品川女子×芝 男子校で女子校生徒が生理の授業
品川女子学院の中高生(有志)が、芝高校で生理の授業を行いました。
女子校の生徒が男子校の生徒に、生理について授業をするという新たな取り組みです。
品川女子学院「起業体験」からうまれた取り組み
4年生(高等部1年生)の文化祭での起業体験をきっかけにスタートした、品川女子学院の有志生徒で構成されたプロジェクト。もともとは年下の女子生徒(小学生)に女性の機会損失を減らすために、生理用品の種類を知ってほしいという思いをきっかけに始まり、その後、様々な仮説を立て、女性男性関係なく困っている人に手を差し伸べられる人になってほしいと、生徒について同世代の男子に伝えることを目標にしてきました。今ではジェンダー問題や、貧困問題など、生理の授業を通して社会課題の解決もしていきたいと高い志を持って活動しています。
「起業体験プログラム」は、「28project」の一環として、中等部3年生・高等部1年生と高等部2年生の希望者が文化祭を通じて取り組む学習プログラムです。9月の白ばら祭に向けての準備は4月からはじまり、生徒による模擬店は会社として起業、クラス単位で取り組みます。企業の役員・投資担当者・税理士・公認会計士など、実際に社会で活躍する方々の協力を得て行われるこれらのプロセスすべてが学習機会となっています。 具体的には、まず実際の起業と同様の本格的な手順を踏み、校内で「株式会社」を設立。事業計画の提出、会社の登記にはじまり、プレゼンテーション、文化祭当日の販売を経て、最後は株主総会を開催して会社を解散します。生徒たちは、総合学習の時間やHR、夏休みなどを利用して熱心に活動しています。卒業生が20代で起業するだけでなく、最近は在学中に起業する生徒もいます。 ※「28project」は、28歳の自分を思い描き、それを実現するためには何が必要か、どう行動すべきかを模索し、理想とする未来に向かっていくプロジェクト。
生理について学ぶ
(写真)品川女子学院の生徒の皆さんが生理の授業を実施するために、芝高等学校を訪れる様子
まずは生理の歴史を学びます。世界や日本で、「生理」というものがどのように扱われてきたか、また時代による生理用品の移り変わりや、ジェンダーギャップや・貧困問題などの社会課題にも触れます。芝高等学校の生徒たちも真剣そのもの。
(写真)2023年2月25日品川女子学院による生理の授業の様子
その後、生理のメカニズムから、生理痛がどのようなものなのか実体験を踏まえて話します。ある生徒は、生理痛がひどくて起き上がれないほどだというエピソードに、芝高校の生徒たちも「そんな辛いんだね、、。」と驚いた様子。
(写真)2023年2月25日品川女子学院による生理の授業の様子
また、様々な種類の生理用品を紹介し、実際に芝高校の生徒たちも生理用品に触れるグループワークを行いました。どのグループにおいても、芝高校の生徒が品川女子学院の生徒たちに、沢山質問を投げかけている様子が印象的でした。「この生理用品はどんなときに使うの?」「生理痛のときはどんな声掛けをしてほしい?」「あったら嬉しいものは何?」「男性ができること全部教えて」など、生理について自分ごとに捉え意見交換が行われました。
(写真)2023年2月25日品川女子学院による生理の授業の様子
生理を特別扱いしない
最後に、このプロジェクトのリーダー吉田朱里さんと、中学3年生の永井里奈さんから、この授業のまとめの話がありました。吉田さんは「もしかしたら、今日この授業を受けて、女子だから気を遣ってほしいとか、生理だから優しくしてとか、特別扱いして欲しいとか、そういう風に聞こえてしまった人もいるかもしれません。でもそういうことではないんです。皆さんも、友達や家族で体調が悪い人がいたら、心配するし優しくしてあげたいと思いますよね?それと同じなんです。体調が悪い人や辛そうな人がいたら、優しくしてあげたい。そんな支え合いが大切なんだと思います。そこに男女の差はありません。だからこそ、生理をタブーな話題として触れないのではなく、知ってほしいのです。」と語ってくれました。
