「グローバル教育のこれから」学校アンケート
株式会社スタディエクステンション、 GLICC(グリック)代表
「グローバル教育のこれから」をテーマに私立学校にアンケートを実施。帰国生入試や英語入試、中学部・高校部の英語取り出し授業、高1生のオールイングリッシュ時間、英語ネイティブ教員の割合、帰国生や留学生の割合、留学プログラム、海外大学合格実績について調査しました。各校は多様な取り組みを行い、英語教育の強化や国際的な視野を持つ生徒の育成に力を入れていることがわかりました。
一般入試とは別日に帰国生入試を実施している学校は56.8%と、あえて別の試験を実施する手間をかけてでも帰国生にチャンスを与えようと考えている学校が多いことが分かります。一般受験と同日に実施している学校、同じ入試問題でも得点面での優遇をしている学校などをカウントすれば、さらに数字は高くなります。一般生が受験できる英語入試も広がっており、40.8%の学校が実施していると回答。英語資格を取得している生徒に対する優遇措置(英検級による加点など)を実施している学校を加えると、約半数の学校が中学入試において英語力を重視しています。 留学生(日本国籍以外の生徒)に対する入試を実施している学校はありませんでしたが、「その他」のところで、「留学生を受け入れる制度がある」と回答した学校がかなり多くありました。入試制度としてはあえて留学生入試(外国人入試)とは明記していなくても、実際には、編入試験などにより留学生を積極的に受け入れている学校は多いと推測されます。 「別日程の帰国生入試」、「一般生が受験できる英語入試」、「英語以外の得意な技能をアピールできる入試」の3つをすべて実施していると回答した学校は、佼成学園女子、武蔵野大学中学、山脇学園、土浦日大中等教育学校、聖セシリア、かえつ有明、目白研心、ドルトン東京、聖徳学園、富士見丘、光英VERITAS、関東学院六浦の12校(9.6%)でした。 「英語のレベル分けは基本的に行っていない」と回答した学校の中にも、「英会話など一部の授業ではレベル分けを行っている」、あるいは「帰国生などのための取り出し授業は行っている」と回答した学校が10校存在しています。したがって、中学生の段階で英語のクラスを分けていないという学校は37校(30%)ということになります。 習熟度別クラス制度(38.2%)と帰国生等の取り出しクラス制度(26%)の両方を実施している学校は、鎌倉女学院、昌平、山脇学園、土浦日大中等、かえつ有明、三田国際、開智望、目白研心、湘南白百合、桐蔭、立教女学院の11校(8.9% )でした。 英語で他教科の授業を行うコース・クラスについては、11校(8.9%)あります。ただし、いわゆるインターコースやダブルディプロマの他に、部分的に英語で教科の授業を実施する学校も含まれています。これらの中身をより正確に知るためには、オールイングリッシュの授業時間がどれくらいあるか、あるいはネイティブ教員がどのくらい在籍しているかなどのデータと合わせて見ていくことが必要です。 オールイングリッシュの授業数を高校1年生に限定して質問したのは、大学受験が近い高校2年生や3年生ではオールイングリッシュの授業比率は相対的に低くなるだろうと考えられ、また中学生の段階では、帰国生クラスの有無などによって数字が左右されることが予想されるためです。高校1年生であっても事情は大きく変わらないかもしれませんが、ある程度学校全体のグローバル志向が見えてくる部分であると考えられます。 週に12時間以上のオールイングリッシュの授業を実施していると回答した学校は、文大杉並、共立女子第二、芝国際、三田国際、開智日本橋の5校(4.4%)でした。 英語ネイティブ教員は、オールイングリッシュの授業面はもちろん、多様な文化を重視する環境において重要な役割を果たします。その意味で英語ネイティブ教員が多く在籍している学校はグローバルな環境を重視していると考え、アンケート項目に加えています。ちなみに英語ネイティブ教員とは、英語圏の国籍を持っている教員とは限りません。日本国籍の方であっても英語での日常会話に支障がない先生は英語ネイティブ教員に含まれますが、アンケート実施の際にはそのことが記載されていなかったため、回答に反映できなかった学校もあるかもしれません。 英語ネイティブ教員が10人以上在籍し、かつ全教員に占める割合が15%を超えている学校は、文大杉並、土浦日大、芝国際、都立小石川、三田国際、サレジアン国際世田谷、神田女学園、開智日本橋の8校(6.4%)となっています。 留学プログラムについては、各学校独自の留学プログラムを有していて、単純に分類しづらい面がありますが、目的や参加形態などいくつかの観点から考えてみることができます。 留学プログラムの目的としては、語学研修が相変わらず多いと言えますが、研修先は、中学生の段階ではブリティッシュヒルズや東京グローバルゲートウェイといった国内のプログラムを組み込み、高校生段階で海外の語学研修を実施するなど、保護者の負担を軽減するための工夫も見られます。また、語学研修というより、フィールドワークやグローバル探究、アントレプレナーシップ的な要素を含むプログラムが増加しているようです。 英語圏ばかりではなく、他の地域の言語や文化に触れる機会を作っている学校もあります。獨協では、ドイツの2つのギムナジウムとパートナーシップ協定を結び、交流を進めています。