学校特集
昭和学院中学校・高等学校
東京に隣接する千葉県市川市に1940年に創立された昭和学院。校訓に掲げる「明敏謙譲」の通り、明朗にして自主性に富み、品位高く個性豊かな多くの人材を輩出してきました。
毎年さまざまな改革を行っている同校で、今年からさらなる改革に着手しているのは4月に着任した校長の大井俊博先生です。都立中高一貫校の両国高等学校附属中学校で培った経験を元に、授業改革・入試改革の両輪で昭和学院のレベルアップを目指しており、2017年度入試はこれまでの2科・4科の入試とは一線を画す「マイプレゼンテーション入試」を千葉県で初めて実施することも決まっています(※詳しくは後述参照)。改革を力強く押し進めている大井先生に昭和学院の授業改革、入試改革を中心に話を伺いました。
都立中高一貫校で手腕をふるった大井先生が
「チーム昭和」で学校一丸となった改革に着手!
昭和学院中学校高等学校は2010年の新キャンパス完成、2012年の新カリキュラム導入、2015年の「中1からの特進クラス導入」と立て続けに改革を行ってきましたが、今年はさらなるレベルアップに取り組んでいます。
今年4月に着任した大井先生は、2006年に開校した都立中高一貫校・両国高等学校附属中学校でオールイングリッシュや全員参加の語学研修を実施し、実績を上げてきた方です。大井先生は昭和学院に着任早々、「わが校の目玉になるような改革を実施して、魅力ある学校にしたい」と改革に着手しました。
大井先生は昭和学院の1学期の始業式で開口一番、「チーム昭和で頑張ろう!」と話したそうです。「たとえば勉強でもスポーツのチーム競技のように学び合い、教え合う。行事でも部活でも協力し合っていい物を作りあげたり高めあったりして、集団の中で一人ひとりが輝ける学校、この姿勢こそ昭和学院が大きく成長するための礎になると思います」と大井先生は力強く話します。集会のたびに「チーム昭和」と呼びかける大井先生の熱い思いが伝わり、先生方も「チーム昭和」と口にする回数が増え、生徒が書く文章の中にも「チーム昭和」がたびたび登場するようになってきました。連帯意識や学校への帰属意識が高まれば、その気運がさまざまな場面で生きてくるはず。「生徒の成長がわれわれの一番の力になる。生徒をどれだけ変えられるか、楽しみで仕方ありません」と同校に対する熱い思いを語ってくれました。
中1からオールイングリッシュの英語授業、
中3で全員参加の海外語学研修を計画中
滞在してホームステイを体験します。
大井先生は6年という長い期間を使える中高一貫校ならではのメリットを生かして、中学の間にしっかり基礎を作り、高校で大きく伸びる素地を固めたいと考えています。
そこで、学校改革の中核としてまずは授業を変えていきます。来年度から本格的に始まる授業改革の目玉は、中1から英語の授業はオールイングリッシュで行うこと。「偏差値にこだわらずに生徒たちにレベルの高いものを提供したいと考えています。教師自身も学びながらオールイングリッシュで迫っていけば、生徒にもその思いは伝わるはず。もちろん、オールイングリッシュに加えてアクティブラーニングで生徒が主体的に学べるような仕掛けもどんどん取り入れていきます」と大井先生。
すでに都立両国附属中学校とは相互交流が図られ、昭和学院の英語教員はオールイングリッシュでの授業の進め方を積極的に学んでいます。オールイングリッシュの本格始動は来年度からになりますが、すでに中学の授業で少しずつ取り組みを開始しました。「導入に英語の歌から入って生徒の授業へのモチベーションを高め、授業ではすべて英語でペアワークやグループワークを積極的に行っています。生徒が受け身ではなく能動的に考え、学ぶ姿勢を身につけ、クラス全体で学び合う授業を構築していきたいと考えています」と大井先生。まだ開始から数カ月ですが、生徒たちは英語の面白さを感じ始め、「英語が嫌い」という生徒は格段に減っているそうです。
さらに来年度からは校外活動でも手厚い英語プログラムを準備します。「中1でオールイングリッシュの授業を受け、中2では国内施設を利用して2泊3日の英語漬けのイングリッシュキャンプを実施。その集大成として中3では全員を海外語学研修に連れていく予定です」(大井先生)。現在も昭和学院では高1でカナダ研修を実施していますが、参加者は40名ほどの希望者のみでした。しかし来年度入学する中1が中3になったときから1学年全員が参加する、語学に特化したレベルの高い研修旅行を実施する予定です。
