学校特集
二松學舍大学附属柏中学校・高等学校
ニ松學舍初の附属中学校として開校して早くも6年目。「論語」に学ぶ人間教育と、「自問自答」(自らに問い自ら答えること。自ら問題を見つけ自ら解決すること)をキーワードに展開される総合教育が相まって、「真の国際人の育成」という、建学の理念が深く浸透する学校になりつつあります。大切にしているのは、生徒が自ら学び、自ら考え、自ら行動すること。常にチャレンジし続けること。日々の学習にさまざまな仕掛けを散りばめて、習慣づけを図っています。昨年度より、多彩なプログラムが魅力のグローバルコースが始動。ICT教育にも力を入れており、138年の伝統と、今の時代にふさわしい革新的な教育が無理なく結びついている、落ち着いた学校として、注目を集めています。同校の島田達彦副校長と、中高一貫生の授業を受け持つ森寿直先生(理科主任・中学校学年主任)に、ニ松學舍柏の教育について伺いました。
母体であるニ松學舍は三島中洲が、明治10年に創立。「自国の文化を正しく理解し、母国語を正しく表現できる真の国際人の養成」「異なる文化・歴史を理解し多様な価値観を認めようとする視点の養成」をめざした。この建学の理念の実現こそが、これからの時代に求められるグローバル人材の育成であるととらえて、「自問自答」をキーワードに、「判断力」「思考力」「発信力」「コミュニケーション力」を磨いて、社会に貢献できる人材の育成をめざしている。
自国を知ることから始めなければ、英語ができてもなにも伝えられない。
現在の学校の様子から教えてください。
島田副校長:「新入生を迎えて、非常に活気に満ちています。中高一貫生が6学年揃い、中学校開校時に描いていた、自問自答力をつける6年間一貫教育のプログラムが整いつつあります」
グローバルコースも、始動して1年が経ちましたね。
島田副校長:「2期生は、1期生の倍に近い人数で、体験型のプログラムを行うにも、非常に賑やかで、楽しんで取り組んでいます」
グローバルコースの特長
教科学習や学校行事は、特選コース、選抜コースの生徒と一緒に行いますが、グローバルコースでは、学年のテーマに応じたさまざまなプログラムを実施。体験を通して、グローバルコースの目標である「異文化を理解し、多様な価値観を認められる力」や「さまざまな局面を乗り越えていけるコミュニケーション能力」を磨きます。
1年生のテーマ...世界を知る
2年生のテーマ...世界から観た日本
3年生のテーマ...世界へ羽ばたく
◆ネイティブの教員と日本人の教員がティームティーチングで行う7校時の講座(週2日)では、世界について考える3年間のプロジェクトで、自ら考え、共に深めあい、自分とは何かを定義する力を養います。そのために各国の文化、歴史などを調べたり、JICA訪問、こども国際フェスタに参加、グローバル講演実施など様々な取り組をします。
◆多様な語学研修が体験できるのも、このコースの特長です。学校で外国人と英語を使ってコミュニケーションを図る「サマーイングリッシュプログラム」、「ウィンターイングリッシュプログラム」を年2回、夏休み、冬休みに実施しています。
1年生...国内イングリッシュキャンプ
2年生...オーストラリア語学研修またはJeju 英語研修(韓国済州国際学校)
3年生...カナダ語学研修(さらに高校へ上がる前の2〜3月に、Jejuまたはセブ島語学研修を実施予定)
島田副校長:「『英語でフォトグラフィー』では、ネイティブのプロのカメラマンを講師にお招きし、上手に撮影するコツを学びました。生徒は自分のタブレットを持っているので、それを活用し、自由に撮影した写真をプリントアウトして、アドバイスをもらいました。『英語でクッキング』では、英語のレシピを参考に、英語で会話をしながらスコーンを作りました。その後、グローバルルームに移動し、イングリッシュティーとともにいただくという、なんとも楽しいプログラムになりました。グローバルコースというと、英語力の向上を図るコースと思われがちですが、本校では英語力の向上をめざしているわけではありません。英語力は結果としてついてくるものと考えています。英語を話せるけれど、中身がない、というのでは本末転倒なので、まずは自国のことを学びます。すべての教育活動がそこから始まり、きちんと理解して、伝える力をつけることをめざしています」
「論語」と「自問自答」で、国際社会に対応できる力を磨こう!
