学校特集
桜美林中学校・高等学校2018
掲載日:2018年9月1日(土)
創立以来、「キリスト教主義に基づく国際人の育成」を掲げて、世界を舞台に活躍する人材を輩出している同校。
留学や姉妹校との交流など豊富な異文化体験とともに、日々の充実した授業によって徹底的に基礎学力の向上を図っています。併設大学との海外提携校は160を超え、年間700人を超える海外からの留学生を受け入れている国際色豊かな恵まれた環境のなか、生徒たちは"世界"を感じながら、"真の国際人"へと成長する学びを深めます。桜美林の国際理解教育は、異なる文化やお互いの違いを認めあい、尊重して理解しあう力を育む、まさに"人間愛"教育。「隣人愛の精神をもち、"学びて人に仕えよ"の教えを守り、広く国際社会に貢献できる人間になってほしい。それが、本校が目指す教育です」と話す、教頭の若井一朗先生と英語講師のタナベ・オーレン先生に、国際理解教育の取り組みを中心にお話を伺いました。
海外が身近な国際色豊かな環境。
異文化理解で「人生が変わる」
創立以来、国際交流に積極的に取り組み、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、イタリア、メキシコ、フィンランド、中国、韓国など、さまざまな国へ留学生を送り出し、他国からの留学生の受け入れや、海外の姉妹校との交流も活発に行われています。
「直近では、韓国の生徒が来校して高校のバドミントン部との交流を行う予定ですが、韓国の生徒と日本の生徒がミックスダブルスを組んで試合を行います。部活動単位で交流する機会も多いので、生徒たちはすぐに仲良くなりますね」と、若井先生。海外の生徒たちの滞在中は、生徒の家にホームステイをしながら、異文化理解を深めていきます。
「慣れないうちは『寿司は好きですか』など型どおりの質問をしていた生徒も、自分が興味や関心があること、たとえば、オーストラリアの生徒が来た時は『日本とオーストラリアで違いを感じたことは何ですか』『日本人の印象についてどう思いますか』など、自分が本当に知りたいことを質問できるようになっていきます」と言うのは、オーレン先生です。
先生は生徒が大きく変わる瞬間に何度も立ち会ってきたそうで、「とくに海外留学のホームステイの体験は大きいですね。ある女子生徒がお世話になったホストファミリーは、お母さんがインド人でお父さんは黒人の方。最初は馴染めるか緊張していた生徒でしたが、音楽を聴きながらご夫婦で踊ったり、ホームパーティーをしては毎日楽しみながら生活されているご夫婦の姿に感激したり、その家の10歳の子どもが生徒のために発音などの小テストを手作りしてくれるなど、とても深い愛情を感じたそうです。ホストファミリーとの出会いで大きく『人生が変わった』と言います。世界が一気に広がったのでしょうね」と、目を細めます。
国際理解教育は、毎日の授業の積み重ね。
英語で自分を表現しよう!
もともと「英語の桜美林」と言われるほど、英語教育に定評のある同校ですが、"Express Yourself in English"(英語で自分を表現しよう)をキーワードに、中学・高校の6年間を通じて「生きる英語・活かせる英語」を身につけていきます。
中学ではオーレン先生をはじめとした専任2人、非常勤2人、計4人の外国人の先生がいます。週6時間の英語の授業のうち、中1・2では専任の外国人の先生と日本人の先生が連携をして、週2時間のチームティーチングを実施。残り4時間は読み・書き・文法など基礎の定着、発展に重点を置いています。全教室に配置された電子黒板なども利用して、わかりやすく、効率的な授業が行われます。質問しやすく発言しやすい少人数制を採択し、毎日1〜2時間程度のホームワークも課されていて、学習の土台をしっかりと築きます。
さらに、インプットしたものをアウトプットする機会も数多く設けていて、その一つが、毎年恒例の「イングリッシュ・プレゼンテーション」です。これは、秋の文化祭でコンテスト形式で行うものですが、生徒が司会進行を務め、各学年の代表者が英語で発表。それぞれ1年間の英語学習の成果を全校生徒や保護者、来訪者の前で披露します。英語で表現することで、"発信する力"を養うことにつなげているのですが、中1は暗唱、中2はスキット(数行の文章)、中3は自分で考えた内容をスピーチします。
また、中3を対象にオンライン英会話も今年からスタートさせました。ここでは、外国人講師と生徒がそれぞれマンツーマンで会話します。「4月からスタートしたばかりですが、我々が驚くくらい、あっという間に講師の方との会話のスピードにも慣れ、フリートークも弾んでいますね」と、若井先生。「さらに、中2から参加可能なシンガポールへの語学研修も今夏からスタートします。授業はマンツーマンで行われ、現地提携校の生徒との交流も今後検討していきます」
