学校特集
女子聖学院中学校・高等学校
今年で111周年を迎える女子聖学院中学校。JR山手線駒込駅から徒歩7分とアクセスの良い都心にありながら、緑の多い閑静な住宅街に位置しています。1905年の創立以来、キリスト教の教えに基づいた女子教育を行っている同校では、一日が礼拝からスタート。一人ひとりが神様から与えられた「良きもの(賜物)」を見出し、互いの違いを認め互いに活かす教育で、多様な文化や価値観を受け入れる国際的な視野を育んでいます。
また、学校生活でのさまざまな体験をとおして自分の考えを自分のことばで発信できる生徒を育成、卒業生たちは幅広い分野で活躍しています。生徒一人ひとりの夢を実現に導く「学習支援システム」と「国際理解教育」の取り組みを中心に、教頭で進路指導部長の塚原隆行先生と国際教育委員長の滝澤佳代子先生にお話を伺いました。
「個」を大切にしながら、他者を活かす教育
運動会は1925年から続く、女子聖の伝統行事。全力で戦って、応援して、互いに成長する。
年間をとおして行事が充実している同校。「女子聖三大行事」と言われる「運動会」「合唱コンクール」「記念祭(文化祭)」は、生徒が中心になって運営されています。なかでも、1925年から91年も続く運動会は、何事にも一致団結しながら、全力で取り組む女子聖の象徴ともいえる行事です。
「生徒たちは紅、黄、青の3色に分かれて、本気で戦います。中高生が一つのチームで協力しあいながら、昼休みや放課後なども自主的に練習を行い、優勝を目指します」と、塚原先生。
「運動神経のいい人が目立つ運動会ではないのです。大縄跳びなどチームの協力が得点に結びつく競技が多いので、高校生を中心にみんなで知恵をしぼって戦います」と、滝澤先生も言います。
代々先輩から"秘伝"の策を受け継ぎ、まさに真剣勝負。高校生は学年ごとに、中学生はくじ引きで分かれてそれぞれ高校生の各学年に入るスタイルをとるため、生徒たちは学年を超えて一致団結し、中学生と高校生の距離がぐっと縮まって絆も深まるといいます。
「運営は高3が中心ですが、各学年の生徒がそれぞれの立場で積極的に参加しています。互いの力を出し合いながら、互いを全力で応援する。この運動会に象徴されるように、すべての生徒が活躍できる場が女子聖にはあります」(塚原先生)
"ボス"ではなく、"リーダー"の姿を見て学ぶ
「運動会の当日、競技フロアに教師の姿はありません」と塚原先生が言うように、審判、用具、召集、得点、応援などの部門ごとにリーダーを選出、企画から運営までを半年間かけて、すべて生徒たちが行います。「中3以上はそれぞれ運営面での役割があるので、自分の与えられた仕事のなかでどう行動するのか、求められた役割にどう応えていくのか、生徒一人ひとりが考えて動きます。"ボス"はこうしろああしろと指示を出しますが、"リーダー"は自らが動いて模範となります。女子聖にはそんなリーダーがたくさんいるので、後輩はリーダーのことばを聞き、後ろ姿を見て自然と成長していきます」と、滝澤先生。
中心となって活躍した高校生は「自分で動くことの大切さを学び、自己管理力がついた」「リーダーシップが身についた」と運動会終了後は自らの成長を実感。とくに高3生にとっては「3年で優勝すると受験への励みになる」「受験勉強がつらいときは運動会のDVDを見返して気合を入れた」と、受験勉強の原動力になるほど。そして、自信をもって次のステップへと羽ばたいていくそうです。
自分のことばで世界に発信!女子聖の国際理解教育とは
女子聖の教えは、国際理解の学びに適している
「自己を認めて、他者をも認める創立時からの教えは、きわめてインターナショナルです。さらに、生徒たちは他人に寛容で、多様性に対しての適応力も非常に高い。『国際理解教育』を進めていくことは、この学校にとても合っていると感じました」と、同校に赴任した際に強い印象をもったという滝澤先生。広い世界を知って自分の考えを英語で発信できる力を養う「国際理解教育」のなかから、中1〜高2で行われる学年ごとの必修プログラムについて聞きました。
学年ごとに学びを深める、3日間の必修プログラム
各学年で毎年3日間、これらのプログラムを集中して行うことで、生徒の意識はぐっと変わるといいます。
