学校特集
富士見中学高等学校
富士見中学校・高等学校が2020年の創立80周年記念事業として進めている新校舎建設(2018年完成予定)は、2015年に中学・高校の教室がある本館が完成しました。新校舎のシンボルとして新設された大階段の「センターホール」では上映会や展示会などを開き、学年を超えた交流の場となっています。
学内外での国際交流も盛んです。ニュージーランドの留学は3カ月間の短期留学に加え、1年留学がスタート。英語圏だけでなくアジア圏の人たちとの交流も積極的で、台湾や中国の生徒を富士見に招いて交流会を開くなど、多彩な国際交流プログラムを用意しています。
「何事にもがんばる」姿勢は、学校生活をとことん楽しむのはもちろん、国公立大学の合格者増加という進学実績にも結びついています。新校舎の完成とともに進化しようとする同校の取り組みについて、教頭の佐藤真樹先生にお話を伺いました。
「センターホール」は富士見の"メインストリート"憩いの場、発表の場、他学年を知る場としても大活躍!
2015年度に中学・高校の教室がある本館が完成した富士見中学校・高等学校。新しい教室にはICT設備も導入されています。映像や音声から生徒の興味関心を高め、学習内容をわかりやすく説明するのに役立っています。本格的なICT教育はこれからですが、無線LANの環境が整っているので、将来はタブレット端末を使った双方向型授業も視野に入れています。そうなれば、自ら率先して学校生活を創り出す富士見生のことですから、LHRや部活動、生徒会活動など、ICTをうまく活用するのではないでしょうか。
新校舎の目玉のひとつが、大階段の「センターホール」です。大階段は座れるようになっているので、昼休みの生徒の憩いの場になっています。ここは、1日中生徒が往来する、いわば富士見の"メインストリート"。大階段の下は共有スペースとして多くの生徒の目に留まる絶好の場でもあります。高3の芸術科合同発表会や高1の芸術選択者の美術や書道の作品発表会もここで開かれました。美術や書道の作品展示とともに、演奏や合唱など音楽発表会の様子を上映しました。センターホールは、大階段の向かい側の大きな壁面をスクリーン代わりにして"上映会"を行うことができます。例えば、中学の合唱祭を上映して高校生が鑑賞するというように、センターホールは他学年の取り組みを知る場としても機能しているのです。
また、参議院議員通常選挙(7月10日投票日)に先駆け、中3以上を対象に模擬選挙も実施されました。中3は社会科の授業で、高校生は学年集会で18歳選挙権について事前の説明を受けました。練馬区の選挙管理委員会から投票箱や記載台を借りて、受付で事前に配布された入場券と引き換えに投票用紙をもらうなど、実際の選挙と同様の形で実施。投票時間は1時間のみでしたが、多くの生徒が参加したそうです。以前にも模擬選挙を行ったことはありますが、今回イベントとして盛り上がった理由について、教頭の佐藤真樹先生は、「1つは現実に選挙権を持つ生徒がいること、もう1つはセンターホールという生徒みんなが目にする場所で大々的にできたこと」を挙げます。センターホールは富士見を象徴する名物スポットとして、早くも定着しているようです。
専任の司書教諭が中学生に調べ方をレクチャーすることで、低学年から「調べる力」を身につけるプログラムを開始!
