非認知能力を測る品川翔英のラーナー型入試(2月1日午後)《前編》
「多様な生徒、非認知能力の高い生徒に入学してほしい」という想いからスタートしたラーナー型入試ですが、3年目の今年は過去最多43名の出願者数となりました。2月1日午後に実施された品川翔英の第1回ラーナー型入試の取材レポートをお届けします。〈取材・撮影・文/福原将之〉
品川翔英中学校・高等学校(以下、品川翔英)では一般的な教科型入試と適性検査に加えて、新タイプ入試であるラーナー型入試を実施しています。ラーナー型入試とは、品川翔英のGRADUATION POLICY(GP7)に基づいた入試方法で、(1)自己PRプレゼンテーション入試(2)プログラミング入試(3)グループワーク入試(4)英語インタビュー入試の4つから1つを選択して受験することができます。
「多様な生徒、非認知能力の高い生徒に入学してほしい」という想いからスタートしたラーナー型入試ですが、3年目の今年は過去最多43名の出願者数となりました。2月1日午後に実施された品川翔英の第1回ラーナー型入試の取材レポートをお届けします。
この《前編》では、まず(1)自己PRプレゼンテーション入試と(2)プログラミング入試、の様子をお伝えします。
続く《後編》では、(3)グループワーク入試、(4)英語インタビューの様子をお伝えします。
新名称となったラーナー型入試
ラーナー型入試の名前の由来は、「学び続けるLEARNER」から来ています。「学び続けるLEARNER」とは、あらゆることを自分ごととして捉え、自分を律しながら、そして愉しみながら行動できる人のことです。同時に、他人の意見に耳を傾け、他人と協働しながら、批判的な思考力を持って新たな価値を創り出し、社会に貢献するよう尽力できる人のことです。品川翔英では、生徒たちが「学び続けるLEARNER」になることを教育の目標としています。
昨年度までは「LEARNER」の複数形である「ラーナーズ(LEARNERS)型入試」という名称が使われていましたが、「生徒一人ひとりにフォーカスして育てたい」という想いから、単数系の「ラーナー(LEARNER)型入試」に名称がリニューアルされました。生徒の個性をとても大切にしている品川翔英らしい名称変更だと思います。
2月1日のラーナー型入試、出願者数は過去最多
品川翔英のラーナー型入試は毎年2月1日と2月4日の2回実施されています。2月1日に実施された第1回ラーナー型入試では、自己PRプレゼンテーション入試に11名、プログラミング入試に15名、グループワーク入試に9名、英語インタビュー入試に8名、合計43名もの生徒が出願しました。前年度と比べると、全ての入試科目で出願者数が増えていることが分かります(表1参照)。品川翔英が共学化して4年、認知度・知名度が高まったことが伺えます。
▼表1:第1回ラーナー型入試の出願者数
事前準備をして臨む自己PRプレゼンテーション型入試
ラーナー型入試の自己PRプレゼンテーション型入試は、受験生は事前に与えられた課題のもと、学校生活で頑張ったことや得意なことなど自己PRにつながる内容のプレゼンテーションを行う試験方法です。入試当日は、自分で作成してきた資料を使って、2人の試験官の前で5分間のプレゼンテーションと質疑応答を行います。
自己PRプレゼンテーション型入試で与えられる課題は、例年自分自身をアピールしやすいものとなっています。今年の課題は以下の通りです。
「これからの時代は、これまでの経験や今持っている知識などからでは想像もつかないような出来事が起こる「 VUCAの時代 (ニューノーマル社会)」 がやってくると言われています。このような社会を生き抜く力を身につけるために、品川翔英中学校に入学したら、あなたはどのような活動に取り組みますか?品川翔英の校訓である【自主・創造・貢献】に結びつけ、小学校の経験をもとに、あなたらしさを表現するようなプレゼンテーションをしてください。」
課題は約1ヶ月前に学校ホームページで告知されるため、受験生は事前に準備をして試験に臨みます。発表時間は5分、プレゼンテーションの方法はプレゼンテーションソフト・模造紙・実技のデモンストレーション、なんでもOKです。入試の評価基準もルーブリック評価表が学校ホームページに公開されているため、評価ポイントである話し方や発表する姿勢、工夫点などを意識しながらプレゼンテーションの準備を行うことができます。
自己PRプレゼンテーション型入試の様子
自己PRプレゼンテーション型入試の流れを紹介します。集合時間は14時30分で、最初は教室の控え室に案内されます。試験開始の14時50分になると、受験生は1人ずつ順番に試験会場となる教室に呼ばれてプレゼンテーションを行なっていきます。発表時間は5分間で、その後の質疑応答5分間と合わせて10分間の試験となります。
プレゼンテーションのお題である「入学後はどのような活動に取り組みたいか」に対して、受験生の答えは「体育祭・文化祭実行委員になって学校に貢献し、人前で自信を持って話す経験をしたい」「短期留学に挑戦し、異文化の考え方を学び視野を広げたい」「SNS部を創設し、生徒から見た品川翔英の魅力を生徒主体で情報発信したい」など様々で、どれも大変個性的でした。受験生たちのプレゼンテーションでとても感心したのが、「これまで頑張ってきたこと」や「VUCAの時代を生き抜くのに必要な力」と関連づけて話していた点です。発表の様子も堂々としていて大変素晴らしかったです。
Minecraftを使ったプログラミング入試
ラーナー型入試のプログラミング入試では、Minecraftを活用した試験が行われました。昨年まではドローンを使ったプログラミング試験でしたが、より高度なプログラミング的思考を試験するために今年度からリニューアルされました。
Minecraft(通称マイクラ)とは、小学生を中心に幅広い世代に人気のゲームで、いわゆる「デジタル版のブロック遊び」です。ゲーム内ではサバイバル生活を楽しんだり、自由にブロック(立方体)を組み合わせて建築などを楽しんだりすることができます。マイクラが普通のゲームと違う点は、プログラミング教育・情報教育・協同学習などの教材として様々な学校で活用されている点です。品川翔英でも中学1・2年の総合学習の授業(LEARNER'S TIME)でマイクラを使ったプログラミングの学習が行われています。
プログラミング入試の様子
プログラミング入試では、最初に10分ほどマイクラの操作説明と基礎的なプログラミングのレクチャーが控え室で行われます。レクチャー終了後、受験生は試験会場となる教室へ移動し、いよいよ試験スタートです。
今回の入試では、マイクラの世界にいるロボット(エージェント)をプログラミングで操作して課題をクリアしていくという形式でした。入試問題として出された課題は全部で5つあり、プログラミングの基本である順次処理・繰り返し・条件分岐を問うような内容となっていました。
試験時間は1時間。受験生たちは黙々とプログラミングを書いてはロボットの動作確認を行なっており、課題をクリアすると時折嬉しそうな表情を浮かべていました。