グローバル教育のこれから【広尾学園】Vol.1
文・鈴木裕之
株式会社スタディエクステンション、 GLICC...
広尾学園中学校高等学校は、東京都港区にある共学の進学校です。最新設備を備えた校舎で、生徒の個性を尊重し、グローバルな視野を育む教育を提供しています。今回はインターナショナルコースについて、教頭の植松久恵先生にお話をうかがいました。
インターナショナルコースの魅力と特徴
▼教頭の植松久恵先生
本日はインターナショナルコースについて、ふだんの学びの様子や海外大学サポートなどについてお伺いさせてください。まずはAG(アドバンストグループ)とSG(スタンダードグループ)のクラスの違いからお願いします。
植松先生:それぞれのグループは入試科目が異なりますが、入学後は同じホームルームクラスに在籍します。ホームルームは外国人の教員と日本人の教員がどちらも担任としてついているので、コミュニケーションで困るということはありません。主要科目についてはそれぞれ別の教室に移動して授業を受けます。AGの方は英語で外国人教員の授業を受け、SGの方は、主要科目は日本語による授業です。ただし、美術や技術については、AG・SGともに、外国人教員から英語で授業を受けます。SGからAGにクラスを移行するチャンスもあり、例年3月にテストを実施しています。
多様な背景を持つ生徒たちの交流
やはり帰国生が多いのでしょうか。クラスの雰囲気というのはどのような感じなのでしょうか。
植松先生:12月に行われている入試に関しては、海外の滞在期間ですとか、帰国後の年数といった受験要件がありますが、2月のAGの入試回というのはそのような資格に制限がありません。国内のインターナショナルスクールに通っていた生徒さんたちが受験するということもありますし、日本以外の国籍の方もいらっしゃいます。「帰国」と一括りに呼ばれてしまう生徒たちにしても、滞在国やそこに暮らしていた年数というのはまちまちで、そのような違いがお互いを刺激し合うということがあります。例えば、イギリスからの帰国生で、シリア難民についてのニュースをロンドン滞在中に間近で知った生徒は、日本でももっと関心を持つ機会を持つべきだと考えて、仲間を誘ってそのようなイベントを開催したり、大使館でインタビューさせていただいたりしています。仲間同士がお互いに刺激を与え合いながら、学び合っているようです。
広尾学園の課外活動と生徒の成長
多様な生徒たちが刺激を与え合うというのは、自然発生的に起こってくるのですか。
植松先生:生徒たちは、自ら積極的に動こうとしていると思います。特に高校の3年間は、それぞれが自分らしい道を探る時期だと捉えているので、興味の対象を見つけるのにみな必死です。見つけたら今度はそれについての知識を深めることにまた必死になるといった感じです。きっかけとしては教員側からのアナウンスの仕方やタイミングがちょうど良かったということがあるのかもしれませんけれども、生徒たちは、課外活動には自主的に出ていこうとするし、新しいものにどんどんチャレンジしていく姿勢が見られます。
そういえば、世界の高校生が参加するビジネスコンテストで入賞されている広尾学園の生徒チームを以前に見たことがあります。
植松先生:そうですね。ビジネスコンテストにはよく入賞しているようです。ビジネスコンテストは生徒たち自身でも探しますし、過去に先輩たちがエントリーしたものですと、学校に案内が届きますから、それを生徒たちにお伝えすることもあります。ディベート大会にも出たり、理系の生徒たちは、論文を書いて、その発表に出かけてみたり、あるいはインターンをやってみたり、本当に色々と動いています。よく、学校が全部サポートしているのかとご質問があるのですが、学校はきっかけ作りとして興味関心を持っていそうな生徒に話をするくらいです。そこからは生徒たちが各自コネクションを作りながら次の活動につなげていくという感じです。
広尾学園の海外大学進学サポート体制
課外活動は、アメリカの大学進学の際に重視されると言われているようですが、そこにもつながっているのでしょうか。
梅松先生:生徒からすると「生徒か大学出願のために課外活動しなくては」というよりも、多くの場合、自分の興味のあることをやり続けるというのが純粋に楽しいのだと思います。その興味からどこで何を勉強したいのかという学部選びにつながっていくことはありますが、どれほど有名な大学であったとしてもそこに自分の学びたい学部がなければ進学しません。まずは、自分の興味にしたがって色々と動いてみるということなのだと思います。学校で提供できる授業というのはほんの一部の分野ですので、学習した分野を結びつけて解決に向けての方法を模索したり、実際に動いてみて、新たな問題を発見したりするというのは、生徒自身の力によると思います。
