共立女子第二中が首都圏初のサイエンス入試を2/4PMに実施
共立女子第二中学校〈東京・八王子市。女子校〉では、今春2019年入試から、首都圏の私立中学校では初めての「サイエンス入試」を導入しました。同中学校では、以前から従来型の学力試験(2科・4科型)だけでは測れない学力を持った受験生の受け入れをめざし、適性検査型入試や英語入試を導入してきましたが、今回は理科に特化した入試を新設しました。
「サイエンス入試」初年度は募集定員10名のところ25名が出願...
共立女子第二中学校〈東京・八王子市。女子校〉では、今春2019年入試から、首都圏の私立中学校では初めての「サイエンス入試」を導入しました。
同中学校では、以前から従来型の学力試験(2科・4科型)だけでは測れない学力を持った受験生の受け入れをめざし、適性検査型入試や英語入試を導入してきましたが、今回は理科に特化した入試を新設しました。
2月4日(月)午後に実施されたこの「サイエンス入試」には、募集定員10名のところに25名が出願。多くが2月1日~2日に同中学校の入試も受験して合格を得ていたことから、実際の受験者は3名にとどまりましたが、そのなかにも、「合格はもらえているけど、この入試を経験してみたい」という希望から、当日にやってきた受験生もいたといいます。
なぜ「サイエンス入試」なのか?
この共立女子第二中学校の「サイエンス入試」2019年入試からの新設にあたって紹介された告知のなかには、下記のようなメッセージが掲載されています。
「いろいろな教科があるなかで、理科に特化した入試が選ばれた理由は、共立女子第二中学校高等学校の教育環境にあります。本校は大変豊かな自然環境に恵まれており、天気のよい日は学年を問わず外に出て生きた自然を相手に授業を行っています。また広大な畑では一年を通じて野菜が育てられていて、生徒たちは苗植えから収穫までを体験しています。そして大学に家政学部を持つこともあり、4つの実験室や貴重な設備を有し、実験に重きを置く授業を行っています。そんな本校を、特に理科に興味のある受験生にぜひチャレンジしてもらいたいと思い、実施する運びとなりました。」
サイエンス入試の具体的な流れ
上記のメッセージに続いて、「サイエンス入試の具体的な流れ」として下記のように紹介されています。
サイエンス入試は以下のような流れで実施されます。「サイエンス入試」では正解が一つだけということはありません。実験や観察などを通してどんなことを考えたか、そしてそれを分かりやすく発表できたかが評価の基準となります。
1.実験・観察などを説明
試験官より、どのような実験・観察を行うか説明があります。
2.実験・観察など実施
説明のとおりにそれぞれ実験や観察などを行います。
3.結果・まとめ
分かったこと、考えたことなどをレポートにまとめます。
4.発表
まとめたレポートを発表します。
LED(発光ダイオード)の特性を理解して回路をつくる。
共立女子第二中の新設「サイエンス入試」当日に学校をお訪ねして、入試要項に「14:00~16:00」と告知されていた試験会場を数分前に覗かせていただくと、すでに受験生は個々の机に着席し、試験の開始を待っていました。
問題用紙の冒頭には、【本日の流れ】として、「14:00~15:00 実験(説明時間含む)」、「15:10~発表」と記載されています。そして、【実験の目的】は、「LED(発光ダイオード)の特性を理解し、その特性を活かした回路をつくる。※LEDは一方向(矢印の向き)にしか、電流が流れないなど、豆電球とは異なる性質があります」と書かれています。
個々の受験生の机に配布された木箱のなかには、今回の入試の実験材料がまとめて用意されています。
中身(使用する実験器具)は、豆電球 1個、LED 2個、乾電池4個、ターミナル3個、直線リード線(赤)6本、直線リード線(黒)6本、切りかえスイッチ1個です。そのほかには、回路図を考えたり、解答用紙(レポート用紙)に書いたりするときに使う、上記の器具のイラストが描かれたシールが封筒に入れて配られています。
基礎的な回路から2個のLEDを切りかえて点灯させる回路まで!
まず、この「サイエンス入試」をデザインした理科の友廣雅翔先生から説明があります。説明にあたっては、実験器具の具体的な使い方が受験生にもわかりやすいように、先生が手元の書画カメラを使いながら、教室前方のスクリーンに映しての説明もありました。
先生からの説明が終わると、いよいよ実験開始です。合図とともに、問題用紙を開くと、冒頭に【試験問題】の問いが4題、書かれています。
問1 豆電球1個と乾電池1個をつないだ回路と、豆電球1個と乾電池2個を直列つなぎでつないだ回路をつくり、気づいたことをまとめなさい。
問2 LED1個と乾電池2個を直列つなぎでつないだ回路をつくりなさい。その後、LED1個と乾電池1個をつないだ回路をつくり、気づいたことをまとめなさい。
問3 LED2個と乾電池2個を用いて、LEDを2個とも点灯させる回路をつくりなさい。
問4 LED2個と乾電池4個、電流切りかえスイッチを用いて、スイッチを切りかえると、点灯するLEDが切り替わる回路をつくりなさい。
問題を読み込んだ受験生のなかには、すぐに手を動かしてシールを並べ替えながら回路を考える受験生もいれば、手を動かす前にじっくりと考え込んでいる受験生もいます。
変わる大学入試と教育の変化を先取りしてオリジナルな入試を導入...
