学校特集
国本女子中学校・高等学校
国本学園は、1942年に創立。近隣の方々から信頼を寄せられている共学の幼稚園、小学校と、面倒見がよくアットホームな校風の女子中学校・高等学校が共存する一貫校だ。74年間、受け継がれてきた人格教育はそのままに、時代の変化に柔軟に対応。2016年入試から、英語入試をスタートさせた。
「日本で生活していても、英語で話すことが求められる時代。小学校でも2011年度から外国語教育が必修化されました。ただ、それは英語のスキル習得を目的にしたものではありません。英語のスキル習得は中学校に入ってからで十分。そう考えると、海外での生活経験や英語力などのアドバンテージよりも、むしろ、英語で話せるようになりたい、視野を広げたいと、わくわくしている、明るく元気なお嬢さんに入ってきてほしいのです」
そう熱く語る平成27年度学力推進本部・特別講師の執行(しぎょう)智子先生に、国本女子の英語教育について伺った。
この春、英語入試1期生が入学!
自らのポテンシャルを伸ばす"意欲"や"姿勢"に期待
2016年入試からスタートした英語入試について、お話いただけますか。
執行先生:本校の英語入試は、いわゆる英語力を求めるものではありません。中高6年間を通して、英語のスキルを楽しく習得できる環境が整っていますので、英語を学びたいという意欲や、英語に親しむ姿勢を重視しています。
小学校生活をいきいきと送ってきて、ふと、中学校から先のことを考えた時に、『英語力をつけて、多くの人とコミュニケーションを図りたい』『受験勉強はしていないけど、英語を楽しく学べる学校があればチャレンジしたい』と、目を輝かせるようなお嬢さんと、そんな我が子をあたたかく見守り、応援する保護者の希望をかなえられる入試がしたいと思い、2016年入試から導入しました。
入試は面接形式(英語)で行います。特別な勉強や資格、海外での生活経験がなくても受験していただけます。この春の受験生もも聞く力はありましたが、話す力にはまだ成長の余地がある印象でした。ただ、小学校でやるべきことはきちんとやってきていて、話すことをたくさんもっている子。多彩な才能を持っていて、楽しく学校生活を送れるであろうと思える子が入ってきてくれました。本校には奨学金制度がありますので、英語入試で合格してから、奨学金制度の試験を受けた方もいらっしゃいます。2016年は1日だけでしたので、英語入試による新入生は全体の1割程度にとどまりましたが、徐々に回数や募集人数を増やしていきたいと考えています。
5月に行われるイングリッシュキャンプ
5月に行われるイングリッシュキャンプ
特色① 常に学び続ける姿勢を育てることが目標。
一人ひとりに目を配り、つまずかないよう大事に育てる
入学後の英語教育について教えてください。
執行先生:生き生きとしなやかにコミュニケーションをとれる女性を育てることが、英語科の目標です。「大学受験に対応できる高い英語力」「国際人として活躍できるコミュニケーション能力」「自律的学習者の育成」を3本柱に、一人ひとりの学びの過程を大切に、授業を行っています。
中高一貫校なので、高2までに英検2級取得を目指していますし、大学入試に取り入れられつつあるTEAPやTOEFLに対応する力もつけていきますがもっとも大事にしているのは、英語を常に学び続ける姿勢です。私たちはネイティブスピーカーになれるわけではないので、英語力を伸ばすには、自分が話す言葉、人が話す言葉に敏感になり、言い回しや、言葉の奥に秘められている意味を考えるとともに、教養や、相手をあたたかく受け容れる度量を広げ続けることが大切です。そのため、英語入試では、英語学習への意欲や態度、積極的な姿勢を重視しているのです。言葉を発するということは、自己開示するということ。心の安定も関係しているので、面接により総合的な判断ができることに期待を寄せています。
英語教育の特色としては、小学校から中学校への移行でつまずくことがないよう、一人ひとりの学びのプロセスに目を配っています。一つのプロセスにこだわらず、別のプロセスをたどろうとも、ゴールにたどりつけるようサポートしています。私たちが音声から日本語を習得したように、音声ややりとりに重点を置いた学習も、大きな特色です。楽しいと感じながらも、しっかりと4技能(聞く・話す・読む・書く)を身につけることができます。