(写真)【左】永井里奈さん【右】吉田朱里さん
そんな熱い話を受け、芝高校の生徒も「生理について、大変さや辛さを含めて初めて知ることばかりだった。ただ正直、【生理だから優しくしなきゃいけない。】という考えには違和感があった。自分たちも辛い時はあるのに、生理を特別扱いしなければならないのかと悶々としていた。でも、先ほど品川女子の方から、体調が悪い友人に優しくしてあげたいと思う気持ちと同じです。と言われて、すごく腑に落ちた。生理に対しての考え方が変わりました。」と答えました。同年代の男女が、等身大の言葉で交わした言葉にはとても重みがあり、その会場にいた全員から自然と拍手が巻き起こりました。女子校の生徒と男子校の生徒たちがそれぞれを尊重し、高め合った瞬間でした。
(写真)2023年2月25日品川女子学院による生理の授業の様子
【品川女子】生徒一人ひとりの主体性を大切に
品川女子学院山崎先生は、「この生理のプロジェクトもそうですが、生徒たちがやりたいと言ったものは、基本ダメということはないです。そのやりたいことを、どうやったら実現できるかを一緒に考え取り組むようにしています。そうしていくことで、“自らやりたいものに積極的に手を挙げて取り組むことが当たり前”という雰囲気が学校全体に広がったように思います。文化祭・体育祭・合唱祭などの実行委員には100人以上の生徒が手を挙げてくれたのも、その良い例だと思います」と語ります。また、プロジェクトをサポートしている、渡部先生も「このプロジェクトの活動で、教員からこれをしなさいと言ったことは1つもありません。生徒たちが自分たちでやりたいことに企画書を作って持ってきたり主体的に動いてくれています。」と語ってくれました。何より、そんな風に話して下さった先生方の表情は終始笑顔にあふれていて、生徒たちの活動を先生方も楽しんで応援している姿がとても印象的でした。学校全体で生徒たちの「やってみたい!」の気持ちをサポートしているからこそ、生徒一人ひとりが勇気を出して様々なことにチャレンジしようと思えるのでしょう。
【芝】学校理念「遵法自治」「共生」
今回参加してくれた芝中学校・高等学校の生徒にも感想を聞いてみました。「芝の授業は普段から和気藹々としていて、みんなで話し合いながら進める授業が多いので、こういう場で発言することに抵抗は特にないです。今日受けた生理の授業のことも、クラスメイトなどに伝えようと思っています。生理が特別なものというよりは、体調の悪い友達に当たり前に気遣いをしてあげるのと同じで良いということがわかったので今回参加させてもらって良かったですし、品川女子のこのプロジェクトが広まってくれればいいなと思いました。」とにこやかに語ってくれました。芝では、学校理念として、「遵法自治:自分を取りまく全ての関係性の中で、自主・自立の態度で自らを治めて行くこと」、「共生:いまあるすべてのいのちの連綿とした繋がりを大切に、その中にある自らを自覚すること」を掲げ、男子校ならではの、のびのびとした環境の中で生徒一人ひとりの成長を様々な角度から応援しています。今回の企画も、自主的に生理の授業に出たいと言った生徒たちが自然と集まるのも、日頃の教育の賜物でしょう。
(写真)2023年2月25日品川女子学院による生理の授業【集合写真】
今後の活動について
今回は、男子校班というチームがメインとなって授業を行なってましたが、他にも「共学班」や「小学生班」といったチームも様々な形で生理にまつわる授業を行なっています。品川女子学院の先生は「このような活動に興味のある学校があれば、学校まで連絡してほしい。」と話してくださいました。同世代同士で意見交換するからこそ得られる学びや体験が、このプロジェクトではできることは間違いありません。ぜひ沢山の学校がこのプロジェクトに参画し、日本全国に本質的な学びと笑顔が広まってほしいと思います。
TEL:03-3474-4048(代表)