学校特集
江戸川女子中学校・高等学校 2016
掲載日:2016年4月1日(金)
JR小岩駅南口から徒歩10分。江戸川区東小岩に南フランスの美しい回廊に囲まれたような江戸川女子中学校・高等学校があります。2014年秋には新講堂と体育館が完成し、ますます施設と教育環境の充実した同校の校長、木内英仁先生と入試対策委員の小笠原敦先生にお話しをうかがいました。
無理のない先取り学習と効率的な学びで知られ、きめ細かな進学指導と教科指導で高い評価を得ている江戸川女子。同校は、65分授業制、年2学期制を軸に、高度な英語教育を武器として、人文・社会科学系の学部にとどまらず、医歯薬系を含む理系学部まで幅広い進路を実現し、受験生の高い支持を得ています。その背景にあるのは、授業研究、教科研究を怠ることなく、質の高い授業を展開する教員と、毎日の復習を怠ることなく、自立した学習を続ける生徒たちの協働した強さです。この6年間を通して、生徒たちは人間力豊かに、規律正しくたくましい江戸川女子の生徒として成長していきます。
65分授業制を導入。無理のない学習計画の中で先取り教育を実施
江戸川女子と言えば65分授業が有名ですが、導入されたのはいつごろからですか。
木内英仁校長先生:1994年から導入しました。無理なく授業数を確保でき、詰め込みをすることなくゆとりを持って学習してほしいとの願いから導入しました。
小笠原敦先生:以前は他の多くの学校でも実施している50分授業6コマでした。当時、放課後に受験講習を設けていましたが、クラブ活動に取り組んでいる生徒の中には「受験講習を受けないでクラブ活動をしていていいのだろうか」と不安を抱く生徒がいました。その結果クラブと学業を両立できる生徒なのにクラブ活動をやめる生徒も出てきました。これではいけないと検討を重ねて、年2学期制の65分授業5コマの現在の体制に至ったのです。
65分授業5コマ制になったことで、一日の授業時間が25分増えました。土曜日が3コマですから、一週間で120分授業時間が増えたことになります。さらに年二学期制も採用しましたから、年間の授業日数が格段に増えました。これにより放課後はクラブ活動や自分の好きなことに費やせるようになりました。
65分授業制になりますと授業の組み立てをはじめ、授業研究や進め方の工夫などで先生方は大変だったのではないでしょうか
木内英仁校長先生:最初は生徒が集中力を保てるのか心配な面もありましたが、中学受験の塾ではさらに長時間授業を行っているところもありますから、実施可能と判断して導入に至りました。
毎年、カリキュラムを検討することで、授業のシステムは改良し続けています。授業の組み立てについても、授業研究、教科研究を並行しながら、シラバスに基づいて進めてもらっています。さらに教科間、学年間での取り組みだけではなく、個人の教科研究も重要ですので、個々の教員には生徒の集中力をどう維持させながら授業を行っていくか、生徒を教員のほうに向かわせるにはどうするかなど、工夫に努めてもらっています。基本は6年間をトータルに捉えて、無理のない学習計画の中で、先取り教育を実施していくということです。
授業の質を高めるために、他の教員の授業を参考にしたり授業アンケートを実施したりして、常に授業研究、教科研究に努めておられるわけですね。
木内英仁校長先生:授業研究とともに、本校では年に一度、数週間を「授業参観週間」と定めて、他の教員の授業を聴く機会を設けています。話し方や進め方に特徴のある教員の授業を聴いて学んでもらおうというわけです。
小笠原敦先生:本校では授業アンケートを前期末、学年末の年2回実施しておりますが、2段階で実施するのが特徴です。まず、マークシートで授業を生徒に5段階評価してもらいます。その結果を教員に伝えます。それを基に、教員が個別に項目を立ててアンケートをとります。項目以外にも生徒が伝えたいことがあるかもしれないので、自由欄は必ず設けるということ以外は、個々の教員にアンケート内容はまかせています。アンケートをとることで、生徒が疑問に思っていることや自分の授業のなにが良くて、なにが悪いのかというところが客観的に見えてきます。
特徴ある英語教育
英語教育のレベルが高いことでも知られていますが、英語学習の特徴を教えてください。
木内英仁校長先生:本校が使用している『プログレス21』というテキストは語彙数が非常に豊富です。中3までの範囲に高校で習う基本的な文法事項は網羅されていますので、きちんと定着させるために工夫を凝らした授業を展開しています。
小笠原敦先生:小テストを活用するなど短めのスパンで定着度を確認し、また補習を受けさせるなど手当てを怠らないようにしています。
木内英仁校長先生:入学前の春休みには「アルファベットを書けるように」レベルの宿題しか課していませんが、中3修了段階では、英検の準2級に70~80%合格しています。これからの時代は英語ができるのは、あたりまえと見られるのではないでしょうか 。
合格の体験だけではなく不合格体験も知っておいてほしい
『現役合格へのパスポート』とは、どのような内容ですか?