英検にも力を入れていて、中3卒業時に全員が3級以上の取得が目標。なかには、中3で準2級を取得する生徒もいます。一人ひとりに目が行き届く少人数制に加えて、習熟度別授業の手厚い取り組みで基礎力を定着させ、学習の土台をしっかりと築いていきます。
オーストラリアでのファームステイ。
広大な自然のなかでの異文化体験
こうした積み重ねを経た中学英語の総仕上げとして、中3の12月に、多文化共生の地オーストラリアを訪問します。4泊5日のファームステイ(農家滞在)では、全生徒が3〜4人一組になって40家庭ほどに分かれ、メルンボルン郊外のファームに宿泊します。
オーストラリアの大自然の中で、草原に放牧された羊や牛の世話の手伝いをしたりホストファミリーとふれあいながら、「もっと伝えたい!」と、コミュニケーション能力の重要性を実感します。
「ファームステイでは、巨大なトラクターに乗って収穫のお手伝いをさせてもらったり、羊の毛を刈ったり、豊かな大自然の中で生徒たちはさまざまな貴重な経験を積んでいきます。異なる習慣をもつ人々と接する異文化体験は、とても重要だと考えています」と、若井先生。
「ホストファミリーとうまく話せないと、もっと英語を話せるようになりたいという学習意欲につながりますが、その前に、まずは伝えようとする気持ちが大切です。一生懸命伝えれば、つたなくてもわかってくれます。でも習慣が違いますので、伝えなければシャワーも入れず、ご飯も食べられないことだってあり得ます。もし、そんな"失敗"をしても、自分の意見をしっかり伝えることが大切だと実感してほしいですし、糧にしてほしいです。大きな経験ですから」と、若井先生は言います。
「自分たちを受け入れようと努めてくれるホストファミリーとのふれあいに、生徒たちは感激して帰ってきます。体の大きさや目の色、文化も違うけれど、違いがわかったうえで共通点を見つけよう、一緒にうまくやっていこうとする気持ちが芽生えていく。英語は通じなくても、人としての優しさは伝わりますから。でも、まずは相手と話したいと思わないと、何も起きませんよね。一人の人間として、何よりも相手の気持ちを感じとるコミュニケーション能力を高めることが大切です。英語は必要なツールであり、わが校が考える"真の国際人" に必要な素養だと考えています」(若井先生)
中3から学べる「第二外国語」。
他文化共生を目指す国際交流教育
そんな同校の国際交流教育は、欧米諸国だけでなく、創立者の清水安三先生が中国で学校を創設した意思を継いで、アジアとの交流にも積極的に取り組んでいます。姉妹校として相互交流を行っている学校は、オーストラリア・中国・韓国の3カ国5校。また、中3以上は中国語か韓国語を第2外国語として選択することができます。中国や韓国の提携校との交流もあり、第2外国語を選択する生徒が年々増えています。
「第2外国語は選択制で週に一度、放課後に授業が行われます。なかには、中3で韓国語を選択して、高3の時には簡単な通訳ができるレベルになった生徒もいます。その生徒のお母さんが韓流ドラマのファンだったことをきっかけに、韓国に興味を覚えたようですね。桜美林教育の根底にあるのは、キリスト教精神に基づいた他者共生の心です。異なる文化や背景、個性をもった世界中の人たちと、平和に共存していくにはどうすればいいのか。語学をツールにコミュニケーションをとりながら、互いに理解しあい、認めあうことができる人間、そうした真の"国際人"を育てることが、私たちの目標です」と、若井先生。
オーレン先生も「相手に関心をもてば相互理解へとつながる」と、異文化交流のさまざまな機会を大切にしています。「今年から中学生と、海外からの大学留学生との交流の機会を深めていきます。寮に入っていてホームステイをしていない留学生は、じつはお風呂の習慣など"日本人の生活"を理解しきれていないこともあるので、日本の文化や生活を中学生が伝えていく役割を果たします。言葉や文化を超えて理解しあう経験を、さらに増やしていきたいと思います」
最後に、若井先生は「海外研修の場で、日々の学園生活の場で、一緒に食事をしたり会話をしながら気づくことはたくさんあります。外国人の発想から、日本人にはない考え方を学ぶこともあります。ふれあってみれば、自分と同じだった。そんなふうに相互理解を重ねることが、何より大事なことではないでしょうか。語学をとおして『つながる』ことで友情を育み、別れに際して寂しさや悲しさを共有できるような人間に成長してほしい。それが、わが校の英語教育や国際交流教育の目標であり、桜美林教育のゴールなのです」
キリスト教の教えが、多様な文化を受け入れる素地をつくり、自分や他人を愛する心を育んでいる同校。生徒たちは、「学而事人(学びを人々や社会のために役立てるという精神)」を大切にしながら、"人間愛"あふれる、社会に貢献する"真の国際人"へと成長していきます。
同校は、JR横浜線「淵野辺駅」から学校までの乗車時間は8分。京王電鉄・小田急電鉄・多摩都市モノレールの「多摩センター駅」からは20分。それぞれ、シャトル運行しています。