の特別進学指導、音読を主軸に4技能をしっかり身につける英語教育など手厚いカリキュラムを実施し、生徒の約6割が偏差値65以上の国公立・私立難関高校に進学しています。さらに3年間という限られた時間の中で部活動にも力を入れ、全国レベルの活躍をしている部もあります。全国大会・関東大会などで活躍するダンス部と陸上競技部の顧問の先生と、副教頭の児島圭史先生に、武蔵野東中学校の魅力を語っていただきました。
全国レベルで活躍する部活動
武蔵野東中学校は1学年が約100人で、全員が高校受験する小規模な中学校です。毎年、素晴らしい進学実績で高い評価を得ていますが、部活動が盛んなことでも定評があります。中3からは高校受験に本腰を入れますが、生徒たちは限られた時間を最大限に活用して部活動に打ち込んでいます。10の部と2つの同好会がありますが、今回は全国的にも名を馳せているダンス部と陸上競技部を紹介します。
ダンス部は創部35年目にして全国中学校・高等学校ダンスコンクールで優勝15回、東京都中学校ダンス選手権大会優勝27回など、目覚ましい実績を挙げています。ダンス部に憧れて入学する生徒もおり、人気の高い部の1つです。
ダンス部顧問の丹治弘子先生は、大学時代にダンスを学んだ経験を活かして生徒の指導に当たっています。「入部する生徒の中には『ダンスは小学校の運動会でしか踊ったことしかない』という未経験者もいます。でも、中学時代は体も心も飛躍的に成長する時期なので、やりたいという気持ちが強いとググッと伸びます。素直でやる気があれば、経験者を追い越すこともあります」と丹治先生は話します。
一般的な中学のダンス部では中1の1学期は基礎練習中心というケースもありますが、同校は7月の中体連の選手権や東京私立中高協会の大会などに中1も出場します。「チームで踊る創作ダンスなので4月に入学したばかりの中1も参加してもらいます。作品を覚えて踊りながら体を慣らしていって、大会明けの夏休みから基礎にしっかり取り組みます」(丹治先生)。
活動は月~金の5日間ですが、練習時間は多くありません。授業が終わるのは15時55分で、練習時間は17時半まで。全員でホールの掃除から始め、基礎基本をしっかり練習してからダンスに入るので、踊る時間は1時間半弱しかないのです。しかも中3は週3日は放課後に全員参加の「特別進学学習」があるので、2日しか練習ができません。
「他校の先生に話すと『それだけしか練習できないのに、なぜこんなに完成度が高いのか』と驚かれます(笑)。与えられた時間でいかに集中して練習するかが勝負なので、朝もホールをウォーミングアップ用に開放していますが、ほぼ全員が自主的に使用しています。こうした積み重ねが大きな力につながっているのでしょう」。
練習の最初は柔軟体操や筋トレ、そしてアイソレーションのトレーニングまでが日課です。アイソレーションは腕や胸、腰などを独立して動かすダンスの基本的なテクニックで、体の可動域も広がり迫力あるダンスができるようになります。
大会などで演じるダンスはオリジナル作品なので、テーマの題材を決めるところからスタートします。生徒にアンケートを取ってから話し合いますが、テーマを決めるのが至難の業。表現に値する題材を決めないといけないのでテーマの切り口を工夫し、それにまつわる音楽を選んで振り付けを考えていきます。
中3は全員が受験するため、高校受験という全員共通の目標に向かって走っています。その中で、『あと少しで部活は引退だ』『これが中学最後の大会になる』という強い気持ちで臨むことで、大きな力を発揮することができます。「中学生は勉強だけでなく、自分の好きなことや身体活動などが両輪となって伸びていくもの。学習習慣や目標を管理する『自主プランノート』に高校見学や模試などの予定と練習や大会日程も全て書き込み、自分で日程調整しながら勉強と部活を両立しています。部活動を精一杯やり切るからこそ集中力が増し、時間の使い方や気持ちの切り替えも上手になります。部活動と勉強の相乗効果で、より高みを目指して納得いく成果をあげることができているのです」と丹治先生は話します。
