学校特集
自修館中等教育学校
小田急線「愛甲石田駅」(神奈川県伊勢原市)から徒歩15分ほどのところにある自修館中等教育学校。1999年に開校と創立から20年に満たない学校ですが、しっかりと「生きる力」が身につくと評判の進学校です。中1には熱海や小田原、あるいは横浜から通学する生徒も多く、在校生の通学エリアも年々広がっています。
その理由は、4年間かけてじっくり取り組む、自修館独自のプログラム「探究」と、EQ理論に基づいた「セルフ・サイエンス」(こころの教育)により、同校が目指す「こころが育つ進学校」を実践しているからです。学校説明会や探究文化発表会で「探究」の成果に触れると、受験生をもつ保護者は「うちの子でもできるかしら」と心配しながらも、堂々とプレゼンテーションをする在校生に我が子の姿を重ねてしまうのです。
ここ数年、GMARCH以上の合格率が高3の約7割を保っています。「就職の報告に来てくれる卒業生から感じることは、名だたる企業に就職する子が多いということ。そして自分たちに自信を持っている」と話す入試広報室長の佐藤信先生に、自修館で育つ力について伺いました。
自修館を知るためのキーワード ①「探究」とは?
調べる・まとめる・発表する力を4年間かけて養う学習活動です。自らテーマを決めて学び、考え、探究修論を仕上げます。
興味をもつ⇒調べる⇒答えをまとめる⇒発表する、という手法を学び、グループワークで練習した後、1〜3年生各5人程度の「ゼミ」に所属して、自分のテーマを追究します。
2・3年次フィールドワーク(校外の取材活動)や実験、文献調べなどを行い、知識を蓄積します。ゼミ内でのディスカッションや発表を通して、自分の考えを組み立てます。毎年10月の「探究文化発表会」では、ほかのゼミの発表を見ることができるので、それもまとめるヒントになります。
4年次それまでの学習成果をもとに探究修論(20,000字以上の論文)を完成させます。
自分の考えをしっかり主張する力、まわりと協働する力、
人に伝わるよう表現する力を4年間で養う!
自修館では、教育目標である「自学・自修・実践」を踏襲した総合教育として「探究」に取り組んでいます。「自修館といえば探究」と言われるまでに定着したのは、その取り組みが本物だからです。
佐藤先生:最近は大学を途中で辞める子が多いと聞きますが、本校の卒業生たちはそのようなことはありません。むしろ文化祭などでリーダー的な役割を担い、大学で活発に活動している子が目立ちます。就職の報告に来てくれた卒業生には、「こんなところに就職したんだ」と驚かされています。たとえば「テレビ番組を作りたい」と言っていて、1社しか受けずに内定をもらった子がいます。また、カミキリムシが大好きで一生懸命「探究」をやっていた生徒は、その後も大学で研究を続けて、現在では大学院のドクターコースにいます。
自分で組み立てるのが自修館流。
「周りは東大、京大出身者が多く、自分とは住む世界が違う」と言いますが、今は「研究のために、英語の勉強に力を入れたい」と張り切っています。本校が大事にしているのは、生徒自身が好きなこと、興味のあることをいろいろな角度から考え、人とうまくコミュニケーションを取りながら、探究していくことです。1学年120名と適度な人数のため、グループの中に隠れて論文作成やプレゼンテーションをやらずに済むということは絶対にありません。完成度の違いはありますが、一人ひとりを見れば必ず成長しています。卒業生の話を聞くと、卒業後の人生も「探究」に支えられていることがよくわかるので、体験談を話してもらう機会も意図的に設けています。
中1の4月から「探究」が始動
佐藤先生:探究活動は、中1の4月中旬に行うオリエンテーション(2泊3日/山梨県北杜市)からスタートします。北杜サイト太陽光発電所や、蝶を観察できるオオムラサキセンター、地元の福祉センターなど、複数の取材先を用意。6名程度のグループを作り、くじ引きで行き先を決めて、当たったところに取材に行きます。ただ説明を受けるだけでなく、事前に質問を考えて臨むので、想定外の答えが返ってくることもありますが、それも取材の醍醐味。引き出した材料をもとに、どのようにまとめるかを話し合い、最終日にはパワーポイントを使ってプレゼンテーションを行います。