「これからの若者が社会に出て勝負するためには英語は必須アイテムです。いま以上に外国人とチームを組んで働く機会が増えるでしょう。"鉄は熱いうちに打て"ではありませんが、中1からその土台を作り、全員が世界で勝負できる人材に育てたいのです」と大井先生は話します。
"中1でオールイングリッシュ、中2でイングリッシュキャンプ、そして中3全員が海外語学研修"という3年計画の英語強化カリキュラムが昭和学院の教育の目玉になることは間違いありません。
アクティブラーニングやICTの活用で
教科が嫌いな生徒や落ちこぼれる生徒を作らない
昭和学院では英語以外の国語、理科、社会でも積極的にアクティブラーニングを取り入れています。たとえば理科ではICT機器を活用したアクティブラーニングに力を入れています。実験の様子を動画で紹介したり、分かりやすい画像や図表を使うことで生徒の興味関心を高め、自ら考え学ぶ力を育んでいるのです。
英語と同様に理科でもグループワークを行い、活発な意見交換をして、まとめたものを代表者がプレゼンテーションします。他のグループの発表を聞くことで新たな発見や気づきがあり、多面的に知識を深めることができます。実際に授業を視察した大井先生は「生徒のイキイキとした姿が印象的で、生徒は今まで以上に高い満足感、達成感を得られているようです」と、大きな手応えを感じているようです。
「アクティブラーニングを根付かせることで、教科を嫌いにさせない、落ちこぼれを作らない――そういう学校を作っていきたい」と大井先生は話します。「先取り学習で6年分の内容を5年で詰めこみ、高3の1年間は大学受験のための演習に終始するなんて、そんなスケールの小さい育て方はしたくありません。中1は基礎から楽しく学び、それを2年3年と積み重ねて自ら学ぶ姿勢を育てていきたいですね」(大井先生)
2017年より自己アピールと面接による
「マイプレゼンテーション入試」を新設
「塾で頑張って勉強して2科4科の学力で勝負する子、表現力など個性・感性を生かして入学する子など、いろいろな生徒に入ってほしい。もともと、わが校にはスポーツや勉強、行事など、いろいろな個性を持った生徒が、それぞれ輝けるステージがあります。それに見合った生徒に入学していただくために、2017年度から『マイプレゼンテーション入試』を新設することになりました」と大井先生。
昭和学院では、これまで2科または4科による選抜試験でしたが、これからの時代に求められる判断力や思考力、表現力を測るための入試の必要性が検討された結果、2017年度からの導入が決定されたそうです。
「マイプレゼンテーション入試」は推薦入試(第一志望)と一般入試でそれぞれ10名ずつを募集します。
2回とも、試験内容は作文、自己PR、面接で筆記試験は課しません。
作文はその場でテーマを与えて考えを述べさせる形式のもので、30分で400字くらいの作文を予定しています。難しいことを書く必要はなく、受験生がそれまでに経験してきたことや考えたことを素直に表現すればOK。身近な分かりやすい題材を取り上げ、自分の知識や経験を使ってまとめあげ、表現できる力が求められます。「塾で2科、4科の勉強をしていなくても十分に対応できるので、塾に行っていない人にも積極的にチャレンジしてほしい」と大井先生は話します。
もう1つの「自己PR」は1人3~5分程度で、
- 小学校でやってきたこと
- 中学生になったら何をやりたいか
- 将来の希望
などについてプレゼンテーションします。小学生時代は習い事やクラブ活動に注力してきた人なら、習い事の道具を持ってきて「私はこんなことができます!」とアピールするのももちろんOKです。
都立両国附属中学校で適性検査を行ってきた大井先生は「私立中学の入試に対応する塾に行っていなくても、光るものを持った生徒が必ずいるはず」と期待を込めます。「両国中学の適性検査では"こんな考え方もあるのか""こういう発想もあるんだ"と、採点の先生たちをうならせる回答もありました。つまり先生が答案から学ぶことができたのです。昭和学院の先生たちにもこの感動を味わってもらいたいと思います」(大井先生)
自己PR型の入試は千葉県の私立中高一貫校では初めての実施。この入試を行うことで、自分の経験や意見を表現できる生徒、個性と能力あふれる生徒が入学するでしょう。「一般の入試で入ってきた生徒と、マイプレゼンテーション入試で入った生徒がお互いに刺激し合い、いい化学反応が起きるのでは」と大井先生は期待します。
