駒込中学のプログラミング・STEM入試&自己表現入試
図書館で行われた自己表現入試は、パソコンでなんでも調べてよし
2019年から始まった、駒込の特色入試。これは、これからの時代に必要とされる、新しい力を測る入試です。
8:30〜始まった自己表現入試は、「クリエイティブ型」と「ディベート型」のどちらか1つを選び、制限時間の中で、自分の意見をまとめる入試です。
「クリエイティブ型」は、与えられた資料をもとにしてアイディアを考えるテスト。「ディベート型」は、指定されたテーマについて、示された賛成と反対の意見の両方を読み、自分はどちらの立場に同意するかを述べるテストです。
解答を作成する時間は2時間ですが、2時間50分まで延長ができ、2時間超えたら、解答用紙を提出して、いつでも退出できます。
書くものについて調べたいときには、一人一ずつ与えられたコンピュータで検索してもよく、部屋から出なければ、解答を考えるために席を立っても構いません。今年はコロナの影響で、飲み物やお菓子は用意されていませんでしたが「持参した飲み物は自由に飲むことができます。親切なことに、「飲む際は、解答用紙こぼさないように飲んでください」という注意書きまでありました。
「解答用紙は縦にして使う」「検索していいけれど、そこで分かったことを書く場合には、必ず、どこを参照にしたか書く」という注意を聞いたあと、受験生は早速入試問題を開きます。
パソコンでキーワードを打ち込みながら、関連のページを検索する受験生達。その後2時間超、集中して問題に向き合っていました。
出題の意図を読み取り、提案をする
今年のクリエイティブ型の問題は、魔女の宅急便の主人公キキが行っていた荷物を運搬する仕事について、「もしも、キキが現代の東京で空を飛び、荷物を運ぶとしたどのくらいの料金にするとよいでしょか」というもの。
トラックやバイク、自転車で荷物を運ぶ運送業の写真や東京都の地図が示され、街中でよく見かける「運送業」に関わる企業のホームページを検索して、料金形態を比較してプレゼンテーション資料を作るように指示されます。
一方、ディベート型は、「消費税は上げたほうが良い? 下げた方が良い?」というお題について、「消費税とはどんな税なのか」「増税するのはどうしてなのか」などの説明文を読んだ上で、調べたことを踏まえた上で、自分の意見を書くというものでした。
この入試の狙いは、「広い視野を持ち、社会で起きていることに対して、自分の意見を持っているか」を見ること。
大学入試が思考力を問うものに変わっていくことを見据えて作られた、社会と国語を融合した入試です。駒込では、高校で3つのコースを作っていますが、この入試は「国際教養コース」へのつながりを意識した問題になっているそうです。
算数とプログラミングで競うSTEM入試
続いて向かったのが、プログラミングSTEM入試の部屋です。
STEMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字。各分野を「相互横断的」に学び、学んだことを「実際の生活に応用」することを目的とした21世紀型の新しい教育のことです。
1時間目は、小学校でも習う四則計算と規則性の問題の「STEM」
2時限目は、プログラミング
「STEM」の試験時間は50分、「プログラミング」の試験時間は1時間50分で、途中10分間の休憩を挟みます。
実際の入試風景は、これまでと同様に、筆記試験用の机とプログラミング 用の机が二つ並んだ配置となっていました。
そして、「STEM」は左の机を使い、「プログラミング」はパソコンが置かれた右の机を使っていきます。
「STEM」の試験で問われる力は、「論理的思考力」と「推理力」です。「頭や手をフルに使って、手順や計算方法を考えて解いてみてください。」と募集担当者。首都圏中学模試センターの思考コードのB1〜B2の力を求めているそうです。
今年の「STEM」では、四則計算と、数の規則性(N進法)の問題が出されました。プログラミングの基礎として欠かせない、N進法の基本を理解しているかどうかを確認する問題です。
続いて、実際にプログラミングをするときに使われているカラーコードというコンピューター用語を使って、新しい色を作成するという問題が出されました。これは、その後のプログラミング入試につながる問題になっていました。
試験開始から50分で「STEM」終了。10分間の休憩を挟んで、いよいよプログラミングを行う「プログラミング」入試の始まりです。
どうしたらより良いものが作れるか試行錯誤してほしい
今年の試験は、3Dプリンターが、立体造形物を実現していく仕組みを説明した後に、最近研究されている新たな仕組みの一部を、SCRATCH(スクラッチ)を使用して、実際に体験していくという問題でした。
プログラミングの試験は小学校の授業で学んだプログラミングの内容で十分に対応できるため、「試行錯誤しながら満足のいく、個性豊かな作品をつくってほしい」(募集担当者)
つまり、単にプログラミングができるかどうかではなく、「創造力」「アイディアを形にする力」「やりぬく力」「トライ&エラーから学ぶ力」などがためされているのです。
受験生たちは、黙々とそれぞれのパソコンに向き合い、成果物を作っていました。
プログラミングSTEM入試は、高校理系先進コースへの入り口
駒込では、STEM教育をいち早く本格導入していて、高校理系先進コースでは、日本有数のSTEM教育専門機関である埼玉大学STEM教育研究センターとの共同授業により、日本初の試みとなる「高校3年間を通したSTEM教育」が行われています。また、企業の研究者から直接話しを聞くJOBサロンを開いています。
中学も同センターの特別授業やScratch(=ビジュアルプログラミング)講習をおこなっていますが、教科を幅広く横断するSTEAM教育を意識して、その基盤となる教養や学力をまんべんなくつけることを重視しているそうです。
プログラミングSTEM入試は、「算数やものづくりが好きだという生徒に来てほしい」という狙いで行っていて、高校の理系先進コースへの入り口となる入試と言ってもいいでしょう。