木内英仁校長先生:本校では卒業生の講演会など、在校生が様々な話を聞く機会を設けていますが、講演だけでは一過性なものになりがちです。そこで体験談を冊子の形にまとめて生徒に渡せば、折に触れて大学受験というものを考える機会になるだろうと作成しました。身近な先輩の体験談ですから、生徒達は皆、真剣に受け止め、活用しています。
小笠原敦先生:私たち教員が「こんな方法ではダメだ。合格できないぞ」というよりも、一つ、二つ上の先輩が言ってくれると、より深く伝わるのです。活字にして製本しますと、学校が編集したのではと思われるかもしれませんが手書きしたものを直接印刷して掲載していますので、生徒にはより現実味が伝わるのではないでしょうか。冊子の中には、色々なタイプ・成績の話が出てきます。合格体験だけではなく、不合格体験も掲載されています。このパスポートの価値は実はそこにもあると思っています。「こんなやり方だと、こんな結果になるのか」とわかることも大事なのです。自分の夢を実現するためにはなにが不足しているのかということを、この冊子から学んでほしいと思っています。
理系の進学実績が増えていますか?
小笠原敦先生:4割ほどの生徒が理系進学を志しています。理系では国公立大と私立大では受験科目も共通している科目が多いので、国公立大と私立大と分けて考えている生徒は少ないようです。基本として国公立大受験をしていきます。かつて千葉大の工学部に高2からスキップした生徒もいましたし、国立大医学部医学科に合格者が出るようになりました。
様々な行事を通してリーダーシップを培う
リーダーシップ教育の進め方は?
木内英仁校長先生:リーダーシップは、こうすれば身に付くというものではありません。様々な行事の中で培っていくものです。本校では中3の京都・奈良修学旅行で、現地の宿に集合することになっています。
現地の宿屋に集合するのですか。
小笠原敦先生:学校からは集合当日の時間と路線だけは指示をしますが、他の条件は提示しません。つまり班別に新幹線に乗車するわけです。奈良では半日自由研修する余裕がありますので、それを含めた班別の行動計画を提出させています。
木内英仁校長先生:ほかの学校の話などを聞きますと、学年全員が学校に集合して、一緒の電車ででかけるというのが一般的のようですね。ご心配になるご父兄もいらっしゃるかと思いますので、少し説明を加えますと、中3の修学旅行に至る前に、年2回社会科見学(中1:上野・横浜、中2:鎌倉・川越)を実施し、ともに現地集合・現地解散で実践を積んでいるのです。
木内英仁校長先生:慣れてくると、生徒は逆に自由行動が出来ていいと言います。本校は女子校ですから、最初から最後まで自分たちでやらなくてはなりません。それがいつのまにか依頼心を薄れさせるのではないでしょうか。文化祭や体育祭など、企画・運営・進行のすべてを実行委員会が握っています。工作物も自分たちで作ります。
小笠原敦先生:明らかに危険が伴う場合は、教員が手伝いますが、基本は生徒がなんでもやります。ある生徒が実に器用にのこぎりなどを使っていましたので、うまいねとほめたところ、お父さんが日曜大工をやっていて、見よう見まねで覚えたということでした。行事を通して、生徒の色々な面が見えてくることも素晴らしいことです。
得意分野でリーダーシップを発揮。女子校ならではの財産ですね。
小笠原敦先生:生徒を自立させるために、保護者の方々にはなるべく手伝わないでほしいとお願いしています。中1の5月には軽井沢への校外学習がありますが、荷造りからすべて生徒にやらせてほしいと伝えてあります。忘れ物をしてもかまいません。「今度から気をつけよう」と思ってもらえばいいのです。
木内英仁校長先生:次への気づきが大事なのです。失敗から学べることはチャンスだと思っています。こういうチャンスが生徒を一段と大きくして、個々の人間力を豊かにします。本校の生活は自立させるための6年間なのです。
2014年秋に完成した講堂・体育館
主要大学合格実績