【二松学舍大学附属高等学校】孔子の精神を「論語」から学び取る
硬式野球部の活躍で知られる二松学舍大学附属高等学校(以下、二松学舎と記す)の教育に強い関心を持ち、7月3日に鵜飼敦之校長にインタビュー取材をお願いしました。九段下駅で降りて外に出るとそこは眩しいほどの別空間が広がっていました。千鳥ヶ淵の駅寄りにはハスが群生しピンク色の美しい花を咲かせていました。気持ちよく5~6分歩くと二松学舎大学の第三キャンパスがあり、その先に高等学校の校舎が道路沿いにそびえたっていました。中に入るととても静かな雰囲気でした。今、話題になっている渋沢栄一氏のゆかりの学校であることからより一層興味が湧き教育のどこに一番力を入れているのかなどいろいろとお聞きしてきました。
写真:左)鵜飼敦之校長 右)取材者 石坂康倫
my SPECIAL ONE(2024年8月発行)
首都圏模試センターが発行する『my SPECIAL ONE』のコンセプトは、キミの“スペシャル”になる学校がきっと見つかる、じっくり知る、じっくり選べる高校受験情報誌です。高校受験において、受験する学校を割り振られてしまう現在の進路指導(入試システム)のもとでは、自分にとってベストの選択肢を探しにくい状況が生まれているのが現状です。先進的でユニークな“ 希望の私立中学校・高等学校 ”の存在を、本誌では多くの高校受験生と保護者にお伝えしたいと思います。今回の記事についても、この情報誌と連携しております。ぜひ、ご期待ください。
(写真)『my SPECIAL ONE』2023年版表紙
校風
二松学舎は、1学年250人6クラス規模で、コンパクトな校舎のつくりから、生徒は「アットホーム」な学校であると感じています。生徒同士のコミュニケーションが活発に行われ、生徒と教員との関係も近く、教員の視点からは目が行き届き、生徒は先生方が親身になって相談にのってくれる学校であると感じているようです。確かに運動施設などには地域性もあり十分に満足することは難しいかもしれませんが、大学が近くにあるために大学の体育施設や学習ホールなどの利用も可能になっています。丁度取材中に体育を終えた生徒たちとすれ違いましたが、とてもすがすがしい挨拶を交わしてくれました。生徒の顔もみな爽やかでした。生徒を見れば学校の様子も伝わってくるものです。
歴史背景
二松学舎は、漢学者であり法律家である三島中洲先生の建学の精神に基づいた人材の育成を目指し、明治10(1877)年、正にこの九段の地に設立した漢学塾が始まりです。昨年、創立145年を迎えた日本屈指の伝統校であると言えると思います。
明治初年と言えば、欧米の文化が流入し、多くの情報が日本に紹介された時期です。その時代にまず、東洋の文化を学び、自国の歴史や文化を理解し日本人の真の姿を知ることがこれからの世界で活躍する人材育成となると考え漢学塾を設立されました。
現在では、このことを時代の流れに対応して「国際化・高度情報化などが進む中、自分で考え、判断・行動し、幅広い分野で活躍できる人物を養成する」ことを二松学舎の理念として多様化を尊重した形へとアップデートしていると感じました。
二松学舎の偉人たち
三島先生と親交が深く、「論語」を生涯の指針として掲げた渋沢栄一氏が第三代舎長として経営面・学術面でも二松学舎を支えた一人です。
夏目漱石、中江兆民、犬養毅、加納治五郎、黒田清輝、平塚雷鳥、薄田泣菫ら各界を代表する人物が二松学舎で学び、彼らが残した言葉や業績は時代や文化を超えて今も大きな影響をもたらしています。そうそうたる歴史上の人物が世に出ています。そこには、「論語」の影響が大きいと考えられます。
写真:独自科目「論語」オリジナルテキスト
教育方針・スクールポリシー
【教育方針】
「心を育て学力を伸ばす」
【スクールポリシー】
第1「アドミッション・ポリシー(期待する生徒の姿)」
二松学舎は高校生活の中心となる学習、部活動、学校行事という「3匹の兎」を追い、そのすべてに一生懸命に取り組もうとうする中学生の入学を期待しています。
第2「カリキュラム・ポリシー(教育プログラム・教育課程)」