ネイティブでも、関係代名詞を使いこなせるようになるのは10歳ころと聞いています。外国人の私たちが、学習開始時からセンテンスをパーフェクトに言えることを目標にする必要はないのです。学習開始年齢が経っているので、母語である日本語の習得とまったく同じかというとそうではありませんが、寝返りを打ち、ハイハイを始め、つかまり立ちをして、つかまりながら歩いて、やがて歩けるようになるという習得順序は守るようにしています。
6年間一貫して行われるコミュニケーションを取り入れた授業
情操教育を大切にしている本校では、高1と高3で「茶道」を学びます。茶道から、美しい所作や心配りなどを学びながら、日本の伝統文化や日本人の心などを感受するものと期待しています。華道や箏曲に触れる機会もありますので、体験をもとに、日本の伝統文化を英語で発信できるようになることを目指しています。
特色② 幼い頃、積み木を重ねて言葉を作ったように、
遊び的な要素を取り入れて、十二分に英語に親しむ
英語教育はどのようなカリキュラムで行われているのですか。
執行先生:英語の授業は週6時間。4時間は"English for communication (=コミュニケーションのための英語) "と名づけて、テキストを用いた授業を行います。2時間は"English for oral communication (=音声を重視したコミュニケーションのための英語) "。この授業ではテキストを使わず、プロジェクト型の学習を行う、絵本を読む、歌を歌うなど、さまざまなことを行います。
先ほど、赤ちゃんの成長の話をしましたが、子どもは大人が話していることを聴いているだけではありません。オウム返しをするなど、やりとりが始まります。やりとりの中でコミュニケーションの大切なことを学んでいくので、週2時間のオーラルコミュニケーションの授業が大切なのです。
執行先生:ネイティブスピーカーが4名(常駐2名)いますので、中学の英語の授業はほぼ日本人の先生だけでなく、ネイティブの先生がかかわり、オールイングリッシュを基本に行っています。といっても、フォニックスをしたり、文字と音をくっつけるゲームをしたり......。幼い頃、積み木を重ねて言葉を作ったように、遊び的な要素を取り入れて、英語に親しむことが多いです。
絵本の読み聞かせもたくさんしています。言葉には余剰性があり、効果音など意味のない言葉も楽しめるからです。言葉は唯一人間にいただいた神様の賜なので、ツールとして使うだけでなく、楽しむということも、子どもたちに味わわせたいと思っています。
もちろん、音声の聴き取りだけでなく、読むという難解な作業にも徐々に慣れていきます。オックスフォードのリーディング・ツリーを使い、聴きながら読むということもしています。その作業には、先生から聞いたことを自分で確かめる、あるいは気づくことができるメリットがあります。教えてもらうばかりでなく、「この単語はこう読むのか」「先生が言っていたのはこういうことか」と、生徒が気づき、納得して、理解しながら進むことができるので、この作業にかかわらず、トップダウンとボトムアップを、バランスよく行うようにしています。
文化祭では、3学年が1つになって、サウンド・オブ・ミュージックを歌と語りで演じます。その準備も、オーラルコミュニケーションの授業で行います。中3がお母さん役、中1が子ども役、中2は歌や寸劇を担当します。中3は、物語の時代背景を調べて、パワーポイントにまとめたものをスピーチするということも行います。観に来てくれた人たちに、少しでも自分たちの英語をわかってもらえるように、生徒自身で言葉を足したり引いたりして文章を整えます。そして「これでよし」と、全員が納得したところで、誰がどの部分をスピーチするかを決めて、練習します。生徒主体の活動は、その後ろで手綱を握る、担当教諭の腕次第、いかようにもなるので、高い達成感をもたらす、手綱さばきのうまい先生がいることも、本校の英語教育の強みです。
町田キャンパスで行われる秋の大運動会!
町田キャンパスで行われる秋の大運動会!
ネイティブの先生が常駐し、気軽に英語でおしゃべりできる『イングリッシュ ラボラトリー』が人気です。昼休みになると、お弁当を持って訪れる生徒も多く、笑い声が絶えません。
特色 ③ 本当の意味での国際交流体験は、その後の人生を変える!