「フランス、アフリカ、中国といったさまざまな国の留学生とコミュニケーションをとるプログラムを終えたあとに『大変すぎて英語が嫌いになりそうだった』という生徒もいました(笑)。他国の人とコミュニケーションをとるのは大変なことですよね。ですから、それくらいに感じてくれたことで、確実に生徒たちの世界も広がっていったと思います」と、滝澤先生。
海外研修で"英語の感性"を磨く
授業や必修プログラムをとおして世界へと視野を広げていく生徒たちに、「海外での経験を、可能な限り積んでほしい」と滝澤先生は言います。「英語習得には、知識・技術のほかに、感性が大切です。音のつながる感覚やスピード、会話のテンポとかタイミングなどが、海外に行ってストンと落ちる感覚をぜひ、1人でも多くの生徒に感じてほしいと思っています」
そんな先生方の思いから、同校にはさまざまな海外研修プログラムが用意されています。
なかでも高1を対象としたアメリカでのホームステイは、同校で40年以上続く伝統のプログラム。ほかにもロンドン近郊にある全寮制の「立教英国学院留学」(中3)は、生きた英語はもちろん、英語圏の考え方や国際感覚を学べるうえ、長期休みにはホームステイも経験できるプログラムです。さらに、中3から参加できる「セブ島マンツーマン語学留学」では1日8時間みっちりとマンツーマンで授業が行われ、英会話力を徹底して磨けます。また、高1・2が対象のオーストラリア名門女子高への「ターム留学・年間留学」では、学校生活とホームステイを通じて英語力だけでなく自立心やチャレンジ精神を養うなど、内容も期間も生徒のニーズに応えられるよう整備されています。
「生徒それぞれ留学に適したタイミングは違うので、無理に勧めることは本人のためになりません。ただ、本人のやる気さえあれば、海外研修では将来につながる数多くのことを吸収できます。以前、セブ島での研修で具合の悪くなってしまった生徒がいたのですが、医師志望だった彼女は『病院で使う英語まで学べた』と、たくましくなって帰ってきました。学校でより良い環境を整え、しっかりとサポートして後押しをしてあげたいです」(滝澤先生)
より実践的に英語を使いこなし、自分の考えを自分のことばで世界に発信できるように、6年間をとおして綿密にカリキュラムが組まれている同校の国際理解教育。また、同校には24校もの海外の大学への指定校推薦入学制度もあり、生徒たちの視野は自然と海外へと広がっていきます。
「英語入試」を昨年からスタート。徹底して、英語の"体幹"を鍛える
英語入試を昨年からスタートさせて、さらに英語教育を充実させている同校では、今年から英語の既修者を対象とした「スペシャルアドバンスクラス」を新設。「スペシャルアドバンスクラスの3年間での目標設定は、英検3級の満点です。『英検3級?』と思うかもしれませんが、英検は約7割の点数が取れれば合格になると言われていて、もし、ギリギリの点数で合格した場合、中学英語の3割を積み残してしまうことになるのです。3割を積み残したまま高校英語に向かうことが、高校で英語が伸び悩む原因になっていると思います」と、滝澤先生は言います。さらに、「英検3級で満点が取れれば、2級合格のCSEスコアまではあとわずかですから、3級で満点が取れる生徒はすぐに2級も取れます。そこで、中学時代は技術と知識の先取りをせずに、徹底して基礎力、いわば英語の"体幹"を鍛えます」(滝澤先生)
「中2でほぼ中学の授業内容は終わらせる予定ですが、あえて先にはいかずに完成度を上げていきます。中学英語が完璧にできれば、ホームステイに行っても何も不自由しません。自由に話せて書いて聞けるでしょう。その自由に英語を操れる感覚を養って、高校で受験英語に入っていきます。そのほうが伸びしろがありますし、受験にも十分に間に合います。高度な技術には走らずに、実際に使える英語を目指します。受験だけを見据えていては、今後の大学入試にも通用しなくなるでしょう」と滝澤先生。
もう一つの「スタンダードクラス」でも、徹底して基礎を定着させていくと言います。「入学前に保護者の方から、『特別に英語を勉強していなくても授業についていけますか』とよくご質問をいただきますが、最初から教えますのでもちろん大丈夫です!」と、力強く答える滝澤先生。英語が好きになり、話したくなるしかけを数多く用意し、成績によってはスペシャルアドバンスクラスへの移行もある(クラスの入れ替えは定期的に実施)など、同校には生徒一人ひとりがそれぞれのペースで前向きに学べる最高の環境が整っています。
生徒の夢の実現を、全力で応援する学校。学校内の勉強だけで医学部にも合格。