今年から初めて導入した「サイエンス入試」に取り組む受験生の様子を、校長の晴山誠也先生も廊下から試験教室の様子をそっと見守っていました。
実は私立中高一貫校の先生方にとっても、こうしたオリジナルな入試を新たに考え、実際に導入することは簡単なことではありません。
しかし、再来年(2020年度)には大学入試の制度や内容が変わり、今春2019年の中学入試にチャレンジした小学校6年生が大学入試を迎えるのは、2024年度。本格的に大学入試が変わるといわれている第二期の改革の時期にあたります。
そういう新たな大学入試に対応できる力と、その先の社会で求められる力を育てていく必要がある私立中高一貫校の先生方にとっては、中学入試でも、こうした新たな入試形態を導入し、受験生の多様な資質を評価したうえで、個々の才能や学ぶ力を伸ばしていく必要に迫られています。
そうした入試と教育の大きな変化の節目に、この「サイエンス入試」という、多様化する私立中入試のなかでも先例を見ない入試を導入した共立女子第二中学校の先生方は、とても勇気ある決断をしたともいえるでしょう。
受験生の好奇心や意欲、集中力が、中高6年間の学びに活かされる...
今回の「サイエンス入試」の実験時間は60分間。最初は基礎的な問題とはいえ、先の4題の問は、受験生にとっては、かなりボリュームがあるものかもしれません。
それでも、こうした取り組みが好きな小学生がチャレンジしてくる入試ゆえに、受験生は粘り強く課題に取り組んでいる様子がわかります。
この知的好奇心や意欲、粘り強い取り組み姿勢と集中力が、入学後の積極的、主体的な学びにつながってくるならば、それだけでも「サイエンス入試」新設の意義があるといえるでしょう。
こうした入試を導入することそのものが、共立女子第二中学校・高等学校の先生方の見識と先見性を示すメッセージとして、来年以降はさらに認知度が高まるに違いありません。
理科的な興味を引き出し、手を動かしたくなる体験の魅力!
受験生が一心不乱に課題に取り組んでいる間に、試験を見守っていたお一人の先生が、理科室の後方の机の上で、最も難しいと思われる問4の回路を、実際につくってくれました。
LED(発光ダイオード)の回路をつくり、緑と赤のライトを切りかえスイッチで交互に点灯させるなんて、大人にとっても好奇心がくすぐられ、やってみたくなる実験ではないかと感じました。
こうした理科的な興味をかきたて、おもわず手を動かしたくなるような経験が、実際の入試だけではなく、それ以前の「サイエンスチャレンジ(模擬入試)」の機会にできるならば、理科好きな小学生にとって、きっと日常の学習の励みにもなることでしょう。
発表する受験生の横顔からは、自ら表現しようとする熱意が伝わる...
定刻の15時になると、先生の指示によって実験の時間は終了です。いったん解答・レポートの用紙が回収され、10分の休憩の後で、順に一人あたり約5分の発表が別室(実験教室の向かいの教室)で行われます。
この発表の場面は、受験生が必要以上に緊張してしまうことを避けるため、廊下から教室の小窓を覗いて少しだけ様子を見せていただきました。
教室内での発表の声や、先生とのやり取りは聞こえませんでしたが、受験生の横顔からは、一生懸命に自分の考えを伝えようとする熱意が伝わってきます。
それぞれの受験生は自分の発表が済むと、やはりホッとした様子で、お手伝いの先生や在校生の案内で保護者が待つ控室へと向かっていきました。
この日「サイエンス入試」の終了後に、校長の晴山誠也先生、「サイエンス入試」実施の中心を担った理科の友廣雅翔先生、入試広報部主任の戸口義也先生に、少しだけお話を伺うことができました。
従来型の「4科・2科型」入試に加えて、「適性検査型入試」、「英語(4技能型)入試」などで、多様な受験生を迎える入試機会を広げ、さらに今春2019年入試からは、この「サイエンス入試」の新設によって、理科の好きな小学生にも間口を開いてくれたことについて、先生方は確かな手応えを感じているようです。
3月23日(土)には「春の学校説明会」開催!
「本校は都心部からは少し離れた立地ですが、その分、自然に恵まれた広大なキャンパスで、のびのびと学び、日常を過ごすことができます。とくに理科の観察やフィールドワークには最適の環境ですし、理科実験室も多くあります。自分の手で野菜を育てる経験や、食育なども含めて、自然と触れ合い、自ら体験することで培える感性も含めて、豊かな学力と人間力を育てていきたいと思っています。その意味でも、今年新設した『サイエンス入試』に、多くの受験生が出願してくれたことには手応えを感じています。来年は担当の先生方がもっと工夫して、本校らしさを知ってもらえる入試になることを期待しています」と晴山校長先生。
「実際に本日、受験してくれたのは3名でしたが、この他にも、すでに前半の入試で本校に合格した受験生から、『せっかく出願したので、サイエンス入試も受けてみたかった』というコメントや要望もいただきました。これは嬉しい反応でした」と広報部主任の戸口先生もいいます。
「初年度ということで私たち理科の教員もかなり考え、工夫しましたし、受験希望者には事前に行った「サイエンスチャレンジ(模擬入試)」でも入試の流れを体験してもらいましたが、やはり実際の入試を行ってみて初めて分かったこともありました。最後の問は難しかったかもしれませんし、時間が少し足りなかったかもしれません。来年はさらに工夫して、良い入試にしていきたいですね」と理科の友廣雅翔先生。来年はどのような形式や出題になるのか楽しみです。
3月23日(土)には新小学校6年生以下を対象にした「春の学校説明会」が14:00~15:30の時間帯に行われま...