心を育てるため、独自科目として、週1時間・3年間積み上げて「論語」を学んでいます。今から約2500年前の中国の思想家・孔子が、弟子たちとの間で交わした「生きるとは何か」「人生とは何か」の問いと答えをまとめた学校手作りのテキスト「論語」を使って「人間としての在り方・生き方」学び、そして日々の生活で実践するように努めています。この取り組みは、日本にある約5000の高校の中でも、二松学舎だけのものではないでしょうか。また、凡事徹底を指導し、「挨拶する・時間を守る・環境を整える」など、人としての大切なことを実践するよう機会あるごとに繰り返し鵜飼校長先生は生徒に伝え話しています。
写真:今週の論語
第3「グラデュエーション・ポリシー(本校卒業時のあるべき姿)」
人生100年時代と言われています。しかし、高校生活はわずか3年という短い期間でしかありません。そこで、二松学舎では、人生100年時代を生き抜くための力、つまり本校の4つの校訓を育くむ場であると強調されました。その校訓は仁愛・正義・弘毅・誠実です。仁愛とは、思いやりや情けを持って人を愛すること、正義とは道徳・道理にかなって正しいこと、弘毅とは度量が広く意志が強いこと、誠実とは偽りがなく真心がこもっていること、と説明してくれました。これらはどのような時代が来ようと人として持っていなければならない大事なことです。こういう気持ちが薄れてきているようにも思う時代です。これから、AI時代が到来するからこそこのような基本精神こそがとても大事であると改めて知らされました。鵜飼校長先生の話をお聞きして、「論語」を学ぶことの大切さを改めてよく理解することができました。
一方、学力面では、入学時に特進コースと進学コースを設けていますが、それぞれ具体的な目標大学を設定しています。GMARCH、日東駒専以上が目指すべき目標です。人としてのあるべき考え方を身に付けることによって、この出口目標は必ず達成すると思いました。ここまで、学力を身に付ける二松学舎での3年間は、生徒一人一人にとって重要な時間になるのではないでしょうか。
写真:生徒たちの「私の論語」冊子
学力支援策 1年生向け放課後学習支援事業
大学受験のためには、先ずは主体的に学ぶ姿勢と基礎学力をしっかりと身に付けておく
必要があります。そこで、新たに放課後の時間を活用した事業を展開しはじめています。具
体的には外部の教育機関から派遣される人材(大学生)を活用し、生徒それぞれの個別の
課題に応じた勉強法や学習内容など個別面談を通して提案・確認していきます。基礎的な学
力養成のボトムアップから難関大学への進学に向けたサポートなど個別のサポートを柔軟に設計し、支援していくプログラムです。また、外部人材と先生方も定期的に生徒の情報を共有し、よりきめ細かに生徒をフォローしています。さらに、部活動等で毎回参加ができない生徒にはオンラインやメールによる支援も実施しています。場所は、二松学舎大学5号館のワンフロアを二松学舎専用スペースとして新たに準備しました。費用は学校が全額負担をしています。近くに大学の施設があり、その施設を有効に活用できるのはメリットだと思います。
鵜飼校長先生は力強く言われました。
・・・学校選びは「行き先」を選ぶのではなく、「生き先」をしっかり選ぶことに他なりません。他の高校と比較していただいても、「やはり二松学舎が良かった。入学したい。」と感じてもらえる学校だと自負しています。中学生の皆さん、ぜひ二松学舎で自分を試してみませんか。そして保護者の皆様、お子様の思いを叶えられるよう一緒に支えて参りましょう。
取材後記
二松学舎は高校です。附属中学校はありません。中高一貫校が多くなるなかで、高校からの私学選択ができるのは、中学生や保護者にとっては嬉しいことであると思います。幸い、大学の附属でもあり、二松学舎大学への進学も期待できます。確かに、文系傾向にある学校ですがお聞きしてみると理数系クラスも各学年に一クラス設置され理数教育にも力を入れていることが分かりました。不易の根本理念である校訓や「論語」が土台にあるので、いかようにも高校卒業後の道を開拓することができます。是非、学校説明会に行ってみて、爽やかな生徒の姿や生徒と教員との距離感の良さを感じてっていただけると楽しくて充実した高校生活が見えてくるのではないでしょうか。
取材者:石坂康倫(石坂教育研究オフィス代表)