「JSGラーニングセンター」が開設して"家庭内学習"から"学校内学習"へ
昨年の9月に「JSGラーニングセンター」が開設し、生徒や保護者からの要望が高かった放課後や長期休みに、学校内で集中して勉強できる環境が整備されました。個別に仕切られた机で落ち着いて自学自習ができる「自習エリア」や、常駐しているチューターにわからないことを気軽に相談できる「個別相談ブース」は連日生徒たちで大盛況。「予習・復習・テスト勉強もすべて学校で終わらせてから帰宅する」という生徒が増えているそうです。ちなみに、最近のアンケート調査では、女子高生のスマートフォン使用平均時間が1日7時間を超えるという驚くべきデータもありますが、その点、同校では電源を切って学校に預けるため、勉強に集中できる環境が保証されています。
「これまで最終下校時間は17時30分でしたが、JSGラーニングセンターの利用時は、中1生は18時、中2・3生は19時、高校生は20時までと延ばしました。受験生はもちろん、部活動に打ち込む生徒も、部活終了後に利用可能です」と、塚原先生。とくに仕事をもつお母さん方からは「放課後、学校で落ち着いて勉強ができるのなら安心」という声も多いそうで、バーコード管理によって生徒の入退室記録が保護者の携帯電話に届くシステムも喜ばれているそうです。
下校時間が30分単位で決められているのも、下校途中の生徒の安全を考える同校らしいきめ細やな配慮です。「学習時間を増やして授業の定着度を高め、それぞれが希望する進路に進めるよう、しっかりとサポートしていきます」(塚原先生)
「JSG講座」で難関大学合格を強力バックアップ。中1対象の基礎クラスも充実。
「JSG講座」とは、「受験対策にとどまらず、社会に出たあとにも通用する力をつけさせたい」という先生方の思いから2012年にスタートした課外授業です。国立、早慶上理、医学部への合格力をつけることに特化した"発展レベル"の講座から、中1を対象とした"基礎レベル"の講座まで、各生徒のニーズに沿った講座内容で放課後や長期休みに展開されています。
「毎日の授業をしっかりと受けて理解すれば、GMARCHレベルの大学に進学する力を身につけられるカリキュラムになっています。特進クラスは設けていませんが、JSG講座は最難関大学の受験にも対応していますし、塾に通わずに学校内の勉強だけで国立大の医学部に合格した生徒もいます」と、塚原先生は言います。「今年の夏休みには52もの講座が開講しました。夏合宿や練習時間など部活動との連携・調整を図ったことで、より多くの生徒の受講が可能となりました」
教えるのは生徒たちをよく知っている各教科の先生方なので、きめ細かく一人ひとりをサポート。このJSG講座の受講やラーニングセンターの利用が、模試の成績アップや大学への合格実績躍進にも結びつくなど、すでに改革の効果が実証されています。
受験は団体戦。最後の一人が決まるまで、受験生を「スコーン」や「やきいも」で応援
「本校では、受験は団体戦と位置づけています。最後の一人が決まるまで、学年全員が受験生の気持ちのまま、仲間を応援します」と、塚原先生。
生徒を応援する気持ちから、女子聖オリジナルのスコーンも誕生。下校時間を延長したことで、勉強する生徒たちがお腹を空かせないようにと、近くの女子栄養大学と共同で開発しました。栄養価が高く添加物を使わないスコーンはおいしいだけでなく体にも良く、生徒たちに大人気です。
生徒を応援するのは、保護者のみなさんも同じ。 同校には"パパも女子聖土曜プログラム(通称:パパプロ)"というPTA活動団体があります。"パパプロ"のみなさんは運動会や記念祭の警備をし、また受験の季節には高3生に大量の「応援メッセージ付きやきいも」を差し入れてくれるのだとか。年々、本格的になっている"パパプロ"は農家とも契約したそうです。
パパたちの合言葉は「娘たちの笑顔のために」。愛情のこもったやきいもが、受験生たちの身も心も温かくしてくれています。
女子聖で学んだ6年間で自分を活かせる道を見つけて、国内外で活躍する多くの卒業生たち。自分の可能性に気づかせ、伸ばしてくれる教育が女子聖にはあります。
11月には伝統行事の一つでもある記念祭(文化祭)がありますので、ぜひ一度「女子聖」を訪れてみてはいかがでしょうか。たっぷりと愛情を注がれながら、伸び伸びと健やかに、勉強や行事に全力で取り組む生徒たちに会えるはずです。