「ダンスは誰にでもできますが、高みを目指すことに意味があります。真剣に何かに打ち込み、成果が出て自信がつくと大きく成長します。一方で、高みを目指すがゆえに悔しい思いをしたり、残酷な結果に終わることもあるし、チーム作業なのでぶつかり合うこともあります。でも、真剣に取り組まなければそれほどの悔しさや悲しさ、難しさを感じることもないでしょう。好きなことを究めながら、いいことばかりでなく辛い思いも含めて全てを人生の糧にして羽ばたいてほしいですね」と丹治先生は締めくくりました。
陸上競技部も全国的に名をはせる強豪で、毎年すばらしい実績を挙げています。特に関東中学校陸上競技大会には24年までで20年連続出場(東京都代表)という輝かしい記録を打ち立てており、これは東京都で武蔵野東中だけの快挙です。
「元々走るのが得意な生徒もいれば、速く走れるようになりたいと憧れて入部する生徒もいます」と顧問の盛川祐太先生は話します。活動は現在週6日で、土日などに大会があると月曜日の練習はなくなり、体を休める日にあてています。
小学校時代から100メートル走の選手だった盛川先生は、自身の経験を元に練習メニューを組み立てています。「もも上げ、腹筋など基礎的な体力作りに加えて、走りの基本動作を身に着けるのに有効なスキップを組み込んだトレーニングや、俊敏性・機敏性を鍛える練習を行っています。その後は、短距離や長距離、幅跳びや円盤投げなど生徒が自分の種目に沿って練習メニューを考えて取り組んでいます」。勉強と同じように部活でも、生徒がそれぞれ目標を定めて取り組む内容を考え、計画的に練習を行いステップアップしていくのです。
もちろん顧問の先生方もアドバイスしますが、同じ種目の先輩が後輩を指導したりアドバイスすることも多いそうです。強豪校ながらも先輩後輩の仲がよく、和気あいあいとした雰囲気の部活だと言います。
上下の絆が強いだけに、3月に先輩の進学先を知ると「大会であれほどの結果を残した先輩が、この高校に合格している」「次は自分たちの番だ」と後輩たちは気持ちを新たに、次なる一歩を踏み出すのです。
「わが校は他校に比べて施設や練習環境が特別に整っているわけではなく、1周100メートルのごく普通のグラウンドしかありません。でも、小規模な学校なのでどの先生も生徒たちをよく知っていて『××さんはもうすぐ大会出場だよね。頑張って!』といった声かけも日常的に交わされています。学校全体で生徒を応援している中で部活に励める環境は、生徒にとって幸せでしょう。今年は円盤投げで中学生の全国ランキング1位の生徒がいるので全国制覇を目指しています。関東大会連続出場記録も更新したいし、リレーでも全国大会を目指せる布陣なので、生徒の活躍を力強く後押ししていきたいと思ってます」(盛川先生)。
高校受験を成功に導く独自カリキュラム
学習面でもさまざまな工夫がなされていますが、今回は英語教育を中心に、高校受験を見据えた取り組みを紹介します。
昨年度までは英語を担当しており、今年度から副教頭に就任した児島圭史先生に話を伺いました。
英語では話す・聞く・読む・書くの4技能をバランスよく身に付けるカリキュラムが導入されています。「特に力を入れているのは音読で、教科書は必ず20回以上読み込んでスピーキングテストを実施します」と児島先生は話します。「ペアになって、1人が日本語で文章を言い、もう1人が英語に直します。単に丸暗記して全文を暗唱するのではなく、日本語と対比させながら英文を覚え、その後にライティングテストも実施します」。
正しい音で発音すれば聞きとる力もつき、文章をパターンで覚えてしまえば、主語や形容詞、時制などが変わっても、その部分を入れ替えれば対応できます。さらに、読み慣れてくると英文を先頭から順番に読んでそのまま理解する直読直解の力がつき、英文読解の精度とスピードが上がります。正しい発音で繰り返し音読することがさまざまな力につながり、自然と4技能の力が身につくのです。
話す力を実践で磨くために、オンライン英会話も導入しています。英語の授業の中で、週1回25分間、海外の外国人講師とマンツーマンで会話する時間を設けているのです。「中1の2学期から始まり、中3まで続きます。授業で習った文法や単語を復習する形でレッスンを行っているので、覚えたばかりの文法を意識しながら会話力を磨きます。1対1なので、ずっと集中して相手の話を聞いて自分でも話さなければいけないため、かなりの集中力が必要。レッスンが終わると教室中から『疲れたー!』とホッとする声が聞こえてきます(笑)」。また、さらなる英語のアウトプットの機会として1週間の夏季海外語学研修も希望者を対象に実施しています。