だからカナダでホームステイする体験は外せない
執行先生:言葉は使わなければ、宝の持ち腐れです。ただ、話したいことがなければ、言葉を発することはできないので、本校では論理的に考えることも大切にしています。疑問をもった時に、自分から聞いて、話を広げることができれば、視野が広がるので、自分で課題を見つけて、解決するアクティブ・ラーニングを意識して取り入れています。中1、中2では楽しく、英語に親しみ、4技能(聞く・話す・書く・読む)の基礎をつくることが中心となりますが、全学で、英語でコミュニケーションを取りながら、問題を解決するプロジェクト型のタスク活動を積極的に取り入れて、グローバルイシューでディスカッションするところまでもっていきたいと考えています。
カナダ研修が中学校の英語教育の集大成になりますか。
執行先生:そうですね。海外に行くと、モチベーションが上がり、「もう一度行きたい」という子が増えているので、今年度から、中3だけでなく、高3まで対象学年を広げます。
ホームステイをし、現地の語学学校に入って、他国の人と交わります。市バスに乗って通うので、わからなければ現地の人に聞くなど、自然と英語を使う場面が生まれます。学校では、男子ともかかわって、いろいろなアクティビティもしますので、どちらかというと英語学習よりも英語体験です。
一番大切なのは教員が手作りしたしおり。カナダでは毎日、日記をつけますので、「明日こそは自分から話しかける」など、たくさんの決心が書いてあります。ダメな自分と向き合うこともあるので、このリフレクションが、私は一番大切だと思います。
日本の中でも、英語づけにすることはできます。スキルを磨くこともできますが、14、15歳の子どもにとって、本当の意味での国際交流体験は、その後の人生を変えるほど、大きな経験です。海外の人と接して、その中で自分はどう生きていくかと、自分の中で問題提起をするからです。その時に解決はできませんが、それがタネとなって伸びていってくれるので、この日記の中にある14、15歳の自分は、とても重要なのです。
カナダ研修の思い出は生徒たちの一生の宝物!
カナダ研修の思い出は生徒たちの一生の宝物!
特色 ④ 社会で行われているコミュニケーションを
教室の中に持ち込み、考える力を養う
執行先生:高校になると、より多角的な学習になります。例えば、私の授業ではシェークスピアを読みます。昨年度は伝記の絵本でシェークスピアの人となりに触れてから、ビデオを見ました。ネイティブがところどころで解説をしてくれましたが、ジュリエットの年齢と生徒の年齢が近いので、非常に共感していました。さらに物語を分析した上で原書を与え、生徒自身が選んだ場所を、自分がジュリエットに、ネイティブがロミオになって演じました。一つひとつの言葉が、どういう気持ちで出てきたのか、という分析をあらかじめ行っていたので、気持ちが乗っていました。オリジナルのものに触れることも、生徒たちにとっては嬉しいことだったようです。
高1では、要約もたくさんさせています。グループワークで行うため、「ここがわからない」とグループで話し合うこと自体がコミュニケーションになります。まわりの人たちの言葉を受け止める。取捨選択をする。時には論争になってしまうこともあるかもしれませんが、社会で行われているコミュニケーションを、教室の中に持ち込みたいと思っています。ですから、2段ある黒板をフルに使い、意見を出し合いながら骨をつくり、肉付けをして、一つの文章を完成させていきます。こういう授業を行う時は、十分に考える時間と、人の意見を聞く時間をつくります。文法ができても、日本人が話せないのは、それを使って自分の表現したいように文章を組み立てることが出来ないからです。他校に比べて文法の時間は少ないですが、あえてこうした授業で補い、使えるようにしているからです。大学に行けば、すぐにプレゼンが始まります。エッセイも書かされるので、その時に困らない力はつくと思います。
進学では、アメリカの大学に行く生徒、コミュニケーション学科に進学する生徒が多いです。それは、国本女子が、自らかかわろうとする力をつけることに力を入れている現れだと思います。 授業で心がけているのは、生徒自ら「やってみようとする」「恐れない」「一歩一歩歩む」「おもしろいと思う」「自分を信じる」ということ。正解はありませんが、中1で書いたバイオグラフィ(伝記)を、中3で再び目を通させると、その時の自分と向き合って、成長を実感します。こうした振り返りにより、さらなる成長が期待できるので、そのチャンスをたくさん設けたいと思っています。
10月11日に札幌コンサートホールkitaraで行われた、第15回東日本学校吹奏楽大会において吹奏楽部が金賞を受賞しました。中学生も高校生と一緒に活動しており、礼儀や挨拶など、音楽以外のことも学んでいます。