2017年4月に第2期工事が終了し、理科実験室や音楽室など特別教室を含む西校舎が完成します。完成すると、各学年6クラスの普通教室のほかに、習熟度別授業で使う「選択教室」と、自由度の高い「ワークスペース」を備えた"1学年8教室"となります。2つの学年専用スペースはどちらも普通教室と同程度の大きさで、さまざまな活用法が考えられます。
ワークスペースは、4人、6人と集まってグループワークをすることを想定して、勾玉型で組み合わせ可能なテーブルを置き、壁は全面マグネットが付くようにする計画です。「ワークスペースはあまり使い方を絞り込まずに、自由な使い方に対応できるように、運用しながら必要な設備を揃えていきます」(佐藤先生)。
富士見では、2018年7月の図書館棟完成予定を見据えて、新しい図書館づくりに取り組んでいます。今のところ仮校舎での運用ですが、図書館主体の取り組みが増えて、図書館に足を運ぶ生徒が増えています。
図書館ではほぼ毎日展示を変えて、本を紹介しています。展示内容は、授業や学校行事、季節や、時事的な話題を取り上げています。七夕のときは「星に願いを...」と題して、七夕伝説や星に関する本を紹介しました。また、展示するだけでなく、生徒が気軽に参加して、興味をもつしかけもつくりました。小さな短冊を用意して、自由に願いごとを書けるようにしました。すると、「試験で点数がよくなりますように」「コンクールで金賞を取れますように」など、切実な願いごとが寄せられました。
また、司書教諭が中学生に図書館の利用法や調べ方を教えます。調べるときはどこから手をつければいいか、インターネットで調べるだけでいいのか、図書館で情報を得るにはどんな手順を踏めばいいのか、漠然としたものから本当に調べたいものをどのように絞り込んでいくか、といったことを司書教諭がHRなどの時間を利用して教えています。
「低学年のうちに情報の調べ方を体系的に習得できれば、課題を発見して解決する力の土台をつくることができるでしょう」と佐藤先生。芙雪祭での中1・中2のクラス展示、中2の職業調べ、中3の卒業研究など、調べる力は様々な場面で役立ちます。さらに、調べる力を「探究する力」につなげようと、高校でも調べ方を学ぶプログラムの導入を検討しています。
ニュージーランド留学は短期に加え1年留学もスタート台湾の高校生とお互いの学校を訪問し合う国際交流も!
富士見では、アメリカやオーストラリアでの約3週間の海外研修(高1・希望制)のほかに、2014年度から「ニュージーランド短期留学」を始めています。これは、4名の高1が4つの高校にそれぞれ1名ずつ、7月から9月まで短期留学するものです。帰国後の報告会は会場の視聴覚教室がいっぱいになるほど、参加する中3が増えているとか。英語で自分の経験を語る先輩の姿を見て憧れを抱き、さらに海外への関心が高まっているようで、会の終了後も、中3は4人の先輩を囲んで質問攻めにしたそうです(笑)。
短期留学の希望者が年々増えていることから、来年度は参加者を増やそうと、新規の提携校やホームステイ先を検討しているそうです。ニュージーランド留学は、2017年1月から1年間の留学(1名)も始まります。
英語圏だけでなくアジア圏の人たちとの交流にも積極的です。日本語を学んでいる台湾の高校生との交流会は、2015年8月の初訪問を受けて、今年3月、富士見の中3から高2の生徒25名が、3泊4日のホームステイを含む6日間の日程で台湾の学校を訪問しました。今年8月には台湾の高校生が再び富士見にやってきました。富士見生宅にホームステイしながら、同校の和室で茶道体験をしたり調理室で一緒にちらし寿司を作ったり、川越散策もしました。交流会はこれで3回目ですが、互いに行き来する国際交流のプログラムとして、すっかり定着しています。
この交流会で中心になるのが海外研修に参加した生徒たちです。彼女たちは海外で親切にされた経験から、帰国後、「海外から来た人に、こんなふうにもてなしてあげたい」という思いを強くします。それが海外研修に参加していない生徒と共有され、交流会に活かされています。「これまでは海外研修の経験を帰国後に活かす機会がなかなかありませんでしたが、学校内で交流会を設けることで国際教育につながりができました」と、佐藤先生も手応えを感じています。