まだ、お互いのことをよく知らない時期に、そんなことができるのかと思いますよね。たしかに、話し合いの仕方、取材の仕方、まとめ方など、方法を指導しても、最初はどうしていいかわからず、戸惑う姿が見られます。役割を決める時にリーダーを買って出たものの、うまくいかず、作業をしながら役割を見つけていくこともあります。そういう状況でも、教員は「ああしたほうがいい」「こうしたほうがいい」という誘導はしません。時々、前へ進むためのヒントはだしますが、基本は生徒たちの自主性にまかせて見守ります。すると、次第に議論が活発になって、自分たちではやめられないほど白熱します。内容の組み立てについてはそれぞれ考えがあって、よくぶつかっていますが、パワーポイントがまったく作れなかったことはありません。今の子どもたちはこういうことに抵抗が少なく、非常に要領よく作ります。本校ではできる限り教えすぎないことを心がけています。
丹沢クライム
カナダフィールドワーク
中1の1月頃からゼミに所属
その後も「探究」の取材を目的とした、グループによるフィールドワークなどを通して、「調べる(情報収集)」「まとめる(情報処理)」「発表する(情報発信)」ことを学習し、中1の1月頃にゼミに所属します。ゼミでは、討論やレポート作成、プレゼンテーションなどを通して、自分が設定したテーマから課題を見つけて、課題を解決するためにはどうすればよいのかを考えます。
佐藤先生:ゼミでは先輩の発表を見たり、自分の発表に対してアドバイスをもらったりして、テーマを掘り下げます。毎年、探究文化発表会という大きな発表の場があるので、そこを目標に完成度を高めていきます。
中3の「関西フィールドワーク」(2泊3日/関西)でも、3日間のフィールドワーク活動を実施。自分のテーマに基づき、京都、大阪あたりの企業や大学で取材活動を行い、「探究」の締めくくりとなる探究修論(20,000字以上)に活かしています。
生徒たちは人に自分の考えを理解してもらうことの難しさを痛感しながらも、くじけずに創意工夫を重ねて、成長していけるところが探究活動のいいところだと思います。テーマを掘り下げるには、さまざまな角度から知識を蓄えることが必要です。必要な本をリクエストすると100%応えてくれるため、本校の図書館にはマニアックな本ばかりが並んでいます。教科という枠にとらわれず、学びが広がるところも、「探究」のおもしろいところです。
高2の海外フィールドワーク(修学旅行)は、
自信と度胸が進路を切り拓く力になる!
高2の「海外フィールドワーク」(7泊9日/昨年度はカナダ)は、ショートホームステイ(2泊3日/1家庭1名または2名で宿泊)あり、自分たちで考えた行程で観光できるグループ行動ありと、「探究」で身につけた力を存分に発揮できるプログラムになっています。
佐藤先生:ホームステイ先では、探究のプレゼンテーションを行います。英語科の授業の中で、内容を3分程度にまとめ、ネイティブの教員とともに英語で伝えることができるように準備をします。国内では自分でアポを取り、フィールドワークをこなしている生徒たちですが、英語しか通じない場所での生活には不安があります。ホストファミリーの方に来てもらい、それぞれの家庭に引き取られていく時は不安そうな顔をしていますが、そこで土日を過ごして離れる日になると、泣いて「帰りたくない」と言う子がいます。「探究」により、積極的にかかわろうとする姿勢は身についているので、慣れるのは早いのです。日本の文化と違い、海外では自分で自分のことをしなければいけません。お客さんではなく家族と見なされるので、そういう部分でも大きな成長を感じます。海外でも生徒たちで行程を考え、グループで自由に行動する日を設けているのは、本校が自ら考え、行動することを一番に考えている証です。すべてを教員が決めてしまうということは、生徒の考える機会を奪ってしまうということ。それはだけはしたくないので、安全には十分に注意を払った上で実施しています。
2年連続で少年少女国連大使に!