学校説明会などでもマイプレゼンテーション入試に対する関心が高まっており、「うちの子は塾に行っていないけれど大丈夫でしょうか」などの質問が増えているそうです。同校の先生方も新しい入試制度に並々ならない手ごたえを感じているようです。
毎朝行われる「朝読書」 やビブリオバトルで
読解力と表現力を磨く
センターは情報の発信基地
昭和学院の目指す教育は「知・徳・体」のバランスの取れた人材を育む"全人教育"。思考力を伸ばし、豊かな人間性を育むために、同校では読書指導に力を入れています。中学では毎朝8時から20分間、高校でも1学期と2学期にそれぞれ2週間ずつ、朝読書を実施しています。 中1では、ジャンルを問わず各自が読みたい本をひたすら読み進めます。さらに成長に応じてクラスや学年でテーマを決めて読むようにすると、友達と意見を交換することもでき、読書が一層楽しくなります。
新キャンパスのメディアセンターには約7万冊の書籍が用意され、図書館員も3名が配置されています。本の選定に迷った時のため、オリジナルの学校推薦図書百選「読書の旅、羅針盤」も発行されています。
また関連行事として、面白かった本を紹介し合う「ビブリオバトル」も定期的に開催されています。最終的には各クラスの代表者が全校生徒約360人の前で推薦する本を紹介し、誰のプレゼンがいちばん面白かったか、プレゼンを聞くことでその本を読みたくなったかを競います。昭和学院の生徒たちは、朝読書で鍛えた読む力、感動する心、表現力に磨きをかけ、これからのグローバル社会に必須となる「コミュニケーション能力」を着実に育んでいるようです。
ビブリオバトル
朝読書
全国レベルで活躍するクラブも多数
行事や部活など生徒一人ひとりに活躍の場が
ソフトテニス部!
昭和学院はクラブ活動が盛んで、全国レベルで活躍するクラブもたくさんあります。今年のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)には86人が出場しており、出場選手数では千葉県トップを誇ります。
生徒のがんばりを直接見て応援したいと考える大井先生は、行事や部活の試合にも積極的に足を運んでいます。今年のインターハイでも2つのクラブの応援に駆けつけました。1つは山口県周南市で行われた男子ハンドボール部の試合で「1回戦、2回戦と強豪を撃破し、3回戦で惜敗したものの全国ベスト16という素晴らしい戦績を残しました。戦うごとに強くなっていく逞しさ、フェアで礼儀正しい試合態度に感動しました」。もう1つは島根県松江市で行われた女子新体操部で、高校1年生が個人戦で堂々の全国第3位、翌日の団体戦では全国第2位と輝かしい記録を打ち立てました。「団体戦はノーミスの素晴らしい演技でしたが、1位と0.034ポイント差で惜しくも2位となりました。会場がわが校の生徒の演技に魅了されて感動の嵐に包まれるのを体感し、ひたむきでイキイキとした高難度の演技に私自身も感動しました」と大井先生は当日の様子を振り返ります。
文化部も負けてはいません(写真は吹奏楽部)
「"インターハイにも出場して東大や早慶にも合格した生徒がいる。すごい学校だね"と言われるような学校にしたいし、それだけの高い志をもって何事にも一生懸命取り組み努力する生徒を育てたい。私自身もずっと剣道をやっていて剣道も大学入試もがんばったという経験がその後に生きている。わが校の生徒にもやればできる、と教えていきたい」と力強く語る大井先生。 改革を断行して新たな方向に大きく舵を切った昭和学院は、さまざまな受験生に門戸を開いています。どんな生徒も輝ける場所を用意してる同校は、改革を経てますます大きく飛躍するに違いありません。同校の雰囲気や先生がた、生徒の実際の様子を身をもって知るためにも、ぜひ学校説明会や文化祭などに足を運んでみてください。
12月6日(第2回推薦入試)と1月21日にマイプレゼンテーション入試を行い、それぞれ10名ずつ募集します。試験内容は自己アピールと面接で、自己アピールでは
①与えられたテーマで400字程度の作文を書く
②3~5分程度で自由に自己PR・プレゼンテーションを行う
の2つの試験を実施。学科試験は行いません。中学受験向けの塾に通っていなくても個性豊かで伸びしろのある生徒に入学してもらうのが狙いです。