富士見の国際交流の特徴は、海外の生徒を積極的に受け入れていることです。2016年1月には、中国の中学生男女合わせて22名が富士見を訪問しました。先方が中学生なので、富士見も20名の中学生がもてなしました。けん玉や福笑いなどの日本の伝統的な遊びやゲームで交流する中、中2の生徒たちは、日本文化を説明できるだけの知識と、それを伝えるための英語力の必要性を改めて感じたことでしょう。
このほかにも、タイの提携校とはスカイプでの交流、ニュージーランドの留学先の学校の生徒とはLetter exchange programでの交流をしています。「生徒全員が海外に行けるわけではないので、富士見にいながら海外とつながる機会をいろいろつくりたい」と佐藤先生。来年度もどんな新しい国際交流のプログラムが始まるか、楽しみです。
国公立大学の後期試験まで「みんなでがんばる」雰囲気が定着。受験で進学を目指すチャレンジする生徒も増加。
富士見生は何事にも全力投球! その姿勢は学習面にもよい影響を及ぼしています。例年、同校の大学進学実績は堅調ですが、国公立大学の合格者は2014年度が37名、2015年度も40名と健闘し、旧帝大にも5名合格しました。この要因について佐藤先生は「後期日程までがんばる生徒が増えたこと」を挙げます。
「2014年度に続き、2015年度も後期受験の合格者は10名です。国公立大学にチャレンジする生徒がごく少数だったころは、周囲で進学先がどんどん決まり、私立大学に合格しているとなると、前期試験で終わりにする傾向がありました。しかし近年は国公立大学の志望者が増え、教室で自習をしていても『自分ひとりじゃない』という雰囲気があります。最後にもう一踏ん張りできたことが好結果につながっていると思います」。
進学実績で目を引くのが、指定校推薦による進学が早慶の4名のみということです。これは過去最低で、しかも早大は推薦枠を余らせています。それだけ2015年度の卒業生は受験で進学を目指した生徒が多かったということです。これは富士見生たちが安易に進学先を決めていないということでもあります。今の高3も先輩のチャレンジ精神をしっかり継承しているそうです。
また生活指導、進路指導の成果もあると佐藤先生は言います。「中学では自分の生活をきちんと見つめて、やるべきことをきちんとやれる生徒に育てています。『フォーサイト手帳』を使って自分で時間管理をし、自学自習の習慣を身につけさせます。手帳は振り返りのツールにもなっているので、進路指導のプログラムが本格的に始まる中3に、自分の将来について見つめ始めるようになります」。自分自身としっかり向き合えるようになってから、高校で「こうなりたい」とビジョンを大きく描き、社会の中で自分の存在意義を考える大きな視点から、そのために何を学ぶかを追求します。目先にとらわれない、地に足の付いた進路選択ができていることがうかがえます。
体育祭の高3の「創作ダンス」は6年間の泣き笑いが凝縮!「みんなでがんばる」先輩を見て後輩が受け継ぐ「富士見スピリット」
新校舎ができるなど変わるものがある一方で、変わらないものもあります。「生徒主体」という富士見の伝統がそうです。生徒会行事の盛り上がりの裏には、目の前の問題に対し、みんなで協力して自主的に解決しようと努力を惜しまない生徒の姿があります。
9月中旬の体育祭は、高3にとって最後の行事です。だからこそ、体育祭のクライマックスに披露する「創作ダンス」への思い入れはかなり強い。生徒たちは高2の3学期よりダンス委員を中心に20分以上にわたる演技構成を練り始め、夏休みには受験勉強の傍らクラス単位で練習に励みます。学年全員参加で「みんなやる」「ひとつになる」のです。「これぞ富士見生」という高3の演技に、中1は未来の自分を重ね「私も富士見生なんだ」と改めて自覚します。こうして伝統のバトンが引き継がれていくのでしょう。
東日本大震災の翌年から始めた「東北復興studyツアー」は、3年目から企画の段階から生徒が主体の取り組みで、これも先輩から後輩へ受け継がれています。生徒主体の学校紹介も、生徒会が「やりたい!」と手を挙げたもの。学校説明会のコーナーの1つではなく、単独で年2回実施しています。予定のタイミングで音楽がかからなかったなど、本番でハプニングが起きても臨機応変にどう乗り切るか、その対応から生徒の素顔が見えるとあって、保護者から好評です。
「こんなことをやりたい!」という生徒の要望に応える施設・設備が着々と整う富士見。充実した施設・設備を活用して、生徒たちがどのようにプロデュース力・マネジメント力を発揮するか、富士見生の今後の活躍に注目です。