森先生:「今の時代にもっとも必要とされている力は、社会に目を向けて、知識を取り入れ、この国で学ぶ人間として、何を発信すべきかを考えることができる力だと思います。本校では、中学時代から、そのような力が身につくプログラムを導入しています。1つは論語、1つは自問自答。論語は中高を通して学びます。自問自答は、中3になると、自分の興味があるテーマに1年間向き合う『探究論文 自問自答』に取り組みます。全員が8000字の研究論文を書き、2回発表します (文化祭で中間発表、2月に最終発表)。中学での学びの集大成という位置づけなので、そこに向けて、1年生からいろいろなことに取り組み、力をつけていきます。具体的には、調べる力、論理的に考える力、問題を見つける力、問題を解決する力、考察する力、表現する力、伝える力などです。知識がなければ、問題を見つけることができないので、自問自答力をつける日々の取り組みは、知識を取り入れることから行っています。
その1つが、時事問題の解説です。天声人語など、三大新聞のコラムを全員に配布し、中学生でもわかるように、かみ砕いて解説し、発展させることを毎日取り組んでいます。社会に対する知識が身につき、世界で抱えている問題も自然と知ることができます。これを3年間続けると、時事問題をかなり理解できるようになります。嬉しいのは、『今日、こんなニュースについて話してもらったよ』と、家に帰って、食卓などで、保護者の方に話す生徒がいることです。会話のネタになりますし、保護者の解説が乗って、理解が深まることもあります」
いつ行っているのですか。
森先生:「私の学年(中1)では、8時15分からモーニングレッスンが始まるので、8時には着席させて、15分かけてゆったり行っています。私は今年度、担任から外れていますが、これだけはどうしてもやりたいので、担当させてもらっています。昼休みにホームルームを行っている学年は、昼休み最後の5分間に解説を行い、落ち着いて午後の学習をスタートさせています。 2つめは『365ノート』です。主体的に学ぶ力をつけたいので、あえて課題は与えません。自分で取り組む課題を考えて、1日30分以上、1ページ以上、学習して、ノートを提出します。この取り組みを導入したきっかけは、私が高3の特選クラスを担当していた時に、生徒が自ら学び、考えることの大切さを痛感したからです。半数以上の生徒がMARCHを突破しましたが、頑張っていたのに壁を突破できない生徒もいました。それはなぜか、と考えた時に、こちらから与えたことだけをやっていることに気づいたのです。がむしゃらにやっていたとしても、与えられたものをこなすだけの生徒と、自ら考えて、工夫できる生徒とでは、力に大きな開きがあり、後者でなければ、壁をこじ開けられないことに気づきました。そこで、中1から習慣づけをしたいと思って始めたのが『365ノート』です。今日のホームルームでも、この3日間で30ページ近くやった子が2人いたので、それを伝えると、『そんなにやっている子がいるんだ』と、刺激を受けていました」
個別のノートを管理するとなると、担任の先生は大変ですね。
森先生:「それを通して、生徒とのやりとりが生まれるので、導入してよかったと思っています。生徒は、授業に関連のある学習をすることが多いので、担当教科以外の授業が、今、どんな内容を扱っているのか、わかるのもメリットです。ノートを通してわからなかった問題を質問してくる生徒もいますね。
自問自答力をつける、日々の取り組みの3つめは『1分間スピーチ』です。子どもたちは、いきなり『発表しなさい』と言ってもできません。人前に出ることが苦手、友達と話すことが苦手、という生徒もいるので、学校として、発表する力を引き上げていかなければいけないと考えて、『1分間スピーチ』を始めました。テーマは、10年後の自分、最近読んだ本など、いろいろとあります。こんなものあったらいいな、というテーマでは、多くの生徒が機械やものについて話しますが、中には国策やルール、思想などを提案する生徒もいて、それはおもしろいです。発表する力を養うと同時に、聞く力(コミュニケーション力)も養うために、発表が終わると、隣の友達と話す時間を作っています。話すネタが与えられていますし、その後に意見を求められるのも毎日のことなので、聞く力も養われます。ここで気をつけているのは、否定をしないこと。『楽しかった』『よかった』という感想だけでも共感し、一言でも言えた、という気持ちを大切に育てています。いい発表やいい批評ができた子がいると、それが手本となって、子どもたちの中で自然と広まるので、教員は前に出過ぎず、引っ張っていくことを心がけています」
総合学習では研修旅行を絡めて自問自答力を鍛える
森先生:総合学習でも、自問自答力をつける取り組みを行っています。1年生は、学校の近くにある手賀沼の環境と歴史を通して、環境問題に視野を広げます。専門家による講義を受けて知識を広げ、理解を深めた上で、問題を見つけて、考察をまとめて、発表したり、議論したりします。