英語力の土台作りに役立っているのが、武蔵野東中オリジナル英単語・熟語テスト「WIT」(Words and Idioms Test)です。英検に対応した1~12級(グレード)に分かれており、1から順に試験を受けていきます。グレード1は英検5級相当、グレード12が英検2級相当で、多い時は学年で10人ほどがグレード12に合格しています。
こうした地道な基礎基本の積み重ねと音読や実践英会話で4技能を磨いている成果は、英検の結果にもはっきりと表れています。23年度は中3の85%以上が準2級以上に合格し、2級以上の合格者も16名(25%)に上りました。中2でも76%が3級に合格しており、中2終了時点で8割近い生徒が中学終了時程度の英語力を身に付けていることが実証されました。高校入試でも英検取得で加点となる学校もあり、高校受験でも有利になります。
英検3級以上は2次試験(面接)もありますが、同校では英語科の先生がマンツーマンで面接練習を実施しています。学校側も万全の対策をとることで、生徒の努力が最大限に発揮され、この結果につながっているのです。
宿題はなく自分で課題を見つけて計画的に学習
同校では自律的な学びの姿勢を身に付けるため、中1から『自主学習プランノート』を活用しています。『自主学習プランノート』は計画的な学習習慣を確立するためのツールで、週末に翌週分の学習の計画を立て、それに沿って家庭学習を進めていきます。毎日担任の先生に提出するほか、週1回は保護者も確認してコメントを書くので、学校と家庭が一体となって生徒を見守り、応援する体制を整えているのです。
基本的に宿題はなく、自分で苦手な部分やもっとレベルを上げたいところを自主的に学習し提出します。先生は提出されたノートと『自主学習プランノート』の両方をチェックしているので、「よく頑張っているね」「今週は数学がうまく進んでいないね。どこに組み込む?」など、的確なアドバイスをすることができます。
もちろん、『自主プランノート』を配布するだけではうまく使いこなすことはできないので、中1の5月に行う清里山荘合宿では"プランノート研修"を実施しています。「週の予定を確認してから目標を立て、その目標達成に向けて日々の学習をどう割り振っていくかプランニングし、週の終わりに振り返って翌週に繋げていく」というPDCAサイクルを教えます。さらに1年に2回ほど、生徒同士でノートを見せ合ったり先輩・後輩のノートを見に行く時間も設けています。同級生や先輩のノートを見て「週のトータル学習時間をこの欄に書くと便利だな」「色ペンを使い分けると見やすくなる」など、ほかの人のアイデアを自分のノートに取り込むことができるのです。
「学習プランノートを書くことが日課になると、『書かないと落ち着かない』と言って高校進学後も自分でノートを作って同じように学習計画を進めている生徒もいます。オリジナルノートなので、在学しているきょうだいに頼んで購入して使い続ける生徒もいて、このノートが生徒に根付いていると実感しますね」(児島先生)。
中3は放課後に週3回「特別進学学習」を実施
中3になると放課後に週3回、高校受験に向けて「特別進学学習」を行い、全員が参加します。習熟度別に10人ほどの6つのグループに分かれ、それぞれのレベルに合わせた指導を行っています。夏休み中も17日間にわたり、夏期講習を実施。お弁当持参で午後まで学習に励みます。
7月までに中学の総復習を済ませ、8月からは前年度の全国の高校入試問題が掲載された問題集を使って得点力をつけていきます。学校全体で一丸となって、受験生にとって「勝負の夏」を乗り越えています。
計画的に自主学習を続け、中3からは特別進学学習などで高校受験をサポートするという独自の体制を整えている武蔵野東中学校。様々な取り組みにも力を得て、生徒は自らの努力で希望する高校に進学していきます。第一志望の高校への進学率は74%を誇ります。
(最新の高校合格実績はこちら→pdf_gokaku.pdf (musashino-higashi.org)
勉強だけでなく部活にも打ち込み、密度の濃い宝物のような3年間を過ごした生徒達は、卒業後にもよく学校を訪問し、大学合格や就職の報告に来てくれるそうです。「中学時代のおかげで今の自分がある」という卒業生たちの声が、同校で過ごす時間がいかに充実しているかを物語っています。