足立学園は、あえて開発途上国を訪問する、アフリカ・スタディツアーというプログラムを実施しています。 海外大学の合格実績というのは、実際には進学しないケースもかなりの数に上ります。ですから、合格者数だけでは実態は分からない面があります。これは併願しやすい出願システムが確立しているためで、進学者数と合格者数には大きな隔たりがあるということをまずは押さえておく必要があります。一人で多くの大学に出願するのは、奨学金の獲得を目指していることも関係しています。特にアメリカの大学の場合、大学が独自に奨学金を出すケースも少なくありません。合格校が多ければそれだけ交渉の余地も増え、より多額の奨学金を手にする可能性が出てくるという事情があります。 ❖ アイビーリーグや難関大学への合格 海外大学への合格実績で有名なのは広尾学園ですが、2024年度においても、Columbia Universityに1名、University of Pennsilvaniaに1名、Brown Universityに1名、とアイビーリーグへの合格者を出しています。また、2024年度世界大学ランキング2位のStanford Universityにも1名合格者を出しています。世界大学ランキング45位のベルギーの KU Leuvenに8名が合格していることや同じく48位のDelft University of Technologyにも2名が合格しているなど、英米以外の大学合格も目立ちます。 その広尾学園を猛追しているのが三田国際です。2024年度には、Princeton UniversityとCornell Universityに1名ずつ合格者が出ています。アイビーリーグへの合格者がとりたてて大ニュースでもないようにホームページにひっそりと掲載されているのは、同校の余裕なのかもしれません。 東京学芸大国際は、やはりアイビーリーグのUniversity of Pennsylvaniaに2名、Brown Universityに1名合格者を出しています。他にもPomona CollegeやCarleton Collegeなど、リベラルアーツカレッジの名門に多数の合格者が出ています。リベラルアーツカレッジは大学ランキングには名前が上がってきませんが、教育を受ける環境としては理想的なもので、多くの場合は寮生活をしながら教授や仲間と充実した学生生活を送ります。 海城は2024年度はColumbia Universityに合格者を出しています。また、理工系大学の名門、Massachusetts Institute of Technology(MIT)にも合格者が出ています。 文大杉並は、やはりカナダの大学への合格実績が高く、2024年度にはUniversity of Toront に4名の合格者があります。 東洋英和からは2024年度にHarvard Universityの合格が出ました。こちらも特に大騒ぎということもなく、ホームぺージの進学実績のページの下の方に記載されています。東洋英和では合格と進学を両方記載しているので、正確な情報がわかります。UCLAを始めUC系列に何名か合格していますが、進学にはなっていないので、もしかしたらHarvardに合格した生徒の併願だったのかもしれません。 豊島岡でも、2024年度にUniversity of Torontに3名の合格者が出ています。 かえつ有明は、2024年度にMinerva Universityに合格者を出しています。 海外大学進学のためには、どうしても費用面が重要になってきます。トップスクールへの合格ができれば奨学金の可能性が高まりますから、そういう意味では合格者を輩出することとともに奨学金を獲得するためのサポートをすることが学校に求められつつあるのかもしれません。 ❖ 英米圏以外の大学の合格 かつては比較的学費が安いと言われていたカナダやオーストラリアも今はとても学費が高くなってしまいました。そんな中、非英語圏のヨーロッパやアジアで英語のプログラムを提供している大学が注目されています。 昭和女子大昭和は2024年に、イタリアのSaint Camillus International University of Health and Medicai Sciences(医学部)に合格を出しています。 土浦日大中等は2023年度に、Semmelweis Universityというハンガリーの大学に合格者を出しています。 ハンガリーの大学については医学部が注目されており、志学館でも複数の大学に合格者を出しています。 京学芸大国際中等では、オランダのUniversity of Amsterdam に合格を出しています。 森村学園は、チェコのCharles Universityや オーストラリアのUniversity of Wollongongのドバイ分校に合格を出しています。 開智日本橋は、ドイツのKarlsruhe Institute of Technology 、オランダのTechnische Universiteit Eindhoven(アイントホーフェン工科大学)などに合格者が出ています。帰国生入試・英語入試など(複数回答)
中学部の英語取り出し授業など(複数回答)
高校部の英語取り出し授業など(複数回答)
高1生のオールイングリッシュ時間(週あたり)
英語ネイティブ教員の数、および全教員に占める割合
帰国生や留学生の割合
留学プログラムについて
海外大学合格実績について