この取り組みでは、研究論文につながる力をつけることも目的の一つですが、沼の環境を扱う上で、水がテーマになります。水を調べるには理科の力。調べたことを分析するには数学の力。書物を読むには国語の力。環境の背景を考えるには社会の力。海外の文献を読むことになれば英語の力も必要......というように、身近にある手賀沼を知るだけでも、5教科すべての力が必要になります。
総合学習を通じてなにを学ばせたいかというと、日々の授業は、テストで100点を取るためのものではなく、身の回りにある1つのことを知るためのものであること。1つのこと知るには、教科の壁を超えて、すべての力が必要になるということです。2020年に、教科横断型の学力評価テストに変わるといわれていますが、本校では開校当初から、まさに教科横断型の学習してきているのです。
2年生は京都・奈良に行くので、自国の文化を学び、理解します。もちろん事前学習を行い、研修旅行後は、研究成果をまとめて発表します。その発表内容を、グローバルコースの生徒は3年次に英語で行います。
ここで、ようやく英語です。いろいろなことがわかり、問題を見つける力、問題を解決する力が備わって、自分の意見をきちんと発信したいという意欲が出た時に、初めて英語で発信する意味が出てくるのです」
中学の学びの集大成は、8000字の「探究論文 自問自答」
森先生:「3年生は、先ほどお話した『探究論文 自問自答』にも取り組みます。自問自答なのでテーマは与えません。生徒一人ひとりが興味のあるものに取り組めるよう、誘導していきます。このテーマ決めが重要なので、半年もの時間を費やしています」
どんなテーマがありますか。
森先生:「思想、宇宙、音楽、ガンダム、社会問題など、本当にさまざまです。 中学生らしい疑問から生まれたテーマであればなんでもいいのですが、漠然とした問いだと、結びがしっかりしないので、なるべくなぜ、○○は□□になったのか、という型にはめなさいと指導しています。最初は「テニス」など、漠然としているところから始まって、調べを進めながら、点と点(○と□)で結びつくまで考えさせます。たとえば、テニス部の生徒は、テニスの歴史を調べ、どの国からどう広がったか。それによりグリップはどのように変化したか、というように、どんどん調べていき、最終的には、プレースタイルとラケットの関連性に注目することにしました。1960年頃から10年刻みで変遷を描いて、ラケットの技術的な進化によりプレースタイルが誘導されていき、今後、こういうラケットが出る可能性があるので、プレーもこう変化するだろう、という結びになりました。テーマを絞っていくと、問いが明確になってきます。自問自答は、自問で決まると思っているので、生徒にも探究論文を通して、問いづくりの大切さを学んでほしいと思っています」
担任の先生が指導をされるのですか。
森先生:「基本的にはそうですが、担任はコーディネーター的な役割です。テーマが絞られるにつれ、専門的な内容になっていくので、この分野ならこの先生、と担当教員をつけて指導します。調査が必要ならアンケートを取ったり、取材に出かけたりすることもあります。自分で調べて、調べたことから、潜んでいる問題を発見して、自分なりの解決方法と、自分なりの答えを見つけて、最後に、8000字の論文にして発表する。それが『探究論文 自問自答』の取り組みです」
総合的な力がつく取り組みですね。
森先生:「今ある職業の約半数が20年以内になくなるといわれています。子どもたちに将来の夢を聞くこと自体に意味があるのかと思うほど、混沌としている時代を生きるには、その時その時に抱えている問題に対して、自分なりの答えをもって生きていく力が必要です。そういう力をつけてあげることが、子どもたちのためになると思いますし、社会に役立つ人物を育てるという、本校の建学理念にもつながるので、自問自答する力を育む取り組みは、今後ますます充実させていきたいと思っています。また、いくら論理的に考える力や、発信できる力をもっていても、心が育っていなければ間違った方向に行ってしまいます。一番大事なのは、論語や道徳。これもニ松學舍が140年間大事にしてきたものなので、心の教育もしっかりやっていきます」
島田副校長:「来春には、いよいよ中高一貫の1期生が大学入試に臨みます。しっかり育ってくれているので、そちらにも期待してください」
緑豊かな自然に囲まれたニ松學舍柏は施設・設備も充実。グランドは東京ドーム3個分の広さがあり、校舎は高台の立地を生かし、自然光を採り入れられるようにガラス面が多い設計となっています。
また2011年に完成した「新体育館」は走路コース170M、バレーコート6面ある驚きの広さ。体育の授業や実践練習を必要とする部活動を強力にアシストします。他にも日本の伝統を凝縮した茶道室や情報教育コンピュータールーム、英会話のLL教室まで、生徒の学園生活と環境に配慮されたキャンパスは必見です。
ニ松學舍柏までスクールバスは「柏ルート」「新柏ルート」「我孫子ルート」「北総ルート」の全部で4ルート。中でも「北総線ルート」は印旛日本医大駅、印西牧の原駅、千葉NT駅、小室駅の4駅に停車するなど、通学サポートは万全です。現在運賃は全てが無料。生徒を送り出す保護者にとってもうれしい情報と言えるのではないでしょうか。