海外大学の進路サポート体制というのはどのようになっているのでしょうか。
植松先生:生徒たちの学校生活の中では、授業が半分以上を占めていますので、授業を担当する外国人教員の影響力は大きいと思います。ただ、進路指導となりますと、日本人の担任も皆さん勉強されていて相当な知識があります。教員間の情報共有はもちろん大切です。最初にコアとなる者が発信して、それを受けてまた別のものがそれについての知識を深めていくといったことはよくあります。例えば「AP」とか「SAT」といった海外進学特有のワードについては、日常的に使う環境にありますから、すぐに学習が進みます。また、教員の研修が年に3回ありますので、そういった機会を通じてベースの知識が徐々についていくのだと思います。
キャンパスツアーで得られる生徒のモチベーション
海外の大学を招いたフェアですとか実際に海外に行くキャンパスツアーもなさっていますよね。
植松先生:はい。今年は9月6日 にKanto Plain College Fairという大きなフェアが開催されます。今回は広尾学園が会場校としてホストを務めます。そこには160大学ぐらいの申し込みがすでにあります。メインはアメリカの大学ですが、他にさまざまな国からの大学が、ブースを出して3時間ずっと、列になった生徒たちの対応をしてくださいます。入試課の方々がいらっしゃいますのでどんな生徒が欲しいと思っているのか、もしくは、例えば 新しい学部についての情報を提供するとか、そんな日になります。広尾の生徒はもちろん、総勢で1700人ぐらいの生徒が来るはずです。また、Kanto Plain College Fairとは別に、海外大学説明会も随時行っています。今朝もダートマスとかデュークなど、いつも一緒に活動している5校ぐらいのグループからコンタクトがあって、Kanto Plain College Fairには出られないけど前日にフェアを開催できないかと打診がありました。他にも、イタリア、スペイン、オーストリア、ドイツなどヨーロッパ各国の大学とか、ジョンズホプキンズやUS系の大学などが説明会を開いています。
一方、海外でのキャンパスツアーですが、今年の3月はLAの方に行ってきて、UCLAとか南カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学などを見て回りました。引率の教員と合わせて全部で50人ぐらいが参加しました。実際にキャンパスを見るとやはり生徒たちのモチベーションが上がります。そして、同じエリアにあっても大学というのは全然違うということが分かるのですね。キャンパスの広い大学がいいと思ったり、キャンパスの大きさよりはクラスの人数にこだわったり、あるいは周りの雰囲気、都会がいいとか田舎がいいとか、それぞれ自分の好みの環境を知るきっかけになっているようです。
海外大学進学への関心を高める鍵
海外大学進学への関心が学校の中でこれだけ広がるというのは、どのようなところに鍵があるのでしょうか。
植松先生:徐々にそういう雰囲気になってきたのだとは思いますが、多分イベントごとにそのイベントの価値というのをまずは教員が知ると、その価値を生徒に伝えやすくなりますね。例えば大学ツアーがあるというのは、高校1年生の入学式の日、もしくは高校2年生の始業式の日にアナウンスされます。次の3月のことを4月にすでにアナウンスするわけなのですけれども、参加する価値がどれほどあるのかというのを、新学年のフレッシュな段階で言われると、行ってみたいという気持ちがより強くなるのかもしれません。保護者の方も入学式の時はお話を聞いてくださるので、参加させてもいいかなと思っていただけることも多いのだと思います。カレッジフェアについても、これほど多くの大学が来る意味について担任が生徒に伝えてくれます。事前に調べて効率よく回らないと100校も回れないとか、列に並んでいると時間がもったいないから違うところに行きなさいとか、そういう指導ができるようにイベントをよく理解してくれている教員が多くいることが、海外進学を支えている鍵かなと思います。