佐藤先生:学校説明会などで、「論文を書きます」「プレゼンテーションをします」という話をすると、「うちの子にできるかしら」と心配される保護者の方が多いのですが、ゼロからのスタートなので大丈夫です。まったく心配いりません。学校の中でいろいろな経験を積みながら力をつけていきます。今年も中3の女子がJCI JAPAN少年少女国連大使に選ばれました。昨年も1名選出されたので、学校としては2年連続となります。他国の人たちの前でも臆することなく、パワーポイントを使い、プレゼンテーションができる力がついていて、嬉しいかぎりです。
文化祭
スポーツ大会
自修館を知るためのキーワード ②「EQ」とは?
「セルフ・サイエンス」の授業。
EQとは「Emotional Intelligence Quotient(こころの知能指数)」の略語で、1990年にアメリカの心理学者により提唱された理論です。「人といつまでも仲良くつき合っていくには、相手の感情を読み取ったり、自分の感情をうまく表現したりする能力が必要」という考え方に基づき、自分の心や行動を分析し、コントロールする方法を科学的に体系化しています。自修館では、このEQ理論に基づいた「セルフ・サイエンス」というオリジナルの授業を前期課程で週1回実施し、自分の心や行動の特性を科学的に解析し、今後の人生の基礎となるコミュニケーション能力や、感情をコントロールする力を育んでいます。
探究×EQで進路を拓く
自修館ではEQ理論に基づいた「セルフ・サイエンス」というオリジナルの授業を実施。それにより生徒は、自分自身を客観的に見つめて理解するようになります。友達との関係づくりにもいい影響を与えるだけでなく、進路指導にも役立っています。
佐藤先生:進路相談に来た生徒に対して、教員はあれこれ聞きません。EQ理論に基づき、生徒の考えを受け止めて同意します(肯定的傾聴)。そうすることで、少しずつ本音を言い始めます。進路は「探究」をきっかけに選択する生徒が多数います。「探究」のテーマとは違う方向に進んだものの、戻ってくる子もいます。「モーツァルトと癒し」をテーマに「探究」に取り組んだ子は、理系の大学に進学し、航空工学を専攻しました。資格を取り、憧れの航空会社に整備士として入社しましたが、現在はその航空会社のグランドスタッフとして働いています。「人々に安らぎを与えたい」という思いが強く、自ら希望したそうです。自分の仕事に誇りをもっている姿に感心しました。
好きなことを追究する「探究」と、自分自身を客観的に見つめて理解する「EQ」。独自のプログラムにより、まわりに振り回されることなく、自分の人生をしっかりと考える生徒が育っている自修館。グローバル社会を生き抜く力を育むプログラムが熟成し、2020大学入試改革にも強い学校として注目を集めています。ぜひ、学校に足を運んで、その教育に触れてみてください。
サッカー部
バスケットボール部
入試問題は学校からのメッセージ
記述問題の対策をしっかりしよう
最後に、自修館の入試で各教科の記述問題のポイントを紹介します。過去問で傾向をつかみ、しっかりと対策しましょう。
【国語】
国語は条件作文です。「条件にそって書きなさい」という指示があるので、それに従うことが大切です。条件を見落とさないように注意しましょう。
【算数】
算数は式でも言葉でも図でもいいので、考えたことを形に残すことが求められます。100点中、50点分はすべて記述問題があります。考えた過程がわかるように書きましょう。答えが違っていても、途中までの考え方が合っていれば点数をあげていますので、白紙のままにしないことが大切です。
【社会】
社会は時事問題の中で記述問題を出題しています。国語と同じように、与えられた条件から読み取れることを踏まえて書きます。
【理科】
理科は4分野の融合問題として、自由記述のようなスタイルで出題しています。たとえば、「朝日や夕日は太陽が赤く見えるのに、なぜ昼間は白いのか。その理由を自分で考えて書きなさい」というように、日常的な現象を題材に、なぜそうなるのかを考えて記述する問題です。10点満点の加点方式で点数をつけています。オリジナルのものの見方がたくさん出てくることを願っているので、たくさん書きましょう。